第311話 イメプレ談義と魔性の女

 結局ケビンたちは燃えに燃えまくって体を求め合った結果、時間が過ぎているのを忘れて夢見亭で1日分過ごしてしまうのだった。当然ケビンが気づいたのは翌日の朝だ。


「やっちまったぁ……」


 時間が過ぎていくことに気づかなかったのは、ひとえにソフィーリアの作り出した夕暮れ時の不思議な世界が影響している。


 外に見える景色は夕暮れのまま変わらず、何故か不思議なことにお腹が空かないのと眠くなるということも起こらない。


 そして、ケビンが現実に引き戻されそうになったら、すかさずソフィーリア演じる莉亜がケビンを求めて阻止をしたということも過分に含まれている。


 ケビンが周りを見れば色々とやったあとの嫁たちが横たわっていて、散々阻止をしていたソフィーリアもケビンがもたらす無尽蔵の性欲に堕とされてしまっていた。


 行為中は嫁たちが次々と回復してもノックアウトさせられてしまい、最後までケビンの相手をしていたソフィーリアは、女神であるにも関わらずケビンの体力と性欲に負けてしまって、つい先程ノックアウトさせられてしまったのだった。


 ノックアウトさせられてしまったソフィーリアは、ケビンを現実に引き戻さないために阻止したことへ若干の後悔もあるが、ここまで肌を重ね合わせ続けたことがなく、なおかつ女神の体力を奪い尽くすほど愛されてしまったことの方が後悔よりも上回って、その心は喜びと幸せで満ち足りていた。


 そして、ソフィーリアがノックアウトさせられたことで不思議空間は解除されて朝の景色を拝むことになると、ケビンは時間が止まっていたのかと思っていたが、【マップ】の時計機能を見て日付が変わっていたことに気づいてしまう。


 嫁たちがまだ復帰できていないので回復魔法をかけて覚醒させていくと、ケビンが現在の状況を説明するのだが、ソフィーリア以外の嫁たちは聞かされた内容に唖然とする。


「え……」


「1日過ぎていたということですか?」


「旦那様、どうしましょう……無断欠勤してしまいました」


 驚愕の事実にサーシャは理解が追いつかず、スカーレットは大して気にしていないようで、アビゲイルに至っては連絡もせずに仕事を休んでしまったことを心配していた。


「ソフィ……」


「ふふっ、ごめんなさい。あなたとしばらく会えなくなるかと思ったら、どうしてもあの世界に引き止めたくなるのよ。本心を語るなら私だってあなたとずっと一緒にいて冒険したいのよ?」


「そこまで想われていたら何も言えなくなるじゃないか」


「今回のことはお留守番組へのご褒美だと受け止めて」


「わかった。確かに留守番組には不憫な思いをさせてしまうからな」


「あなたのそういうところが好きよ」


「俺もソフィのたまにするイタズラ心は新鮮で好きだぞ。あまり甘えてきてくれないからな」


「だって、女性たちのまとめ役にされてるんだもの。私だけが甘えるわけにはいかないでしょう?」


「女神でもあるし、第1夫人だから仕方ないな。でも、あまり気にする必要はないぞ。みんな俺の空き時間を見つけては甘えにきているから」


「もう1つ謝らなければいけないことがあるの」


「何だ?」


「称号が変化したわ」


「え……?」


 ソフィーリアから伝えられた内容にケビンは思考が停止してしまう。


「今回のことで【色欲】が【色欲の皇帝】に変わってしまったわ」


「ちょ、ちょっと待て、ソフィ。俺、【色欲】を持っていたのか!?」


「あら、昨日……じゃないわね、一昨日ステータスを確認した時に見たんじゃないの?」


「いや……待てよ……あったような、なかったような……」


 ケビンは確かに【色欲】を把握していたのだが、それよりも【女性キラー(極)】と【おとし神】というショッキングな称号が新たに付いていたので、そのせいで【色欲】は影が薄い存在と成り果てて、ケビンの記憶へ印象づけることができなかったのだ。


