第477話 懲りないフィリア教団
月日は流れてケビンが26歳になる年度の4月、毎年恒例の即位式を終わらせたケビンは帝城でのんびりと過ごしていた。
4月に入ったことでエミリー【サーシャ】、フェリシア、フェリシティ【スカーレット】、二ーアム【ニーナ】が3年生となり、アレックス【アリス】、シーヴァ【シーラ】、シルヴィオ【ティナ】、オルネラ【クリス】、スヴァルトレード【アビゲイル】、アルマ【アイリス】、キャサリン【ケイト】、パトリシア【プリシラ】、ニコラ【ニコル】、レイチェル【ライラ】、ラーク【ララ】、ルーク【ルル】、クラウス【クララ】、クズノ【クズミ】が2年生となった。
そして、パメラとロナが生産職科の服飾コースの2年生になると、アズ【アンリ】、ベル【ビアンカ】、カーラ【シンディ】、ダニエラ【ドナ】が生産職科の調理コースの2年生となり、エフィ【エレノア】が内政科の2年生となって、ナターシャ【ナナリー】、プリモ【ヒラリー】が商人科の2年生となる。
更に、ケネス【ケイラ】、マカリア【マヒナ】、フランク【フォティア】、ノーラ【ネロ】、ショーン【シーロ】、アドリーヌ【アウルム】、ラシャド【ラウスト】、ナット【ナナリー】、アーロン【アンリ】、バーナード【ビアンカ】、カール【シンディ】、ダン【ドナ】、エドウィン【エレノア】、ヴァレンティア、ヴァレンティナ【ヴァリス】、セレーナ【セシリー】、ミア【ミレーヌ】、アリアナ【アイナ】、ジェンナ【ジェシカ】、マレイラ【ミケイラ】、ウルヴァ【ウルリカ】、ヌリア【ナディア】、コール【キキ】、オスカー【オリアナ】、ギャリー【グレース】、アシュトン【アリエル】、リチャード【リリアナ】、オフェリア【オリビア】、イギー【イルゼ】、ハロルド【ヒラリー】、リンカー【リーチェ】、ヘザー【ヒルダ】、ジェマ【ギアナ】の総勢33名がエレフセリア学園に入学した。
もう学園ではケビンの子供が大勢やってくるのは恒例となっており、身内でない教員たちも慣れてしまって慌てることもなくなっていた。そして、娘は男の子にモテて、息子は女の子にモテるというのも恒例となっている。
そうような平和な日々を再び謳歌していたケビンだったが、ケイトに捕まると戦争後の処理である褒賞の件を早く決めるように急かされる。
「もう雪解けは過ぎたのだから早くしなさい。みんな待っているのよ」
「わかった、わかったから引っ張るなって」
それからケビンはケイトに引っ張られて連れてこられた執務室にこもると参加した貴族たちの陞爵、新たに貴族位を与える叙爵のリストアップを始める。
「御三家はこれ以上は上げようがないから、お金と領地で解決するか……そうなると領地境を修正して、国の直轄地を押し付けていく方向性にすると……おっ、結構押し付けられるな」
机の上で地図を広げては国の直轄地をいかに押し付けるかの算段をしていたケビンは、今回参加した貴族たちに少しずつ領地を増やしていけば、かなりの直轄地を押し付けられることに行きついて、ここぞとばかりに領地境を修正していき不平等にならないよう線を引いていく。
「うんうん、これなら大きく領地が変わることもないし、叙爵した貴族にも小さな領地を与えることができるな。目立った活躍のなかった貴族はお金だけでいいだろ」
こうしてケビンによって領地境の修正が行われて新しい帝国の地図が完成すると、それを複製して数を増やし貴族たちに配る準備をした。そのあとは、褒賞の儀を今月の貴族会議前にすることを手紙にしたためたら、それを転移で各貴族たちへと直接送るのだった。
「あとは……何か頼まれていたような……気がしないでもないけど……忘れるくらいなら大したことないな」
