第223話『アブラムシとサイクルコンピューター』

せやさかい・223


『アブラムシとサイクルコンピューター』さくら      





 キャーーアブラムシイイイイイ!



 詩(ことは)ちゃんの悲鳴に、うちは殺虫剤を手に颯爽と廊下に飛び出す!


 ブシューー!! ブシューー!! ブシューー!!


 三回、殺虫スプレーを噴射する!


 アブラムシは、その場で息の根を停めんと、ジタバタ暴れまわってとんでもないとこに逃げてしまう。


 タンスやら本箱の裏とかじゅうたんの下とか、やっつけても回収でけへんとこに逃げよるさかいに、その場で殺す!


 長年の経験から、一回一秒、それを三回やったら、たいてい身動きできんようになってひっくり返る。


 ひっくり返ったお腹に、止めの一発!


 ブシューー!!


 それから、トイレットペーパーでくるんで(アブラムシ退治用に、あちこちの部屋にトイレッとペパーが置いてある。そのまま流せるよってにね)トイレに直行して、ただちに水葬!


 で、このアブラムシは、あっけなく成仏しとおる。


 うちの必殺技にも磨きがかかったか!?


「……これ、柿の種だよ」


 留美ちゃんが冷静に事実を伝える。


「「え?」」


 たしかに、そいつには手足が無い。


「だれやのん、こんなとこに柿の種落としてヽ(#`Д´#)ノ」


 詩ちゃんが大阪弁で激おこぷんぷん丸!


 ふだん標準語の詩ちゃんが、大阪弁になるのは、ほんまにキレてる証拠。


「なんやのん、いったい?」


 おばちゃんがエプロンで手ぇ拭きながらやってくる。


 えと、晩ご飯のあとで、片づけをしてるとこやったんです。


「なんや、どないした?」


 冷やかしに来たテイ兄ちゃんの手には、柿の種の袋が載っておりました(^_^;)。




 それが夕べの事で、テイ兄ちゃんは、さんざん妹にどつかれて、怒られる羽目になりました(^▽^)




「じぶんら、これやるわ」


 朝顔に水やってると、テイ兄ちゃんが、なんか持ってきた。


「なに?」


「タイマー?」


「ストップウォッチ?」


「万歩計?」


 小さな画面の付いたそれには0:00とゼロが並んでる。


「サイクルコンピューターや」


「「「サイクルコンピューター?」」」


「じぶんら、このごろ自転車に凝ってるやろ。これ付けたらいろいろ記録がとれる」


「スピードとか、走行距離とか?」


「もちろん。他にも消費カロリーやら、排出二酸化炭素とか平均速度とかもな」


「「「へえ……」」」


 ハンドルに本体、前輪のフォークに検知機、スポークに検知用の磁石を取り付ける。


 最初の一個は、テイ兄ちゃんが詩ちゃんの自転車に取り付ける。たぶん、ゆうべのお詫びやね。


 兄妹やさかいに「ごめん」とは言わへん。


 それを見てて、うちと留美ちゃんは自分でやってみる。


「よし、試し乗り!」


「「「よっしゃー!」」」


 宣言して、昨日と同じコース。


 結果が知りたくって、今日はまっすぐ帰る。


 走行距離10キロ!


 やったあ(^▽^)/


「なんで?」


 詩ちゃんのは8・5キロとしか出てへん。


 まったく同じコースを走ってきたんやから、同じ数字が出てんとおかしい。


 うちと留美ちゃんは、ちゃんと10キロ。


 また、テイ兄ちゃんのいたずらかぁ?


 

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