第620話 原チャで缶蹴り?

 勇者たちのいる場所から飛び去った東西南北よもひろは、不完全燃焼極まりない顔で不機嫌さを露わにしていたが、なけなしの戦利品として南足きたまくらを手中に収めたので、僅かばかり溜飲を下げることができていた。


 その南足きたまくらはドラゴンに掴まれて運ばれるという、人生初のビクビク恐怖体験をしているのだが、そのことよりも元の場所へ戻してもらうため気を強く持ち、東西南北よもひろに向かって声を張り上げていた。


「ちょっと、聞いてるの?! 早く私を元の場所へ帰してよ!」


 だが、ブラックドラゴンとブラウンドラゴンが並行して飛んでいることにより、ブラウンドラゴンの手に掴まれている南足きたまくらは、ブラックドラゴンの背に座っている東西南北よもひろを見上げながら主張することになるため、そのせいで如何せん首が疲れて痛い。


 それゆえに、そろそろ何か反応が欲しいと思っていたところ、ようやく東西南北よもひろが言葉を返してきた。


「お前は俺の性奴隷1号なんだから、帰すわけがねぇだろ」


 自身の欲望を隠そうともしない東西南北よもひろがそう言うと、南足きたまくらはあからさまに顔を顰め、批難の声を上げる。


「なに言ってんのよ、このクズ! 誰があんたなんかの性奴隷になるか! 女とヤリたきゃそこら辺の娼婦を買うか、奴隷を買えばいいでしょ!」


「てめぇ……」


 勇者たちとの邂逅を果たした東西南北よもひろが、自身の思い描いていた結果とは全く似ても似つかない散々な結果で終わり、それゆえに不機嫌になっていたところでの南足きたまくらからの罵声である。


 当然のことながら傲岸不遜な東西南北よもひろが、罵声を浴びせられてそのままで終わらせるわけがない。


 ゆえに、東西南北よもひろの取った行動は、まず、飛行していたドラゴンたちにその場で滞空するよう指示を出したことだ。


 それから東西南北よもひろがブラウンドラゴンに念話を送ると、ブラウンドラゴンは東西南北よもひろ南足きたまくらの目線が合うように、ブラックドラゴンより少し高い位置に移動した。


「主人に逆らった奴隷がどういう目に遭うか、存分に思い知れ」


 そう言い放つ東西南北よもひろだが南足きたまくらにしてみれば、奴隷にもなっていないうちから主人面する東西南北よもひろに対して嫌悪しかない。そもそも、端から東西南北よもひろの奴隷になんてなるつもりもないが。


 そのような中で、東西南北よもひろの言葉が開始の合図だと言わんばかりに、南足きたまくらを掴んでいるブラウンドラゴンが行動に移した。


「ひっ――!!」


 次の瞬間、南足きたまくらの顔が最大限に引き攣る。


 それは何故か。


 なんてことはない。


 何故ならば、東西南北よもひろがブラウンドラゴンに指示したのは、南足きたまくらを掴んでいる手を開くというものだからだ。


 物を掴んでいる手を開く。そうすると当然のことながら、手の中にある物は重力に従って落ちるしかない。


 基本的に手を加えていない物は上から下へ向かって落ちる。重力の仕組みがわからずとも、子供でも答えられる簡単な理屈だ。


 それにより南足きたまくらは、パラシュート無しのスカイダイビングを体験する羽目になる。


 風を切りながら真っ逆さまに落ちる南足きたまくら。視界に広がるのは遥か下に見える大地だ。命懸けの行為と言うよりも、命を捨てる行為を強制させられている南足きたまくらの心境は計り知れない。


 そして、地面へと落ちゆく南足きたまくらが失神しかけたその瞬間、重力のかかった体が強制的に止められたことにより、うめき声を上げながら落ちかけていた意識が再浮上する。