とある頼まれごとをされていたケビンはそれをすっかり忘れてしまうと、何事もなかったかのようにして他の執務へと取り掛かる。そしてその日は珍しく執務を淡々とこなしては、何か面白いことでも起きないかと過ごしていくのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ケビンが執務に追われている頃、遠く離れた地の神聖セレスティア皇国の皇都セレスティアでは、悲愴感漂う声が彼方此方からあがっている。
聖戦をするべく戦いに挑んだ兵士たちが帰還して、凱旋になるかと思いきや敗戦となって帰ってきたというのだ。しかもほとんどの兵士たちが亡き者となって。
そして一際民たちの目を引いたのは、皇都のメインストリートを通行する
民たちの混乱は後を絶たず不安や憶測が瞬く間に伝播していき、皇都内が騒然となるのにそう時間はかからなかった。
やがてフィリア教の総本山であるフィリア神殿に到着した
そして報告の機会を得るためにその場を設ける申請を取り付けると、しばらくしたあとで3人は1室へと呼び出される。
その呼び出された部屋では教皇を始めとする4人の枢機卿がテーブルを囲って座っており、ガブリエルたちは下座にて立ち言葉を待った。
「まずは被害を報告せよ」
そう告げたのは軍務担当のウォルター枢機卿で、直下の団長がいないため年長者のタイラーがそれに答える。
「死者数は
タイラーは女性の姿となって魔物の巣へ送り込まれた
その報告に対してウォルター枢機卿は、
「戦果はどうだ?」
「正確な数は測りかねますがおよそ1万です」
「
「魔王は魔獣を使役し我らは挟撃を受けました。それ以外にも一騎当千の冒険者が味方をしており、兵士たちの混乱に乗じて数を減らされました」
「総団長がいたのに防げなかったのか?」
「魔王は魔獣以外にもドラゴンを味方につけていましたので、そのドラゴンの相手を総団長が受け持ちました」
「「「「ドラゴンだとっ!?」」」」
枢機卿たちはまさか北の蛮族がドラゴンを味方につけているとは思わずに、驚きを隠せずその名を口にしてしまった。奇しくもただの皇帝を魔王と認定してやっかみをつけただけの話だったのに、ここにきてドラゴンの使役などという魔王らしさを見せつけられて混乱が後を絶たない。
「そ、それでドラゴンは総団長が当然倒したのだろ?」
「いえ、負けました」
そこでガブリエルが口を開いてありのままの事実を述べていく。
「私はドラゴンに2度ほど見逃してもらえました。今ここにこうして立っているのは、ドラゴンから見逃してもらえたからです」
「総団長が負けただと……」
自分たちの誇る最高戦力が負けたとあって、枢機卿たちは魔王からの報復を恐れ始める。
「1度目の邂逅で手も足も出ず重症を負い、傷が癒えてから再戦を図ったのですが、2度目は別のドラゴンに同じく手も足も出ないまま負けました」
「総団長が勝てないドラゴンが2体だとっ!?」
いよいよ持ってガブリエルの報告に出たドラゴン2体という言葉に、枢機卿たちは今後の対応をどうするか、頭の中でグルグルと袋小路に追い詰められていく。
そのような時にトドメを刺すかのようにタイラーが口を開いた。
「それと魔王は賢者様が使ったとされる転移魔法を使えていました。この魔法によって現れたドラゴンにより、ヘイスティングスの部隊は死ねない処刑を受けていました」
「「「「転移魔法!?」」」」
「し、死ねない処刑とは何だっ!?」
次々とあがる予想外な報告に対してウォルター枢機卿が疑問を投げかけると、タイラーは死ねない処刑の内容を正確に伝えていく。そして最後は魔王によって魔物の巣へ送り込まれてしまったことを。
その後もタイラーは報告を重ねていき、それが終わると3人はその部屋を後にして戦後処理へと向かうのであった。
そして部屋に残った教皇と枢機卿たちは話し合いを続けていく。
「まずい、まずいぞ。タイラーの報告が真実なら、魔王はいつでもこの地にドラゴンを送り込めるということではないか!?」
ウォルター枢機卿が事態の深刻さを口にすると、外交担当のアルフィー枢機卿が提案する。
「ここは賠償金でも払ってご機嫌を取るしかないのでは?」
