第4話
冒険者ギルドでは美人の受付嬢と話をすることや酔っ払いの冒険者に絡まれるようなテンプレイベントなど起こりもせずに登録が終わってしまった。修一はなんだか肩透かしを食らったように思っていた。
まさか、買い取りカウンターのおばちゃんに登録してもらえるとは思ってもみなかった。
冒険者ギルドを出て依頼をこなすために東にある森を目指して街の東門に向かう。門につくと門兵さんにかるく頭を下げて挨拶をして門を抜ける。そして森に向かって歩き出す。
森に着き地面に生えている草を見ても雑草ばかりでなかなか薬草や魔草との区別がつかない。しょうがないので探索魔法で薬草と魔草の群生地を探すことに下。
探索魔法をかけると【マップ】上に薬草は黄色い☆印で表示され、魔草は赤い☆印で表示されるようになった。
「これで採取がやりやすくなったぞ」
修一は【マップ】を頼りに薬草と魔草を採取していく。薬草を手にして何となく鑑定を掛けてみる。
【薬草】
体力回復ポーシュンの材料になる植物。魔素の多い場所に生えてる。
「うわっ! ウインドに鑑定結果が表示されている。 これがポーションのもとになるのか。 あとで自分でも作ってみよう」
修一は全知全能のスキルを持っているので何でもできる。ゲームをしているときにも生産職に憧れを持っていた。
【マップ】を利用して多くの薬草と魔草を採取して【
「薬草と魔草が手に入ったしそろそろゴブリンでもさがすか」
修一は【マップ】の範囲を1kmに広げてゴブリンをさがす。基本的に魔物は人間を餌として認識している。つまり近づいてくる魔物は修一のことを食らおうと襲ってくるのだ。
森の奥に入っていくと直ぐに【マップ】にゴブリンの反応が表示された。スキル【隠密】を利用してごゴブリンに近づく。ゴブリンは襲った人の武器を利用するらしい。5匹いるゴブリンの二匹は棍棒じゃなく短剣を持っていた。
修一は木の陰に隠れてゴブリンに近づき目の前を通るゴブリンに斬りかかる。ゴブリンは腹を切り裂かれて絶命する。
「「「「グギャギャ」」」」
残りのゴブリンが雄叫びを上げる。修一は直ぐに右にいるゴブリンの喉に剣を突き刺す。そして剣を引き抜くと振りぬきざまに袈裟斬りにゴブリンに斬りかかる。
その間ゴブリンはなす術も無くやられていく。ゴブリンが切りかかってきても修一は僅かに体を傾けるだけでゴブリンの攻撃を躱しゴブリンの首を斬り飛ばす。
呆気にとられて立ちすくんでいるゴブリンの頭を剣で真っ二つにする。あっという間に修一はゴブリンをやっつけた。修一はゴブリンの胸に剣を突き刺し魔石を取り出し【
ゴブリンが持っていた短剣も〖リバース〗の魔法で新しくして【
その後もゴブリン退治や薬草採取などをして陽が傾いてきたので街に帰ることにした。お腹がすいていたので走って帰る。
時間も時間なので門に並んでいる人はいなかった。今日何度目になるかの同じ門番に冒険者ギルドカードを見せて町の中にはいる。
冒険者ギルドに入ると依頼をこなして戻って来た冒険者で込んでいた。修一は依頼完了の報告をするために列に並ぶ。暫くすると修一の番になった。
「本日はどのようなご用件でしょうか。 スベリンの冒険者ギルドは初めてですか? 冒険者登録ですか? それとも買い取りの依頼でしょうか」
美人の受付嬢は修一を見るとそう聞いてきた。
「実はハンナさんに登録してもらいまして、常時依頼を受けてきましたのでその依頼完了の報告に来ました」
「依頼完了の報告ですね。 それではギルドカードの提出をお願いします」
美人な受付嬢の笑顔での対応に修一は呆けた顔になる。そしてギルドカードを受付嬢に渡す。
「ギルドカードを確認しました。 それでは討伐部位などをこのトレーに乗せて下さい」
トレーのゴブリンの右耳と魔石47個とスライムの魔石14個に薬草135本に魔草159本を乗せる。
「すみません。 討伐部位はこちらで処理しますが魔石の買取は買取カウンターでお願いします」