 それにより茫然自失と化した南足きたまくらが、恐怖によってガチガチと歯を震わせていると、落ちる途中で掴み直したブラウンドラゴンが元の位置へと上昇していく。


 それを迎えるのは、愉悦の笑みを浮かべた東西南北よもひろだ。


「身の程を思い知ったか?」


 圧倒的優位性を確立している東西南北よもひろが、ニヤニヤとしながら南足きたまくらにそう問いかけるが、当の南足きたまくらは反応できない。


 先程まで死と隣合わせの体験をさせられていたのだ。まともな受け応えができる状況でないのは、誰の目にも明らかであろう。


 だが、先程まで罵声を浴びせられていた東西南北よもひろは、今の南足きたまくらの様子を目にすると楽しくてしょうがない。傍から見てもわかるほどの優越感に浸りきるその姿は、まさにゲス街道まっしぐらである。


 それからの東西南北よもひろの行動は、勇者たちとの邂逅で溜まった鬱憤を晴らすかのごとく数度同じことを繰り返し、その仕打ちを受けた南足きたまくらは顔面蒼白と化しており、最初の威勢は見る影もない。


 そのことに満足のいった東西南北よもひろは、南足きたまくらに対して教育という名の八つ当たりをやめた。


 そして、自身の乗るブラックドラゴンの背に南足きたまくらを降ろさせると、意気消沈してへたりこんでいる南足きたまくらを隣に侍らせた。


「ハハッ! いいザマだな」


 そう言う東西南北よもひろ南足きたまくらの肩に手を回すと、南足きたまくらはなけなしの元気でパシッと払い除けるが、東西南北よもひろからの脅しでビクッと肩を震わせることになる。


「また落ちたいのか? 今度はそのまま地面に直撃するかもしれないぞ」


 たとえ途中でドラゴンに掴まれると知っていても、自分の意思とは関係なくスカイダイブさせられるのは、南足きたまくらにとって避けたい行為である。


 その上、今度はドラゴンに掴ませることなく、そのまま落ちるという脅しをかけられたのだ。


 南足きたまくら東西南北よもひろが何を考えているのかわからないし、理解したいとも思わないため、本当にするかもしれないという僅かな疑念が頭をよぎると、自身の命と天秤にかけ、泣く泣く好きでもない男に肩を抱かれる行為を容認するしかなかった。


「アオ、終わりか?」


 そこで声をかけたのは、今まで成り行きを見守っていたダーメである。


「ああ、奴隷の教育はご主人様の務めだからな。躾ってのは何事も最初が肝心なんだ。甘い顔を見せるとつけ上がるし、徹底してどっちが上なのかをわからせたら終わりだ」


「で、あの中からその女を選んだ理由は?」


 そう言うダーメは粗方の予想をつけていたが、最終的に決め手となった理由には検討もつかないので、南足きたまくらのことは単純に好みだったのだろうと考えていた。


「そんなの簡単だ。魔術師ってのは自身を守るすべってのを持たないからな。こいつらの独壇場は、仲間の影でしか強気になれない遠距離だけだ」


「やはりか」


「あとはこれだな」


 そう言った東西南北よもひろ南足きたまくらの肩から手を離すと、おもむろに胸を揉みしだきだした。


「なっ――!?」


 南足きたまくらが予想だにしないことに驚く中で、東西南北よもひろはニヤケ面を隠そうともせずダーメとの会話を続ける。


「ほら、こいつのでけぇだろ? こんだけありゃ、パイズリが楽にできるってもんだ」


「汚い手で触らないで!!」


 肩を抱かれた先程とは違い、明確な意志を持ってパシンっと強く払い除けた南足きたまくらに対し、イラッとした東西南北よもひろはやはり同じことを繰り返し伝えた。


「そんなに死にたいのか?」


 その怒気を孕んだ声を耳にした南足きたまくらが怯むと、東西南北よもひろはそれを了承と受け取ったのか、教育の意味も込めて先程の感触を楽しんでいた時とは違い、力強く揉み始める。


「いっ、痛い!」


 ローブの下に着込んでいた服が、しわくちゃになるくらいの力強さで胸を揉まれる南足きたまくらは嫌悪感でいっぱいになるが、命を握られて何もできない今の状況が悔しくて、ついには涙を流し始めた。


