第625話 新たな力に目覚めるケビン

 ケビンが勇者たちのところから帰ってくると、精神的に疲れているのかソファにすぐ座るなり溜息をつく。


 すると、【携帯ハウス】でのんびりと過ごしてたティナがケビンの隣に座り、開口一番に何があったのかと尋ねた。それによって、他の者たちも状況が知りたいのかソファにゾロゾロ集まってはケビンに注視する。


「――ということがあってだな」


「行って帰ってきただけなのに、お嫁さんが5人も増えたの!?」

「歩く嫁量産機」

「勇者嫁制覇まであと少しだねー」

「ふふっ、義娘がいっぱいでお母さん嬉しいわ」


 驚くティナに続き、ニーナがしれっと毒を吐き、クリスが進捗状況を伝え、サラが楽しそうに感想をこぼすと、ケビンはこういう流れに対して既に慣れてしまったのか、弁明すらせずに軽く流していた。


「それじゃあケビン君も戻ってきたし、冒険の再開をしようか」


 ティナがそう音頭を取るも、当のケビンは紅の長と月出里すだちのせいで精神疲労が溜まり、今日はもう何もしたくないという気分になっている。もう既に気分はゴロゴロへまっしぐらだ。


「今日は精神的に疲れたからパスで」


「じゃあ、エッチしよ!」


「……」


「エッチしよ!」


「……何が“じゃあ”なのか意味がわからない上に、大事なことだから2度言いました的なことをされても……」


「ケビン君、病気!?」


 エッチの誘いに乗らないと言うだけで、病気扱いされてしまうケビン。甚だ不本意ではあるがどうしようもないくらいに前科があるため、ケビンとしては反論することもできない。


「ほら、ケビン君。見て、見て」


 ケビンが病気かもしれないと失礼な判断をしたティナが、自身の服の襟元を下に引っ張り、自慢の谷間を披露する。


「ケビン君の好きなおっぱいだよ~ぽにょぽにょだよ~」


「確かにぽにょぽにょしてそうだな」


 一言そう伝えるだけで終わってしまうケビン。


「っ、ニーナ! ケビン君が病気よ!」

「天変地異!?」


 全く食指を動かそうともしないケビンによって、ニーナまでもが驚愕した。しかも、ケビンに対し天変地異扱いをするあたり、何気に毒を吐いているようだ。


「クリス! 何か良い手はないの!?」


「んー……精神疲労だから、癒してあげるのは?」


「わかった! 準備してくる!」


 そう言い残して、リビングから繋がる一室に姿を消したティナ。何かを企んでいるようだが、ケビンはその行動を気にも止めず、【無限収納】から出した紅茶を飲み始めてひと息つく。


「はぁ~……身体に染みわたる……」


 そこへケビンと同じソファに座ったサラからの一言。


「ケビン、お母さんの膝枕使う?」


 ポンポンと脚を叩いて主張するサラによって、ケビンは誘蛾灯に導かれる虫のごとく、こてんとサラの脚に頭を乗っけてくつろいだ。


「ふふっ、私の可愛いケビン……」


 頭を撫でながらケビンを満喫するサラ。『その手があったか!』と言わんばかりに目を見開くニーナ。クリスはティナが何をしようとしているのかおおよその予想がついているのか、ニヤニヤとしながらティナが消えた部屋のドアを見つめていた。


 そこへバタンっと勢いよくドアを開けて登場したティナ。


「ケビンくぅん、お姉さんと気持ちいいこと、し・な・い?」


 そのティナの姿は童貞殺しの1種であるニットワンピースに身を包み、胸元はハートマークに切り抜かれ、前かがみになり両腕を使いながらこれでもかと胸を寄せては、見事な谷間を演出している。


「だっちゅーの……だと……!?」


 更には横の布地がほとんどなく唯一ある布地と呼べるものは、申し訳なさ程度に脇の下にあるくらいだ。そこから目線が下に流れていくケビン。


「――っ!?」


「ふふっ、この紐……引っ張ってみたくな~い?」


 ケビンの視線を感じとり、体をくねらせて腰部分で結んである紐を摘んでは、それをアピールするティナ。


 ケビンは想像する。ニットワンピースの裾部分が本来のタイプではなく、ハイレグ気味にカットされているわけを。


(あれは脚を通す穴が作られているわけではなく、もしや……!)


