第642話 ケビン拉致事件!?
ケビンが転移で去ってから、マリアンヌたちが次の目的地を温泉のあるタミアに定めた頃、ケビンはケビンで【携帯ハウス】に戻ってきていた。
「おかえり、ケビン君」
「おかえり」
「おかえりー」
「おかえりなさい、ケビン」
「ただいま。何か変わったことはあった?」
ケビンは不在時の間に起こった出来事を聞き出そうとしていたが、ティナたちからは「特に何もなかった」という簡単な返答で終わる。
すると、ティナはそれよりも向こう側で何があったのかを聞きたくてうずうずとしており、ケビンを引っ張りソファに座らせると前のめりで口を開く。
「ねぇねぇ、ケビン君。向こうであった出来事のお話を聞かせてよ」
それに対してケビンは、転移してからのことをティナたちに語り始めるのだった。
「へぇー人族っぽいゴブリンかぁ……」
「新種発見」
「見てみたかったなー」
新種となるゴブリンヒューマンの情報にティナたち3人は興味津々となるが、今となってはケビンが跡形もなく燃やし尽くしたので、その姿を確認することはできない。
「それで、ケビン君が王子様をした後はどうなったの?」
そのようなことをティナから言われてしまったケビンとしては、自身が王子様行為に及んだかどうかは甚だ疑問の残るところではあるが、それを否定しようにも必ずと言っていいほど更に否定で返されてしまう経緯が、過去には幾度となくあった。
それゆえに、最近では一般的な白馬の王子様扱いを受ける行為を無自覚にした後は、周りから何を言われようとも完全にスルーして、ケビンの中では何も言われなかったということにしているのだ。
そして、それからも続くケビンの体験談によって、ティナたち3人は興奮を抑えきれず前のめりになって傾聴している。
これもひとえに、せがむ子供たちに物語を読みまくり鍛えられた語り部としての能力が、いつの間にか【語り部 Lv.1】というスキルに昇華され、臨場感溢れる話し方ができるようになったからだ。
「えっ!? クキ君、片腕なくなっちゃったの!?」
「お世話係……」
「ベネットにもようやく春だねー」
ティナたちが三者三様の反応を見せる中で、サラが核心を突いてくる質問をケビンにぶつけた。
「それで、ベネットさんはクキ君と進展しそうなのかしら?」
「んー……どうだろ? とりあえずチャンスはやったから、あとはベネット次第かな」
「頑張って欲しいところね」
そして、ケビンの体験談が終わるとティナたちも満足し、そろそろ冒険を再開させようかという時にそれは起こった。
「ふふふ……動けないでしょう?」
正しくケビンだけが身動きできなくなり何事かと思考を巡らせていた時に、聞き慣れた声が部屋の中に響きわたり、その声の主はケビンの前に立っていたのだ。
「あら、ソフィさん。どうかしたの?」
「お義母さん、冒険は楽しんでいますか?」
「ええ、ケビンといっぱい一緒にいられるから楽しいわ。それで、ソフィさんは?」
「私を蔑ろにするケビンにお仕置きをしようかと」
「あらあら……ケビン、ソフィさんを蔑ろにしたの? ダメよ、奥さんは大事にしなきゃいけないのよ?」
至ってマイペースにケビンを窘めるサラだが、ケビンとしてはこれっぽっちも身に覚えがない。
「いや、何が何だか……」
そして、身動きの取れないケビンがソフィーリアを怒らせるようなことをしたのかと記憶を辿るが、全くもって身に覚えがないのでポカンとしたままだった。
しかし、そのようなケビンをそっちのけで、ソフィーリアがこの場にいる女性たちへ話を進めていく。
「お義母さん、ケビンを少し連れて行きたいのですがいいでしょうか?」
「私は構わないわよ。ソフィさんだもの」
「ティナたちはどう?」
「ソフィさんの決定は覆せないよ」
「うん。従う」
「楽しいことをするのなら混ぜて欲しいなー」
「ありがとう。でも、クリス。今回は混ぜてあげられないわ。それはまた別の機会にね?」
そして、この場にいるサラたちからの了承が得られたことによりソフィーリアが動き出そうとするが、当の本人であるケビンはそうもいかない。
「いやいやいや、俺が何したの!? ソフィを蔑ろにするなんて、天地がひっくり返ってもありえないだろ?」
「あら? それじゃあ、今から天地をひっくり返そうかしら。そうしたら、ありえないかどうかがわかるわ」
「ちょ……やめて!? マジでやめて!! みんな死んじゃうから!」
「死なないわよ。そこら辺は配慮して死なないようにするわ。奇跡体験ツアーになるわよ?」