「っ……誰か……助けて……」


 だが、その呟きを聞いた東西南北よもひろは、追い打ちをかけるようにして、南足きたまくらに告げるのだった。


「こんな空を飛んでいる所に誰も助けに来ねぇよ。お前らの中でドラゴンを使役している奴でもいるのか? いるわけねぇよなあ? いたらあの場にドラゴンがいるはずだし」


 東西南北よもひろの言った“ドラゴン”という単語によって思い出したのか、南足きたまくらは一縷の望みをかけて言い返した。


「く……来るわよ! あの赤いドラゴンはあんたを殺すって言ってたんだから!」


「は? 馬鹿かお前。ドラゴンが襲いに来たらお前も助かる前に死ぬぞ。当然戦闘になれば戦うのはこの空なんだからな。振り落とされて地面に真っ逆さまだ」


 そのことが容易に想像できたのか、南足きたまくらはまた黙ってしまったが、それに気を良くした東西南北よもひろが更に追い打ちをかける。


「そんなことよりも、お前……小便漏らしたのか? ズボンが変色してるじゃないか。スカイダイビングがそんなに嬉しかったとはな。まさに嬉ションってやつか」


 南足きたまくらが今まではバレないようにローブで隠していたものの、東西南北よもひろからローブをめくられ胸を揉まれたことによって、その事実が浮き彫りとなってしまった。


「ったく、排泄の躾からしなきゃいけないなんて、お前は奴隷枠どころじゃなくて犬猫みたいなペット枠だな。俺様が抱く時には嬉ションなんてしてくれるなよ? 潮吹きなら歓迎するが」


 その言葉に対して南足きたまくらは羞恥に顔を赤く染め、これから起こりうるであろう強姦に絶望し、ポロポロと流れる涙が止まらない。


 何故ならば嫌悪する男に好き勝手胸を揉まれ、それだけでも嫌なのに、更には失禁してしまったことまで知られてしまった上に、レイプ予告までされてしまったのだ。

 

 もういっそのこと、ここから飛び降りようかという思考すら頭をかすめてしまう。


 そのような後ろ向きな思考によって南足きたまくらの頭の中が侵食されていく中で、東西南北よもひろはそのようなことも露知らず、自分たちのホームとなる魔大陸に向けて飛んでいくのであった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ところかわって、マリアンヌたちのいる場所には、マリアンヌから呼び出されたケビンが魔大陸から転移してきた。


「――ということなの」


「そりゃまた凄いことになったな」


 緊急事態ということで、すぐさま勇者ごっこを中断して転移してきたケビンにマリアンヌが説明を終えると、ケビンは俺TUEEEE君に手を貸すやつがいたことに驚いていた。


「んで、アレはずっとやってるのか?」


 そう言うケビンが視線を向ける先には、思いのほか粘って倒れない九鬼との戦いが楽しくなり、一方的にボコるつもりがつい長々と“かわいがり”を続けている紅の長の姿があった。


 ちなみに、その戦いに熱狂して声を上げているのは、この場においてただ1人。紅の長をカッコイイと思っている月出里すだちだけだった。


 そのこともあってか、熱狂する月出里すだちの声援によって、紅の長が調子に乗っている可能性も否定できない。


「そうだの。相変わらずの馬鹿で、殺そうとしていた相手が逃げたことにも気づいとりゃせん」


「はぁぁ……」


 ケビンとしては九鬼にとっても良い経験となるので、クララがけしかけたのは問題ないとしても、紅の長の視野があそこまで狭窄しなければ、そもそも南足きたまくらが連れ去られることもなかったのではないかと思うと、呆れ果ててしまい物も言えない状態となる。