「う……後ろ姿を見せてはくれないか……」


「んふふ……チョットだけだよ?」


 その場でクルっと素早く1回転するティナ。その瞬間にケビンはスキルと身体能力をフル活用して、ティナの後ろ姿……いや、臀部付近をこれでもかとガン見した。


(肩甲骨辺りからフルオープン! からの、臀部の布地! つまりっ、前側布地からの地続きということか!!)


 ケビンは悟る。あの紐を解けば、その先には桃源郷が待ち受けているのだと。


「ケビンくぅん……早くしないとお姉さん帰っちゃうぞ♡」


 腰をフリフリとしながら、それに合わせてユラユラと揺れる紐をアピールするティナ。だがここでニーナからの辛辣な一言が、そのティナを襲う。


「……痴女エルフ」


「――!?」


「略して、チジョフ」


「――!!?」


「チジョフかぁ……ティナの代名詞でもあるエロフって言葉も、定番になって新鮮味が失われつつあるから丁度いいかもねー」


「――!!!?」


 ニーナからの辛辣な言葉に加え、クリスからも納得されてしまったティナは、瞬く間に誘惑の行動から現実に引き戻される。


「こ、これはケビン君を元気づけようと……」


 エロい雰囲気から現実に引き戻されたティナが羞恥に顔を赤く染めていると、接待されていたケビンがむくっと起き上がりティナを手招く。


「ティナ、ちょっと俺の脚を跨いで立ってくれ」


 そう言われたティナは何だろうかと思いながらも、言われた通りにケビンの脚を跨ぎソファに立った状態となる。そうなると、必然的にケビンの目の前にはティナの股部がくることになった。


 すると、唐突にケビンは左右の紐を解いた。


「――っ!?」


 今現在ティナは脚を開いてケビンの目の前に立っているため、お尻を隠していた布地は必然的にひらりと前側へ垂れてしまう。


「ふむ……やはりこういう作りだったのか。俺がサキュバス用に作った童貞殺しにこのタイプはない……となると、ソフィの創り出した物か……グッジョブ!」


 ケビンを喜ばせるためエロさを追求するという点において、第一人者と言っても過言ではないソフィーリア。そのソフィーリアが創り出した童貞殺しに、ケビンは感嘆としていた。


「ケ、ケビン君……?」


 そして、戸惑うティナをよそにケビンは欲望を全開にする。


「ちょ!? ……ケビン君まだお昼っ……!」


 さっきまでケビンを散々誘惑していたというのに、いったいどの口がほざくのかと、総ツッコミを入れられてしまいそうなティナの発言。だが、ケビンは24時間年中無休のエロテロリストだ。今更お昼どうのこうので夜まで待つかという気持ちは、さらさら持ち合わせてはいない。


「チジョフ降臨」

「後ろから見ると、本当に痴女だねーお尻丸見えだし」

「横からだと、ティナさんのだらしない顔が見られるわ」


 三者三様の感想が溢れ出すと、それを耳にしてしまったティナの顔はますます赤く染っていく。まだ、羞恥の方に天秤が傾いていて、エロフとしての昂りの準備が整っていないみたいだ。


 そして、快楽により酩酊状態に近い形で朦朧とするティナは、ケビンが何を言おうとも理解が追いつかない。何かを喋っているのは理解しても、その内容までは理解するのに時間がかかっているようだ。


「久々に……スキル創造、【振動】……からの、発動!」


「あひゃ!!!? これ、らめぇぇぇぇぇぇぇぇ――!!」


 その場の思いつきで【振動】を創造したケビンによって、細かい振動を与えられてしまったティナ。ケビンはスキルのコツを掴むために今は動いていないのだが、自身が振動するという何とも奇妙な感覚を体験していた。


「おもちゃと全然違う……違うよぉ!」


 ティナの叫びに対して、いったい何が起こっているのだろうかと思っていた3人だったが、ケビンの口にした「【振動】」という単語と、ティナの口にした「おもちゃ」という単語によって、クリスがいち早くそれに気づく。