「ツアーじゃなくて神の審判だからっ! 配慮がなければ九死に一生どころじゃなくて、絶死だから!!」
「アンビリーバボー!?」
「なんでやねん!」
ひょんなことから夫婦漫才に発展したケビンとソフィーリアのやり取りだが、この場に観客はいるものの一部言葉の意味がわからないため、爆笑の渦に包み込まれることはなかった。
そんなこんなで夫婦漫才を終えた?ソフィーリアは、近いうちにケビンを返すとこの場にいる者たちに伝えたら、身動きの取れないケビンを連行するため、転移で消え去ってしまったのだった。
「ケビン君、何をしたんだろう?」
「予測不能」
「何かの1番をソフィさんにあげなかったとか?」
3人がそのようなことを言っていると、クリスの発言した言葉にピンとくるものがあったのか、サラは予想の範囲内をぽつりとこぼしてしまう。
「そうねぇ……もしかしたら、この前のアレかしら?」
すると、クリスはサラの言う“アレ”の中身を聞こうとして問い返した。
「お義母さん、アレって何?」
「みんなで昔のケビンとイチャイチャしたでしょう?」
「「「あっ……!!」」」
サラの言葉によって、身に覚えがありまくる3人は気まづい雰囲気を漂わせるが、三者一様に責任転嫁をすることにしてこの場を収めようとする。
「アレはケビン君がいきなりしたことだし……ねえ?」
「ケビン君が悪い」
「まぁ、アレは突発的な事故みたいなものだし、私たちがお願いしたわけじゃないから……」
「ふふふ、アレは楽しかったわねぇ……またしてみたいわ。シーラがいたら発狂するでしょうね」
「あぁぁ……シーラね……」
「抱きついて離しそうにない」
「超絶ブラコンだしねー」
本人のいないところでディスられてしまうシーラだが、仮にこの場にいたとしても「自慢の弟なんだから、当然だわ!」と言っては、全く気にしそうにない。
そのようなケビン拉致事件の原因の予想を立てていた4人は、ケビンが戻ってくるまでのんびりと過ごすことにしたのであった。
ところ変わってケビンが拉致された場所は、ベッド以外は何もない白い空間である。そのようなところに連れてこられたケビンとしては、【万能空間】でないことに疑問を感じていた。
「【万能空間】なわけないでしょう? あそこは、テオが仕事の合間に使ったりしているのよ?」
それもそうかと思い至るケビンであったが、それにしてもやけに落ち着いた雰囲気を醸し出している。
その理由としては、体の自由がきかず身動きが取れないにしろ今はベッドの上に座っていて、ベッド以外は何もないとくればやることはひとつ。そう思い至ったケビンとしては、『むしろ、ご褒美?』とタカをくくっていたからだ。
だが、タカをくくっていたケビンにとって、思いもよらないことが起こる。
「管理者権限発動。《スキル限定封印》」
「へ……?」
ソフィーリアがいきなり神力を行使したかと思えば、ケビンの体が光に包まれていた。
「え……ちょ……何コレ!?」
「《強制催眠》」
続くソフィーリアの力によって、慌てていたケビンは焦点の合っていないとろんとした表情となる。
「《肉体変化》、前世の肉体を遡行」
次には前世の健である肉体に変化させたかと思いきや、そこから更に遡行し、見る見るうちにケビンの肉体は健時代の児童体型へと変わっていく。
「さて、下準備は終わりね。ここからが本番よ、健」
未だ虚空を見つめるケビンに対して、ソフィーリアはこれからすることへの期待が膨らんでいるのか、口元のニヤニヤが止まらない。
「《催眠開始》あなたの記憶は6歳の頃に戻る。無垢で可愛かったあの頃よ」
「……」
「さあ、答えてみて。あなたは今何歳?」
「……6さい」
「最近の楽しみは何かしら?」
「パパのおしごとがおやすみのひにね、ママといっしょにみんなでランドセルをかいにいくんだ」
「そう。それは楽しみね」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
成功……成功だわ! まぁ、私が力を使ったのだから成功するのは当たり前なのだけれど。それじゃあ、本格的に楽しむことにしましょう♪
「《催眠解除》」
ふふっ、これで前世において6歳児の健とラブラブできるわ。これは私にしかできない、私だけの1番! 2番も3番も、そしてそれ以降も永久欠番よ!
あ、健が覚醒したわね。キョロキョロして可愛い♡
「……ここどこ? パパは? ママは?」
ここが大勝負よ! ここで間違えたら、健が怖がって泣き出してしまうわ。そうなると、この計画も失敗に終わってしまう。それだけは何としてでも回避しないと!