 かと言って、このまま放置というわけにもいかないので、仕方なくケビンが紅の長を止めることにしたのだった。


 そして、ふらっと歩き始めたケビンに皆が視線を向けると、次の瞬間には紅の長と九鬼の間に入り、攻撃を放っていた紅の長の拳をパシッと受け止めていた。


「と……止めたぁぁぁぁ??!!」


 それに対して声を上げたのは、千喜良の代わりと言わんばかりに叫び役となっている小鳥遊だ。勇者である能登が簡単に殺されると言われていた格上ドラゴンの攻撃を止めたことによって、小鳥遊の驚きが天元突破している。


 その驚きようは他の勇者たちも同様であり、ケビンの強さの底が見えないことに動揺を隠せない。


 だが、結局のところ、最終的には“ケビンだから”で落ち着いてしまう小鳥遊及び勇者たちなのである。


「久しぶりだな、紅の長」


「てっ……てめぇは!?」


 自分の拳をいとも容易く止めて見せたケビンの登場に、楽しい“かわいがり”から一変、紅の長があからさまに狼狽する。


「け……ケビン……さん……ゼェゼェ……来たならすぐ……止めて……ゴホッゴホッ……ください……よ……」


 息も絶え絶えになり満身創痍でケビンに向かって抗議する九鬼だが、それを聞いたケビンが振り返ると、相も変わらずなケビンイズムを披露した。


「良い経験になっただろ? ドラゴンの長を張るだけあって、強さがそこら辺のヤツらとは一線を画している。世の中は広いってことだな」


「こ……こんな……命懸けの経験は……ハァハァ……遠慮……します……ケビンさんと……ダンジョンで充分……うっぷ……」


「そう言うな。こいつと戦おうとしたら舎弟をボコり続けるか、集落まで行って喧嘩を売るしかないんだからな。滅多にない機会だぞ?」


 そう言ってケビンが九鬼を回復させると、九鬼はようやく終わったのだと安堵のため息をつく。


「で、紅の長」


「な、何だ?! 俺様は拳で語り合っただけで殺してないからな! てめぇから文句を言われる筋合いはねぇぞ! 俺様を責めるなら白のやつも同罪だぞ!」


 あからさまにケビンからの報復を恐れている紅の長は、クララさえも巻き添えにしてしまえと名前を出したが、それを遠巻きに見ているクララは『殴ってやろうか』という思いが頭をよぎる。


 更には、同じくその言葉を聞いた九鬼は「語り合ってない! 一方的に語られただけだ!」と抗議したかったが、それならそれで「語り合ってみるか?」とケビンから言われそうなので、すんでのところでその言葉を飲み込んだ。


「知ってるか? お前の獲物はもう逃げ出した後だぞ?」


「…………は?」


 そこでようやく紅の長が自分の獲物に関して思い出し始めると、東西南北よもひろがふんぞり返っていた場所に視線を移し、そこに誰もいないことに今更ながらに気づいてしまった。


「あれ……?」


「クキが骨のあるやつで楽しくなるのは仕方がないがな、お前が狩ろうとしていた獲物の動向くらいは把握しておけよ。舎弟たちが今のお前の姿を見たら幻滅するぞ?」


「な……え……あ、あいつは何処に行ったぁぁぁぁ?!」


「そんなの俺が知るかよ。このマヌケめ」


「あの野郎、なんて小賢しい下等生物なんだ! この俺様を欺きやがって! これだから缶蹴り原チャは嫌いなんだ!」


「…………缶蹴り原チャ? おい、九鬼。こいつ、何言ってんだ? 最近の日本って原チャで缶蹴りするのか?」


「そんな危険極まりない遊びがあるはずないでしょ! 何言ってるのか僕にだってわかりませんよ!」


 紅の長の発言にケビンは首を傾げ、通訳を無茶振りされた九鬼も意味不明な発言に頭を悩ませる。


「缶蹴り原チャ……缶蹴り原チャ……んー……」


 考えれば考えるほど、原チャで缶蹴りをしている危険な光景が頭の中を占めていき、ケビンは意味不明な発言によって難解な袋小路に追い詰められてしまう。


「おい、紅の長」


「何だ?!」


「それはこっちのセリフだ。缶蹴り原チャって何だ?」


 結局のところケビンの取った行動は、本人に説明させるというものであった。


「缶蹴り原チャも知らねぇのか!? 馬鹿だろ、てめぇ」


 馬鹿に馬鹿にされるという屈辱的な体験をしてしまったケビンは、紅の長を殴り飛ばしたくなる気持ちをどうにか押さえ込むことに成功すると、先程から頭を悩ませている“缶蹴り原チャ”についての説明をさせた。