それに反論するのは財務担当のウォード枢機卿である。
「馬鹿を言うでない。ヘイスティングスがやらかしたせいで、アリシテア王国から抗議文がきているんじゃ。そっちに払う賠償金で手一杯になる。金を出させるならそれを命令したドウェインにでも頼めばよかろう」
金が絡むということで怒り心頭のウォード枢機卿から、お鉢が回ってきたドウェイン枢機卿がそこで口を開く。
「
「成功するのですかな? 報告を聞いた限りでは、ありえない魔法を使うそうじゃないですか」
ドウェイン枢機卿の発言にウォルター枢機卿が成否を尋ねると、ドウェイン枢機卿は不敵な笑みを浮かべて口を開く。
「
「だが、相手は魔王ですぞ?」
「いくら魔王とてただの人の身の皇帝。寝ている間は無防備よ……」
「だが、仮に失敗して更に怒りを買ったらどうします? 総団長が勝てないドラゴンが最低でも2体いるのですぞ。送り込まれたら我々は終わりだ」
「案ずることはない。戦争をしかけたのに報復してこないときてる。話を聞けば開戦したのは2月だぞ。そして今は4月。この間に何も起こってなかろう?」
「確かに……」
「なに、団員が失敗したとて捕まった時の訓練は受けさせておる。それに最終的には団長を使えば良い。あやつほど暗殺に長けておる者はいない」
「では、その件はドウェイン枢機卿に任せるとして、アリシテアとの折衝はアルフィーが行うのだ」
「アルフィーよ、わかっておるな? 賠償金を少しでも値切るのじゃ」
「わかっております。力の限り善処しましょう」
4人が今後の方針として話し合いを終えると、是非を問うため一斉に教皇へと視線を向ける。
「……それで構わぬ……勇者召喚を進めるのじゃ……」
「「「「はっ!」」」」
「女神フィリア様の加護のもとに」
「「「「導きを持って子羊を救わん」」」」
こうして敗戦の報告を受けたあとの話し合いを終えた枢機卿たちは、ケビンへと新たな一手を打つのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
翌月の5月、26歳となったケビンの元へ一報の連絡が入る。それはローラ王妃が【賢者タイム】を使ったおりに妊娠した双子の姉妹、長女のレジーナと次女のレジーヌを出産したというものだった。
ケビンはこれに対してお祝いの言葉と赤ちゃんグッズを進呈すると、ケビン印の双子用ベビーカーはローラ王妃にたいそう喜ばれていたので、ケビンとしてもあげた甲斐があったというものだ。
そのような慶事があり気分は上々だったケビンを、やがて不機嫌にすることが起こる。それは月が変わり6月となったある日のこと。明確な殺意を抱いた者が帝都内に侵入したことを、【マップ】のアラートが報せてきたのだ。
「ったく……どちらさんですかねぇ……」
それからケビンは【マップ】を使って対象者を調べると、セレスティア皇国が放った
「あれ? オフェリーじゃなくて俺?」
「うーん……暗殺なら上手くいくと思われたのかな?」
兎にも角にもケビンは人生初の暗殺被害体験を経験するべく、作戦を練り出した。まずは暗殺者がいつ来るのか観察を続けると、その暗殺者は昼間は動く気がないようで宿屋を取ると普通に過ごしている。
「やっぱり夜か? 暗殺って寝ている間とかが多いもんな」
ケビンはそれから暗殺者歓迎会の計画を立てると、いつもは悪意ある者の侵入を防ぐ結界に
更には念の為の予防措置として家族の寝室に侵入禁止処置の結界を張ったら、夕食時に家族へ
「ケビン様~暗殺者が来たってわかるんですか~」
そのような質問を投げかけてきたのは、元
「まぁ、殺意バリバリの暗殺者だからな。自動でスキルが報せてくれるし索敵範囲は広げようと思えば広げられるから、その範囲を帝都全体まで広げたんだ」
「それって~暗殺者にとっては天敵スキルじゃないですか~」
「オフェリーを守るって決めたんだ。フィリア教の刺客が帝都に入った時点でわかるようにするのは当然だろ?」
