第42話『ラジオ体操第二!』

せやさかい・042

『ラジオ体操第二!』 



 チャンチャカチャン(^^♪ チャンチャカチャン(^^♪ チャチャチャチャチャンチャカチャン(^▽^)♪


 ラジオ体操のイントロで目が覚める。

 あ…………枕元にラジオ体操人形。寝ぼけてお腹を押してしもたんや。

 ポチ

 もう一回押して停める。せっかくの夏休み、二度寝のまどろみを楽しむ……。


 チャンチャカチャン(^^♪ チャンチャカチャン(^^♪ チャチャチャチャチャンチャカチャン(^▽^)♪


 え? 切ったはずやのに…………え? ラジオ体操は外から聞こえてくる。

 ボーーっとしたまま上体を起こし、窓の外を見る。

 境内に小学生が集まってラジオ体操をやってる。首からカードをぶら下げて、六年ぐらいの子ぉが前で見本を見せながら、おおよそ、みんなでそろって、一二三 一二三……おお、伝説の夏休み朝のラジオ体操!

 わたしの小学校ではやってなかった。噂では、地方に行くと、お寺や神社の境内でやってるって聞いたことがある。それが灯台下暗し、自分の家でやってるとは思わんかった。

 I want be in that number~(^^♪

 ジャズの『聖者の行進』のフレーズが弾けた! つるんでやることは苦手やけど、あのラジオ体操は……せめて、そばで見てみたい!

 そう思うと、パジャマのまんま階段を下りて、スリッパをつっかけて境内に急いだ!


 境内に出てみると、蝉時雨と競うようなラジオ体操が陽気に鳴り響いてはいたけど、三年生くらいの女の子一人になってしもてた。

 ラジオ体操は第一が終わって、第二の整理運動いうんやろか、息を大きく吸い込んで腕を前で交差させて深呼吸……。

 女の子は、深呼吸をしながら、コマ落しのように大きくなっていく。

 ……四年生……五年生……六年生……中学一年生……中学二年生……女の子はのりちゃんの姿になった。

「のりちゃん……」

「アハハ、桜ちゃんのお人形でラジオ体操思い出して。いやあ、懐かしかった!」

「あ、ひょっとしたら、ラジオ体操の出席カード!]

「うん?」

「休んだ日があって、ハンコの数足らんから、その分稼ぎに現れたとか!?」

 のりちゃんは、やり残したことがあって、中学生の頃の姿で蘇ったんや。

「ハハ、家は、道挟んだ隣やったから、ずっと皆出席やったよ!」

「そうなんや」

「ごめんね、起こしてしもて」

「思い出されへんのん、やり残したこと?」

「アハハ、そのうち思い出すやろし」

 照れたように笑うと、空気に溶けるようにのりちゃんの姿が薄くなって……いや、薄なってんのは、わたし方や!

 あ! あ! 消えていくしいいいいいいいい…………!


 桜ちゃ~ん、そろそろ朝ごはんよ~。


 伯母ちゃんの声で目が覚めた。窓の外の境内は、やかましいくらいのセミの声で満ちておりました。

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