「どのくらいの強さなんだろ……」


 クリスの何気ない一言によって閃きを得たケビンは、【振動】スキルを物にするため、強弱の変化が行えないか試すのだった。それによって被害を被るのはティナである。


「ドSの鬼畜降臨……」

「ティナの顔がヤバいねー」

「何だか犯された後みたいだわ」


 三者三様の感想がこぼれる中、やることをやってしまったケビンはティナを抱きかかえて1人掛け用ソファに下ろした。


 そのティナが未だ小刻みを繰り返しているのを見たケビンは、さすがに『やり過ぎたかな?』と反省はしてみるも、いつものことながら今後に活かされることはない。


 そして、ケビンが次のお相手を誰にするかで視線を流すと、ニーナはケビンと目が合った瞬間にビクッと反応してしまう。だが、それを見逃すほど、今のケビンは甘くない。


「そういえば……さっきからニーナが結構毒を吐いてたよね?」


「な……何のことかな?」


(ヤバい……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい! ドSモードのケビン君から何されるかわかんない!)


 咄嗟に振られたニーナは視線が泳ぎ始めてしまい、誰の目から見ても明らかなほど挙動不審になっていた。そこへ静かに近づいていくケビン。ニーナは咄嗟にクリスを生贄に捧げようと企み、目はケビンを見たまま隣に座っていたクリスの服を掴もうと、感覚だけでにぎにぎと手を動かしているのだが、手は空を切るばかりで一向に掴める気配がない。


(ク……クリス……? あれ? 何で掴めないの?)


 そこでニーナは、ケビンから視線を外しチラリと隣を見てみたが、あるべきはずのクリスの姿はそこになく、そこから更に視線を動かしてみたところ、クリスはサラが座っているソファに移動完了していたのだった。


 そして、クリスと目が合ったニーナは驚くべきものを見てしまう。


 それは、自分に被害がこないと判断したクリスが、にこやかな顔つきで手を振っていたのだ。それによってニーナは、絶望を見たかのような顔つきとなり、もう後がないのだと悟る。


(クリスぅぅぅぅ!? その聖母のような微笑みは何っ!? ちょっとくらい助けてくれてもいいでしょぉぉぉぉおおおお!?)


「裏切り者……」


 恨みがましくボソッと呟くニーナだったが、ふと間近に気配を感じ取ってしまいそちらに顔を向けると、そこには準備完了な立ち姿のケビンがいた。


「――っ!?」


(ああ……これダメだ……ダメなやつだ……)


 それからガシッと頭を掴まれてしまったニーナは、この後、何をされてしまうのかすぐさま思い至る。


 だが、ニーナはティナが受けたような仕打ちじゃなかったことに安堵したのか、いつも通りにご奉仕する。その際に、少しでもケビンのドS度を下げていくため、媚びるような上目遣いも忘れない。ドS回避という目的のためなら、あざとささえ容易に使ってみせるニーナであった。


 そして、ニーナとの行為が終わったケビンに、クリスが先手で声をかける。それはひとえに、ティナの惨事を見たからに他ならない。


「ケビン君、私はベッドでまったり愛し合うのがしたいかな」


「ベッドで?」


(よしよし、食いついてきたな……アレだけは回避しないと)


「うん。ここだと、ティナがソファを1台占拠してるでしょ? ニーナも横になって1台占拠してるし。私とお義母さんまでここでしたら、休むソファが足りなくなっちゃうよ?」


「確かに……」


「それに休むなら横になりたいし、1人掛けソファだと休めないよ」


「一理ある」


(いいよ、いいよぉ! ぶっちゃけ、【創造】を使って新しくソファを増やすって手もあるけど、それに気づく前にベッドへ連れて行っちゃえ!)


「ね、行こ?」


 ケビンが気づく前に行動に移さんとして、クリスは先んじてケビンの手を引き、グイグイと引っ張る。その際には前屈みになり、ケビンの弱点である上目遣いも忘れない。


「じゃあ、行くか」


(イエスっ!!)