「ここは夢の中よ。夢の中だから真っ白な部屋で何もないの」
「……ゆめ? おばちゃんだれ?」
「っ!! お、おばっ――!?」
ピキピキとこめかみ辺りが痙攣しているような気がするけど、怒っちゃダメよ、ソフィーリア。……落ち着いて、私は大人なのだから。そして相手は何も知らない子供の健。怒っちゃダメ、怒っちゃダメ……深呼吸よ、深呼吸……すぅぅ……はぁぁ……
「私は、お……おばちゃんじゃないのよ? 私はお姉ちゃんなの」
気を取り直して私がそう伝えたのだけれど、健は当たり前のことを返してきた。
「ボクにおねえちゃんはいないよ。だから、おばちゃんはボクのおねえちゃんじゃないよ」
おばっ――!? 一度ならず二度までも……!! くっ……堪えろ、私ぃぃぃぃ! 相手は無垢な健なのっ! これは仕方がないことなのっ!
とんだ落とし穴に嵌ってしまった私は中々に先へ進めず、如何にして健に「お姉ちゃん」と呼ばせるか四苦八苦してしまう。
「あ、あのね、年上の女の人にはね、お姉ちゃんかお姉さんって呼ぶのよ? これは世界共通のルールなの」
「せかいきょうつうのるーる? よくわかんないけど、しんてきのおばちゃんはおばちゃんってよんでるよ?」
し、神敵!? 健は神敵の女と会っているの!?
……って、ないない。そんなことはないわ。多分、親戚のことよね? もうっ、間違えたまま覚えちゃってて可愛い♡
「それは、“しんてき”じゃなくて“しんせき”って言うのよ。それで、親戚だからおばちゃんって呼ぶの。私は健くんの親戚じゃないから、お姉ちゃんって呼んでね?」
そのようにお願いした私だったが、私のお願いよりも別のところに健の注意が向いてしまった。
「なんでボクのなまえしってるの? なんで、なんで?」
これはまずい! お姉ちゃん呼びに注力するあまり、健の名前を普通に呼んでしまったわ! 何とかしないと、健に不審者扱いを受けてしまう上に、下手したら全ての計画がパァよ!
な、何か……何か誤魔化す方法は……
「ねぇねぇ、なんでなの?」
そ……そうよ! この手があったわ!
「あのね、驚かないで聞いて欲しいのだけれど……」
「ビックリするお話なの?」
「そうねぇ……もしかしたらビックリするかも?」
「ほんとう!? おしえて、おしえて!」
もうっ、健ったら目を輝かせちゃって。そんなに驚く話が聞きたいのかしら?
「実はね、お姉ちゃんは健くんの未来のお嫁さんなのよ? だから、健くんの名前を知っているの」
「およめさん?」
あんっ、首を傾げる健が可愛いっ!
「そうよ、お嫁さん。夢の中だから未来から逢いに来ちゃった♪」
「みらい? みらいってなに?」
「ずっと……ずうぅぅぅっと先のことよ」
「ずうぅぅぅっとさきなの!? すごいっ!」
私の話を聞いた健が興奮しているみたいで、とてもはしゃいでいる。可愛いすぎる健を見ていると、そろそろ私も我慢できなくなってきたし、もう食べちゃってもいいよね?
「健くん、お姉ちゃんと気持ちのいい遊びをしましょう?」
「おねえちゃんとあそぶの? ボク、ヒーローごっこがいい!」
ふふっ、ヒーローごっこがいいだなんて、健はまだまだ子供みたい。実際、子供なんだけど。それに、テレビゲームとか言い出さないあたり、この時の両親は簡単にゲームを与えたりせずにきちんと育てていたみたいね。
「さあ、健くん。ぬぎぬぎしましょうね」
そう言って私が健の服を脱がせにかかると、健は非力ながらも抵抗をした。どうやら、何故服を脱がなきゃいけないのかわからないみたいだ。
このままでは埒が明かないと思い至った私は、健がゴブリンヒューマンと戦っていたことを思い出すと、多少なりとも汚れているだろうと思い、お風呂に入るためだと言って脱がしてしまう。
「ポークビッツ発見♡」
健の可愛いすぎるものを目にした時の、私の興奮は留まるところを知らない。ヤバい……鼻血出そう……
……コホン。いけないわ、私は女神なんだから痴女みたいな態度は慎むべきよ。
それから、襲いたくなる気持ちをなんとか押さえ込んで、即興でお風呂スペースを追加で創り出すと私も服を脱ぎ、その場に健の手を引いて連れていく。
その後は、我慢がききそうにない私がさっさと襲いたいがために健を素早く洗ってしまうと、体を拭いたあとはベッドの上に直行した。
ハァハァ……もう憚るものは何もない。誰も私を止められない。
「それじゃあ、健くん。気持ちのいいことをしましょうね」
「よくわかんないけど、なにするの?」
それからの私は力を行使して健を精通させると、気持ちいいことに専念する。もう、その時の興奮と言ったら……健が凄く気持ちよさそうに蕩けた表情をするものだから、ゾクゾクしちゃって何度もしちゃった。
ということで……名残惜しいけれど、健を元に戻そうかしら。健の恥ずかしがる顔も見たいし、今回のことは記憶に残るようにして焼き付けておきましょう。
さあ、目覚めの時よ、愛しいあなた。
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