「あ~ん、ケビン様の愛でキュンキュンしちゃいます~今日来た暗殺者は~私のところへ来る前にやられちゃうんですね~」
「いや……それがな、てっきりオフェリーの客かと思ったら、予想が外れて俺を殺しに来たみたいだ」
ケビンの発言によってこれまた予想が外れたという顔つきになるオフェリーを筆頭に、他の嫁たちも事情を知っているためか予想が外れたという顔つきとなる。
「オフェリーって親玉から殺す価値もないとか思われてるの?」
「ひ、酷いですよ~ティナさ~ん。こう見えてもフィリア教の情報は~色々と持ってるんですよ~」
ケビンたちは何故オフェリーが狙われないのか議論を交わすが、枢機卿たちにとって報告で上がったケビンのインパクトが強すぎて、そちらにばかり目がいってしまったことなど知る由もないのだった。
「とりあえずみんなは今日から夜更かしをしないように。ちょっと俺のところまで暗殺者を招待するから、通路でばったり出会ったなんてことのならないよう気をつけてくれ」
「もしかしてっ、夜のお相手は暗殺者を捕まえるまでナシなの!?」
このような状況にも関わらずティナが我が道を進むと、呆れたクリスが視線を向ける。
「ティナって暗殺者が来てるのに、そうまでしてケビン君とやりたいの?」
「エッチ依存性エロフ」
「さすがエロフです!」
「依存者エロフですね!」
クリスに引き続いてニーナが毒を吐くと、アリスはティナの変わらぬ姿勢に感心し、スカーレットは新しい言葉を作り出してしまう。そのような騒ぎを起こしている嫁たちへ、ケビンが仕方がないとばかりに告げるのだった。
「俺の寝室でするのはまずいから、俺がみんなの部屋を巡ることにする」
「やった!」
「ティナ……」
「エロフ天元突破」
「ケビン様、複数人プレイはありですか?」
「部屋とベッドを大きくしてもらえますか?」
「部屋とベッドくらい大きくする。色々とやりたい子たちは事前に相談しあってくれ」
事前の相談と聞いてすぐさま動き出したのは、意外にもティナではなく探究心溢れるアリスだった。
「わかりました! お母様、サラ様、シーラさん、W親子丼をしてみませんか!」
「アリースっ! まだ食事中だ、少し落ち着け!」
「ッ! そうでした、私としたことがはしたないまねを。ケビン様、申し訳ありません」
「ふふっ、アリスさんは素直ねぇ」
「こんなエッチに興味津々な子に育つとは思わなかったわ」
「……W……親子丼……ふにゅうぅぅぅ……」
サラとマリアンヌが大人の余裕で流しているところ、シーラはその状況を想像してしまったのか、顔を真っ赤に染めあげては頭から湯気を出している。
それから食事はつつがなく終わりを迎えるが、終わってしまった途端に女性たちによる作戦会議が始まり、彼方此方でいかにケビンをもてなすかの話し合いが続けられていった。
それはセレスティア4人組も例外ではなく、
「なぁ、あたしはどうしたらいいと思う?」
「フィアンマちゃんは~待っているより攻めに行った方が気持ち的にも楽でしょ~」
「てぇことは、暗殺者を捕まえたあとか……」
「そんなに焦らなくてもいいわよ~」
「オ、オフェリー! わ、わわ、私はどうすれば?」
「メリッサちゃんは~攻められないから受けよね~」
「ま、まだキスしか……は、早くないか?」
「早くないわよ~もうあれから3ヶ月は経ってるのよ~受け身で待つんだから直前で止めたらダメよ~?」
「受け……受け……恥ずかしぃぃ……」
「それで~カトレアちゃんはどうするの~?」
「わ、私はケビン君が抱きたいなら受け入れようかなって……リードして欲しい……」
「初心ね~初々しいわ~」
三者三様の反応を見せる3人の話し相手をしながら、オフェリーは的確なアドバイスを施していくのであった。
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