「お義母さんも行こ?」


「ふふっ、クリスさんは甘え上手ね」


 クリスの目論見に気づいているサラは、あえて指摘するようなこともせず、そのままクリスに手を引かれてケビンとともに寝室へと歩き出すのだった。


「あっ、そうだ! ニーナ、落ち着いたら寝室に集合だよ」


「ティナは?」


「放っておいても問題ないよ。ティナのエロ嗅覚はサキュバス並だから、回復したら勝手に乗り込んでくるよ」


「それもそうね」


 未だあられもない格好のまま回復しないティナに対して散々な言いようではあるが、ティナがサキュバス並にドスケベであることは、嫁たちの中でも周知の事実である。よって、いくら本人が「サキュバスには負ける!」と豪語しても、生温かい眼差しを向けられるだけで、誰も取り合おうとはしないのだ。


 むしろ、そこまでサキュバスらしさを出さないサキュバスも中にはいるので、そういう相手にならティナの方に軍配が上がる。ゆえに、サキュバス並のドスケベというのは、変えようのない事実でもあるのだ。


 それはさておき、寝室のベッドの上に辿りついた3人は、向かい合って座っていた。クリスとサラは服を着ているが、ケビンは裸のままだ。なんとも、シュールな光景ではある。


「それじゃあ、ケビン君……しよ?」


 クリスのその言葉が合図となり、ケビンはクリスに近づいて口づけを交わす。先程あったクリスの要望を汲み、ケビンはまったりとすることにしたようだ。


「ケビン君……好き♡」


「クリスは好きなだけ? 俺は愛してるのにな」


「もう、いじわる……私も愛してるよ」


 再び口づけを交わす2人。それの邪魔にならないようにと、少し離れたところから微笑み2人を見つめるサラ。


 そして、ケビンはまったり愛し合うことを実行しているため、先程からキスばかりをしている。


「ケビン君……切ないよぉ……」


 2人でずっとキスを続けていた後にクリスがそう言うと、ケビンは悪戯っぽく問い返す。


「何が切ないの?」


「…………ぃ」


「聞こえないなぁ?」


 完全にニヤニヤを隠そうともしないケビンに対し、クリスは『Sっ気が出てきた』と心の中で思うのだった。


(ここはケビン君のちょいS度を満足させるために、恥じらいながら言った方が得だよね……)


「ぉ……っぱい……」


 そこで、あえてうつむき加減に顔を傾け、目線だけはケビンを見つめるという上目遣いを実行したクリスによって、ケビンの情欲は火をつけられてしまう。


 そして、クリスの絶技によって、『もう、たまらん!』と情欲を振り切ってしまったケビンは、まったりどころではなく、盛りのついた思春期男子のようにしてクリスを押し倒した。


「クリス!」


「きゃっ」


 それから、クリスの要望通りに胸を服の上から揉み始めるケビン。その手つきはソフトタッチどころではなく、服に皺が入るようなガッツリ揉みだ。


「ケビン君、まったりだよ、まったり!」


「俺をあざとく誘ったクリスが悪い!」


(うぅぅぅ……上目遣いは失敗したかなぁ……)


 完全に火のついたケビンを止めるすべはクリスにはない。今更ながらに、煽りすぎてしまったことをクリスは後悔するのだが、もう後の祭りである。


 そして、止まらぬ暴走機関車ケビンは、服の上からでは満足できないと感じたのかクリスの服に手をかけ、左右に思い切り引っ張った。それによって起こりうる現象は、ボタンが引きちぎられて服が痛むということだ。


「あああああっ!! この服、お気に入りだったのに!」


 エッチな雰囲気はどこへやら。クリスは服を痛ませられたことにより抗議の声をすかさず上げてしまうが、相手はあのケビンである。


「後で元に戻すから問題ない! よって、俺は無罪!」


「そういう問題じゃない! よって、ケビン君は有罪!」


 そのような押し問答を繰り広げる中でも、ケビンの動きは止まらない。


「ちょ……ケビン君がっつき過ぎだよー」


「ぽよんぽよんしてるこのおっぱいが悪い! よって、俺は無罪!」


「まったり愛してくれてない! よって、ケビン君は有罪!」


 完全にエッチな雰囲気からかけ離れてしまった2人は、“無罪”だの“有罪”だのと言い合っていたが、やることはやっている。


「悪い子のケビン君なんて、パンツの中がグチョグチョの刑に処してやる!」


「なにおう! 俺を有罪にするクリスなんて、おっぱいだけで絶頂する刑に処してやる!」


「「勝負だ!」」


(というか、いったい何してるんだろ……流れで勝負になっちゃったけど、これってまったりからかけ離れてる……まぁ、楽しいからいいけどね!)