そう言って魔石は修一に戻された。
「では、計算いたしますので少々お待ちください」
受付嬢は量が多かったので後ろにいた職員にも声をかけて計算をしていく。それほど時間を掛けることなく計算は終わった。
「シュウイチさん。 計算は終わりました。 ゴブリンが47,000
合計で79,580
修一はカウンターの上に置かれたお金を受け取ると【
「それにしても、薬草と魔草は間違っていた草が一本もなかったですし、数も多かったので驚きました。すごいですね。これからも頑張ってください」
満面の笑みを向けられ、慌てる。
「あ、ありがとうごじゃいます。」
美人に褒められて噛んだ。
とりあえず噛んだことはなかったことにして、魔石の買い取りをしてもらうために、ハンナさんのいる買い取りカウンターに向かう。
「ハンナさーん」
「おや、戻ってきたのかい? おつかれさん。初めての依頼はどうだった?」
「なんとかなりました。魔石の買い取りお願いできますか?」
「はいよ、ここに出しておくれ」
修一はあらためてカウンターのトレーの上にゴブリンの魔石47個とスライムの魔石14個を乗せる。
「へー。 結構あるじゃないか。 全部ゴブリンかい?」
「いいえ。 スライムの魔石も混ざっていますよ」
「そうかい。 少しまってな。 直ぐに確認するよ」
「はい」
しばらくするとハンナさんが声を掛けてきた。
「シュウイチ。 計算が終わったよ」
「お願いします」
「ゴブリンの魔石が47個で47,000
「有難うございます。 頑張ります」
修一はそう言いカウンターの上に置かれたお金を【
(ゴブリンが持ってた剣とかって、たぶん鍛冶屋とかが買い取ってくれるんだよな?)
「ゴブリンが持ってた剣とかが少しあるんですけど、それはここじゃ買い取ってないですよね?」
「剣とかは鍛冶屋とか武具屋にもってけば買い取ってくれるよ。安いとは思うけどね。」
あ、宿のことも聞いてみるか。
「ありがとうございます。あと、この辺でいい宿ってないですか?」
「ん? 宿かい? それなら大通りを門の方へ少し行くと 宿り木 って宿があるからオススメだよ。私の妹夫婦がやってるのさ。」
「そうなんですか。じゃあ、そこ行ってみます。ちなみに鍛冶屋は近くにありますかね?」
「ここから一番近い鍛冶屋はギルド出て門の方へ向かうとすぐにある、ハンマーの看板の店だ。同じ方角だから宿り木行く途中に寄ってみな」
「ありがとうございます」
お礼を言ってギルドを出る。家事屋に向かう。
少し歩くとすぐに鍛冶屋が見つかった。買取価格は安いって言ってたけど、そんなにいい武器なわけでもないし、持ってるだけ邪魔だから売ってしまおうと修一は思った。
「すいません!」
鍛冶屋に入ったが、店員らしき人が見当たらなかったので、とりあえず声をかけてみると、奥からムキムキの厳つい顔のおやっさんが出て……くると思ったが、ひょろっとしたメガネのおっちゃんだった。
「あいよ、いらっしゃい。なにか武器をお探しかい?」
下がったメガネを直しながら、おっちゃんが聞いてきた。
「あの……いらない武器を売りたいんですが、買い取ってもらえますか?」
「はいはい、いいよ。とりあえずそれらを見せてくれるかね?」
修一は【
「これは安物の剣だね。 新しいけどどこで見つけたんだい?」
「それは内緒です」
「まあ、いいか。 一本25,000
「それで構いません」
「そうかい。 お金を準備してくるから待っててくれ」
「はい」
しばらくすると店の奥からおっちゃんが出てきてお金を渡してくれた。
「買い取ってもらって有難う御座います」
「いやー。 こっちも安く仕入れられて助かるよ。 また剣が手に入ったら売りに来なさい」
「分かりました。 また来ますね」
修一は鍛冶屋を出ると宿屋へと向かう。
宿屋へ向かいながら、周りを見ていると、やはり、奴隷となっている獣人が少し多いように感じた。奴隷じゃない獣人も普通にいるが、たまに見受ける感じからすると、獣人への人あたりは強いように思う。いわゆる人族至上主義のような感じなのかもしれない。モフモフは素晴らしいのに嘆かわしいことである。
