第221話『さくらと椛』

せやさかい・221


『さくらと椛』さくら      





 バレイって言葉知ってますぅ( ̄ー ̄)b?



 英語で谷とか峡谷とか       ちゃいます。


 優雅に踊る西洋の踊り       そら、バレーです。


 オリンピック予選リーグで敗退   それはバレーボール。


 ポテトチップスの原料       それは馬鈴薯。


 地縛霊の短縮形          なるほど、場に憑く霊で場霊。 座布団一枚!



 さっきから、留美ちゃんも詩ちゃんもスカタンばっかり言うてます。


 ほんまの意味知ってるさかい。



 バレイとは馬齢のことなんです。


 馬っちゅうのんは、歳をとったら馬力が無くなってしもて役に立たんとこからきた『無駄に年を取る』という意味やさかいです。


 プ、プフフフ(* ´艸`)


 アハハハハハ(^◇^)


 二人とも笑い出した。


「だって十五やそこらで馬齢だなんて、ふつう笑っちゃうよ」


「そうよ、お祖父ちゃん気ぃ悪くするわよ。さくらが馬齢なら、お祖父ちゃんなんか馬齢の化石でしょ!」


「だれが、馬齢の化石やてえ?」


 聞きつけたお祖父ちゃんが作務衣姿でリビングに入って来る。


「ああ、オリンピックのタメどりか」


「うん、三人で感動を噛み締めようって」


「しかし、よう録画しといたなあ」


「テイ兄ちゃんが録画してくれてたさかい」


「ライブでは三人とも観てるんですけどね、三人で観れば感動がちがいますからね」


 そう答えながらも、留美ちゃんはお祖父ちゃんにお茶を淹れてる。


「大橋悠衣の二冠達成は五回も観ちゃった」


「あんな素敵な笑顔は初めて見ました!」


「いやいや、そない感動してる留美ちゃんの笑顔もピカイチやと思うよ(^▽^)」


「いえ、そんな、わたしなんか(〃´∪`〃)」


 うん、たしかに留美ちゃんの笑顔はようなった。うちに越してきたことがプラスに働いてるんや。


「いやいや、なかなか……」


「だったら、きっと阿弥陀さまのおかげです(#´□`#)」


 留美ちゃんもお寺の子ぉらしいこと言うようになった。


「で、なにが馬齢やねん?」


「ああ、これよ、お祖父ちゃん」


 詩ちゃんがリモコンをクリック。


「ああ、スケボーの西矢椛か!」


 お祖父ちゃんが身を乗り出す。


 もう三回も観たんやけど、うちらも観てしまう。


「この西矢椛いう子ぉは、まだ中二やねんで、うちよりも一個下!」


「せやなあ……て、さくら、それで自分を馬齢て言うてんのんか?」


「う、うん、うちはスケボどころかスケートもようしいひん」


「いや、だから笑っちゃうって」


 バシバシ


 詩ちゃんが肩を叩く。


「せやけど……詩、ちょっと巻き戻して……そこそこ……この椛いう子、ちょっとさくらに似てへんか?」


「へ?」


「笑顔がな……」


「え、え、なによ、お祖父ちゃん(;'∀')」


 お祖父ちゃんが、じっとうちの顔見るもんやさかい、留美ちゃんも詩ちゃんもマジマジ。


「あ、そういえば……」


「似てるかも」


 丸い鼻   笑うと線になってしまう目ぇ  離れた眉毛  で、丸まっちい童顔(^_^;) 


「一つ一つは、ベッピンさんの造作やないねんけど、笑うてると、実に美しい。オリンピックいう晴れの舞台に立ってるいうこともあるんやろけど、この子の笑顔は天性のもんやろなあ……」


「ちょ、お祖父ちゃん、なに泣いてんのん?」


「いや、一昨年、うち来たころのさくらのこと思い出してなあ」


「え、あ……(#^~^#)」


「『椛とさくら』、なんだか語呂もいいわね」


「なんだか、ラノベになりそうです」


 アハハ、ラノベのヒロインにされてしもた。




 あとで、二年前の写真を開いてみる。


 山門前で、みんなで撮った写真。


 あの時は、そう思わへんかったけど、今から見ると、ちょっと痛々しい。


『椛とさくら』


 いや、


『さくらと椛』や。


 あ、いや、単に語呂がね、出席番号順でも、うちが先やしね。


 え、出席番号は苗字の順?


 えと……酒井と西矢……って、ほら、やっぱし、うちが先やんか(* ´艸`)。


 

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