 大の大人が揃いも揃って本来の目的とは違う路線を走っていると、それを見せられているサラは生温かい視線で見学していた。


(2人は、ほんと仲良しねぇ)


 このようにサラもサラでズレた思考をしていたが、“ケビン至上主義”と“義娘大好き主義”が根底にあるため、サラの中ではズレた思考ではないのだ。他人がどう思うかは別として。


 そして、一向に決着のつかない変な戦いは、いつしか本番へもつれ込んでいた。


「早く負けちゃいなよ!」


「ソフィは言っている、ここで負ける運命ではないと……」


「それなら、これでもくらえ! ソフィ様直伝の七変化!」


「――うひゃっ!?」


(「うひゃっ」だなんて、ケビン君カワイイ♡ もっとカワイイところ見せて)


「ソフィ様は言っている、ケビン君はここで負ける運命だと!」


 今まで普段通りだったクリスは、クリス曰く「ソフィ直伝の七変化」によって多様性を見せてきた。その猛攻を受けるケビンは、思いもよらぬ反撃によって意表を突かれ、思わず変な声を出してしまうほどだ。


「ちょ……これっ……は……くっ!?」


 そして、ケビンはクリスの猛攻によって予想外な刺激を受けてしまい、呆気なく果ててしまうが、クリスも限界が近かったようでケビンの後を追うようにして果てるのだった。


「……まったりとは違ったけど、これはこれで楽しくエッチできたね」


「まったりするはずだったのに、どこで間違えてしまったのやら……」


「で、勝負は私の勝ちだからね? ケビン君に初めて勝てて嬉しー!」


「ぐっ……七変化……恐るべし……」


 いくらスキルを使わず対等な勝負を繰り広げていたとはいえ、ケビンはクリスに負けてしまったことに対し、改めて【七変化】なる絶技を教え込んだソフィーリアに戦慄してしまう。それを会得してしまったクリスにもだが。


 そして、勝負に勝ったクリスが休み始めると、今度はサラがお相手をしてもらおうとケビンに近づく。


「少し疲れたでしょう? お母さんの膝枕も、さっき中途半端で終わってしまったし、もう1回してみない?」


 そう言って膝をぽんぽんと叩くサラによって、ケビンは素直に厚意を受け取るのだった。


「ふぃ~……やっぱり母さんの膝枕は落ち着く……」


「ふふっ、ありがと」


 しかしながら、ケビンは全裸である。膝枕をされている光景としては、中々シュールなものがある。


(このまま寝てしまうのもいいかも……)


 そして、ケビンがウトウトしながら緩みきっている中で、サラがもぞもぞと動き出した。それに対してケビンは、座り心地が悪いのだろうかと思っていたのだが、どうやらそれは違うらしい。


 それから衣擦れの音が聞こえたので、ケビンが目を開けてサラを見てみると、サラは上着のボタンを外し終わって、今まさに脱いでいる最中だった。


 これがいつも通りのドレスならガッツリ動かないと脱げないのだが、今は冒険中ということもあってか、サラは平服に身を包んでいたのだ。よって、少しの身動ぎでボタンを外してしまえばサクッと脱ぐことができる。


「母さん……?」


 膝枕をしてもらっている最中に、いったい何なのだろうかと疑問が後を絶たないケビンであるが、その疑問はサラの次の行動で解決されることとなる。


「ケビン、ママのおっぱいでちゅよ~」


「――??!!」


 いきなりの赤ちゃん言葉もそうだが、サラは少し前屈みになり差し出してきたのだ。これには、ケビンも不意打ちを受けてしまいビックリである。


「ちゅっちゅちまちょうね~」


 サラはケビンに授乳させるつもりなのか、ケビンの口に当てて吸うように促している。


 ――据え膳食わぬは男の恥


 ケビンはたとえ予想外の出来事だろうと、躊躇うことなく口に含んだ。


「ママのおっぱいは美味しい?」


「おいちい」


 完全に「誰だよ、お前……」と言われても仕方のない変わり身を果たしたケビンは、サラのプレイに合わせるべく赤ちゃん言葉を使いだした。知らない者から見れば、完全にドン引き状態である。