そんなことを考えながら歩いていたら、目的の宿屋へと到着。
扉を開けると左手にカウンターのようなところがあり、同い年くらいの明るい茶髪をポニーテールにした可愛らしい女の子が立っていた。
その奥には食堂らしき場所が見える。
「いらっしゃい! 宿り木へようこそ。お泊りですか?」
「はい、ハンナさんに教えてもらってきました。一泊いくらですか?」
「あ、ハンナおばさんの紹介なんですね!一泊小銀貨4枚、朝夕の食事付きで小銀貨5枚です!お湯が使用したいときは銅貨1枚でご用意できますが、ハンナおばさんの紹介ですし、お湯の代金はサービスしときます」
笑顔で教えてくれ、サービスまでしてくれた。ハンナさんにも感謝だ。
小銀貨1枚でだいたい1000円くらいの感覚だろうか?宿代と考えたら安いな。あまり長居する気は無いけど、まだ色々情報不足でもある。
「じゃあ、とりあえず食事付きで2日でお願いします」
銀貨2枚を出しながら答えた。
「はい、かしこまりました。銀貨1枚、ちょうど頂きます。お名前をここに記帳してください。こちらが部屋の鍵です。2階の右手側の奥から2番目の部屋をお使いください。今日のお食事はどうされますか?」
「お腹ぺこぺこです。食べたいです」
「ふふふ、わかりました。すぐ用意できるので、お部屋に荷物を置いたら奥の食堂へお越しください。あ、私はアニーと言います、よろしくお願いします」
「俺は修一です。しばらく厄介になります」
名前を書いて鍵を受け取り、俺は2階の部屋へ向かう。
部屋に入るとそこはベッドと小さめの机と椅子があるだけのシンプルな部屋だった。
修一とりあえず剣を置き、空腹がつらいと訴え続ける腹にもうすぐ飯が食えるぞと励ましの言葉をかけながら、食堂へ向かう。腹に話しかけるとか、空腹のせいで頭までイカれてしまったのだろうか。
食堂はいい匂いで満たされており、食事中の人が何人か座っていた。
「シュウイチさん、食事持ってきましたよ。今日のメインはグリーンボアの肉を焼いた物です!」
「グリーンボアですか。美味しそうですね。ところでグリーンボアってなんですか?」
食べながらアニーに聞いてみた。日本にいた頃のラノベなどによる偏った情報から考えると、ボアって言うくらいだからイノシシかなにかかな?と修一は思った。
(それにしてはさっぱりした肉だなあ。シンプルだけどなかなかうまい)
「え? グリーンボア知らないんですか? グリーンボアはグリーンボアですよ! こう、長くてニョロっとした…鳥の卵とか丸呑みしちゃうあいつですよ!」
(ブフォッ!! 蛇じゃねーか!!)
「…あ、あいつですか。グリーンボアって名前なんですね。 あははは、とてと美味しいです」
「それはよかった。ゆっくり食べてください」
立ち去るアニーを横目に、少し吹きそうになってとっさに口を手で押さえたときの汚れを拭きとる。
(それにしてもびっくりした。まさかのヘビか。どうりで鶏肉みたいなさっぱりした感じな訳だ。おいしいからヘビでもなんでもいいんだけど、さすがに予想外であった。でもうまい)
「ふぅ、食った食った。ごちそうさま。」
「はーい、片付けはしておくのでそのままにしておいてくださーい」
奥からアニーではない声が答えてくれた。今のがハンナさんの妹さんだろうか。そのままでいいと言うことなので、食器をそのままにして部屋へ向かう。途中アニーと会ったので、お湯をお願いしておいた。
部屋に入り一息つくと、アニーがすぐにお湯を持ってきてくれた。
「予想はしてたけど、風呂に入れないのは辛い。風呂付の家を買うことを目標にしようかなぁ」
ボヤきながら体を拭いて、クリーンアップをかけ、ベットに入ったらすぐ眠りについてしまった。
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