「仕方がねぇ、馬鹿なてめぇにもわかるよう、この俺様が教授してやる」


「ぐっ……」


「ケビンさん堪えて。僕も缶蹴り原チャが何なのか気になって、夜も寝られなくなりそうですから」


「クククッ……てめぇも知らねぇのか、中等生物」


 いつの間にか下等生物から中等生物にランクアップしていた九鬼は、そっちの要素も気になるが、今は缶蹴り原チャが最優先。そして、大人しく説明を待っていると、紅の長は誇らしげに語り出した。


「いいか? 缶蹴り原チャってのはな、頭のいいやつのことを指す言葉だ。知識人とか言って鼻にかけやがって、男は強く度胸があればいいんだ! 非力な頭でっかちなんぞより、この俺様の拳の方がもっとすげぇ!」


「知識人……?」


「……知識人って言いましたね」


『マスター、恐らく目の前の馬鹿は、“インテリゲンチャ”のことを言いたいのかと。世間一般で言われている“インテリ”の語源ですね』


『えっ!? あれって“インテリジェンス”の略じゃなかったの!?』


『ああ、確かに“インテリジェンス”は、“知能”や“知性”って意味がありますからね。よく間違われていますが、語源はロシア語の“インテリゲンチャ”です』


『へぇへぇへぇ――』


『やった! 10へぇ獲得した!』


 サナからのトリビア説明を受けたケビンは、その受け売りを九鬼に説明したところで1へぇを獲得すると、そこでハッと我に返ってしまい盛大に得意顔の紅の長へ向けてツッコミを入れた。


「てか、夜行やえかよ!!」


 よく難しい言葉(本人にとって)を、独自解釈によって“百鬼なきり語録”と言われる特殊言語に作りかえる百鬼なきり夜行やえ。今まさに、ケビンは目の前にいる紅の長が、その百鬼なきりと被って見えたのだった。


「ああ、あいつも変な日本語を使いますよね。むしろ、日本語枠に入れたくない。同じ日本人として恥ずかしい」


 そう言う九鬼の言葉に対して、ケビンは自ら抱える借金奴隷の1人でもあるためか、あれはあれで可愛いところもあるのだとフォローを入れるも、九鬼にとってはどうでもいいことだった。


 そんなこんなで“缶蹴り原チャ”の謎が解けた2人は、それによって更なる謎を抱え込んでしまう。


「僕、思ったんですけど……」


「言うな。気になって夜に眠れなくなるぞ」


「いや、既に思っている時点で眠れないのが確定しているのと、それを察しているケビンさんも恐らく眠れないですよね?」


「くっ……確かに……」


「なので、言っちゃいます。何で紅の長はロシア語を知っているんですか? 間違って覚えていましたけど、意味もしっかりと理解していましたよね?」


「そ……それは……そ、そうだ! 過去の転生、もしくは転移者にロシア人がいたんだ! そうに違いない! それか、まさにインテリを気取った日本人が教えたに決まっている!」


「仮にそうだとして……“缶蹴り”と“原チャ”って、この世界にないですよね? あの単語は何処から来たんでしょう?」


「ぐあああああ! これ以上、深淵に触れるな! 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているんだぞ!」


 謎が謎を呼ぶ負のスパイラルに突入した2人の会話は、ケビンが絶叫をあげることによって強制的に終了となる。その絶叫を聞いた紅の長が、ビクッと反応してしまったのは言うまでもないが。


 それから、なんだかんだで紅の長の暴走を止めたケビンは、マリアンヌから請われた南足きたまくらの動向を探ることにしたのであった。

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