「ケビンが大きく育ちすぎて、手が届かないわ」


 それからサラは元気に育ってくれたことを嬉しく思う反面、仕上げとなる奉仕に至れないことを残念に思ってしまう。


 だが、ここにいるのは、あのケビンである。ここでサラの願いを叶えなければ男が廃ると、何の迷いもなく思ってしまうケビンなのだ。だからケビンは躊躇うことなく、即行動と言わんばかりにスキルを使ってしまう。


「【肉体構造変化】」


 すると、スキルを使ったケビンはみるみるうちに体が縮んでいき、見た目が8歳くらいになってしまった。初等部に通っていた頃のケビンの姿だ。


「ケビン!?」

「ケビン君!?」


 目の前のケビンが若返ったことにより、サラは驚きを隠せない。それは休んでいたクリスとて、そうである。


「ママ」


 だが、我が道を進むケビンは、周りのリアクションなど知ったことかと言わんばかりに、サラに対して先を促すのだった。


 そのケビンの行動は、一部の者からは『そこまでするか?!』とドン引きされそうだが、また別の一部の者からは、「漢です、ケビンさん!」と称えられるかもしれない。


 そして、当時のケビンの姿で「ママ」なんて呼ばれたことのないサラは、驚きと混乱もそこそこに、胸をキュンキュンさせながらケビンに手を添えた。


「ああ、私のケビン……愛してるわ」


 そして、サラとの行為も落ちつくと、クリスがケビンに声をかける。


「ケビン君、私もショタケビン君を味わわせて」


 獲物を狙う豹のごとくゆっくりと近づいてくるクリスの目は、完全に昔のクリスの目に戻っており、ギラギラと輝かせていた。


 そして、ケビンが何を言うでもなくクリスが襲いかかり、ケビンを押し倒すと攻め立てていく。その姿を見たケビンは、持病が再発してしまったのではないかと不安になってしまう。


 やがてそこに、復活を果たしたニーナがリビングから入ってくると、ショタケビンを犯しているクリスの姿が目に入る。だが、ニーナの頭の中はケビンを犯しているクリスの姿より、小さくなっているケビンの姿の方が衝撃的だった。


「久しぶり、ニーナお姉ちゃん」


「ズキュゥゥゥゥン!!♡」


(な、なになになに?? 何コレ!? ケビン君がケン君に!? しかも、“ニーナお姉ちゃん”って……ヤバっ、鼻血出そ……)


 すると、興奮冷めやらぬニーナはベッドに特攻し、余韻に浸っているクリスを押しのけると瞬く間にケビンを横取りした。


「あの頃のケン君だよぉ♡」


「ニーナお姉ちゃんはエッチだね」


「ケン君はそのままでいいからね、お姉ちゃんがいっぱい気持ちよくするからね♡」


 そして、ショタケビンの虜になってしまった被害者が増えてしまうと、その被害者であるニーナは包み込むようにケビンに抱きつき、奉仕活動が始まる。


 ――バタンっ!


「ケビンくーん、アレは酷いよー壊れちゃうかと思ったわよ」


 ベッドの上で3人がショタケビンに夢中になっている最中、最初の脱落者であり、中々復活を果たせなかったティナがようやく復活したのか、寝室に乱入してきたようだ。


「あ、ティナさん」


「――? ――っ!???」


 いきなり昔の呼び方をしたケビンに気づき、辺りを見回していたティナは、我が目を疑い二度見してしまった。


「どうしたんですか? そんなお化けでも見たような顔をして」


「ケ……ケビン君がケン君……ケン君がケビン君……??」


「久しぶりですね、ティナさん」


「くぁw背drftgyふじこ!!!?」


 絶賛混乱中のティナは何がなんだかわからない。ようやく復活を果たしたと思って寝室に来てみれば、昔懐かしのケンことケビンが居座っているのだ。


 これが大人のケビンなら、いつも通りとなり納得して終わりだが、今いるのはショタケビンである。ティナの頭では、理解の範疇を既に超えている。


 そうなると、ティナの取る行動はひとつしかない。


「ケン君、エッチしよ!」


 結局のところそこに帰結するティナは、ベッドに上がったらケビンの前へ行き、ショタケビンを満喫する。


 こうして、ケビンがショタケビンの姿を取ったことにより、女性4人はいつもより激しくケビンを求め、対するケビンも新鮮さから4人を激しく求め、数日間は冒険することもなく、ひたすら快楽に溺れてしまうのであった。

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