第41話『不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった』

せやさかい・041

『不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった』 



 檀家回りをしてくると、いろんなものをもらってくる。


 お饅頭とかの和菓子が多いねんけど、商品券とかビール券とか、手縫いの手袋、映画の優待券、宝くじ、とか色々。

 むろん、もろてくるのはお祖父ちゃん、伯父さん、てい兄ちゃんの親子三代坊主たち。

「こんなんもろてきた」

 てい兄ちゃんが衣の袖から出してきたんは、UFOキャッチャーの景品みたいな縫いぐるみ。

 二頭身半の男の子と女の子。着てるTシャツの前には、男の子が「1」、女の子が「2」とプリントしてある。

「てい兄ちゃんは、こんなんばっかりもろてくるなあ」

 こないだは、ラジコンのアブラムシをもろてきてリビングで見せびらかしてた。

「もーー、兄妹の縁切る!」

 詩(ことは)ちゃんは、それ以来てい兄ちゃんと口をきいてない。せやさかい、わたしに見せるんや。

「お腹押してみい」

「うん……」

「自分のお腹押してどうすんねん!」

「あ、そっちか」

「グホ! ちゃうちゃう、縫いぐるみのお腹や!」

 これくらいのボケはかまさんとおもしろない。

 で、で、反応とリアクションを考えながら、大げさに手を振り上げる。

 きゃ~エッチ!……やったら、「よいではないか、よいではないか、グフフ……」

 プ~~やったら、「ウ! おぬし、なにを食ったあ!?」とかね。

 

 エイ!


 勢い付けて押したら……チャンチャカチャン、チャンチャカチャン、チャチャチャチャチャッチャカチャン(^▽^)/

 なんと、ラジオ体操第一が陽気に鳴り出した。

「なるほどお! ということは……」

「2」の方を押してみる。今度は予想通りラジオ体操第二が流れ出す。

「なるほどお……おもしろいねえ」

 アイデアやねんやろけど、びっくりするほどの面白さやない。

「タイミングがええと、ふたり揃てラジオ体操しよるらしいでえ」

「プ、ほんまあ?」

「ほんまほんま、あげるさかい、毎朝お腹押してみい」

 ということで、不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった。


 

 

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