「それよりも、俺だと【色欲】は手に入らないって言ってたじゃないか」


「あの時は2人で暮らしていたからよ。下界に降りてきてからは、かなりの頻度で違う女性たちを抱き続けたでしょう?」


「それは……そうだが……」


 ソフィーリアに言われた通り下界に降りてきてから、と言うよりも制限を解除してからは嫁以外の女性たちと肌を重ね合わせていたため、ケビンもそのことを自覚しており言葉に詰まってしまう。


「あなたなら大丈夫よ。【色欲】で闇堕ちすることはないわ」


「何でだ?」


「あなたって嫌がる女性を力ずくで強姦しようって願望は持ってる? もしくは大人数で輪姦したりとか、薬漬けや魔法を使ってとにかく嫌がる女性に対して強引に性行為をすることよ」


「そんな気はさらさらないが、それだと盗賊とかってすぐに闇堕ちしないか? あとゴブリンとかの魔物もそうだよな?」


「その対象たちはステータスが根本的に足りないわ。覚醒するに当たって必要な条件を満たせていないのよ。そもそも強かったら盗賊なんてしていないでしょう? 冒険者として名を売ることができるのだから。ゴブリンにしたってそうよ。強ければ冒険者たちから雑魚扱いされないわ」


「中には強い盗賊もいるだろ?」


「旦那様、盗賊がもし【色欲】を取るために次々と女性たちを拉致しますと、我々冒険者ギルドや領主などが目をつけて優先的に討伐依頼が出されます。それゆえに称号を取ること自体が困難であると思います」


「奴隷を使う方法は?」


「ケビン様、奴隷だってタダではないのです。私の知っている中でケビン様ほど奴隷を抱えている人は他にはいません。仮に貴族だとして多くとも5人くらいです。基本的に奴隷を買うということは養うという義務が発生します。それゆえ他の国とは違い、元カゴン帝国だけが好き勝手できる法を掲げていために当時は奴隷を多く持つことができたのです」


「ケビン君、そもそも色欲の取得条件を知らないと思うわ。私たちが知っているのはひとえにソフィさんがいるからで、一般的に称号の取得条件なんて知らないのだから」


「あなた、結局のところ大罪で覚醒しようとしたら、魔王クラスの実力がいるのよ」


「クソ皇帝はどうやってその実力を手に入れたんだ? ただの人間だったんだろ?」


「【強欲】は求めれば求めるだけ強くなれるわ。欲の強さがそのままステータスに反映されるのよ。そして覚醒後は殺した相手の力を何割か奪うこともできるの。あなたをすぐさま殺さなかったのは、弱い相手だと力を奪ってもたかが知れてると思って油断していたからよ。そのせいで死んでは元も子もないのだけれど」


「なんだか色々と面倒くさいな」


 ケビンは横道に逸れて色々と説明を受けてしまい、面倒くさくなって考えることを放棄してしまった。


「とりあえず称号を確認しましょう」


「気が進まない……」


「あなたのためよ」


「はぁぁ……ステータス 称号」




アキバの魔法使い     女神の伴侶

ゴロゴロの同志(祝)   舐めプの達人

逃走者          DIY好き

抱かれマイスター(極)  嫁製造機

バトルジャンキー     魔物の天敵

ダンジョン制覇者     ダンジョンマスター

ランタン狂い       勤勉

魔導具マイスター     絶対王者

無敗の帝王        パーフェクトプロフェッサー

連覇王          熱き友情を育みし者

戦場の殺戮者       闇に堕ちかけし者

憤怒の皇帝        怠惰

強欲           色欲の皇帝

四大罪所持者       ヒモ

日めくりボウズ      動物と戯れる者

農作業に勤しむ者     もふもふマイスター    

女性キラー(極)     おとし神

子煩悩(他)       救国の英雄

パメラのパパ       一夫多妻

ドSの鬼畜

イメプレ好き【攻め】(中級)

コスプレ好き【攻め】(初級)




色欲の皇帝

 情欲を発散させ過ぎて覚醒した者。情欲を発散させることでステータス補正の上昇値が増して経験値が入り、レベルアップによる恩恵も受ける。


イメプレ好き【攻め】(中級)

 異性に対してイメージプレイをさせることにハマった者。(中級)相手は違和感なくその行為を受け入れてしまうことがある。


コスプレ好き【攻め】(初級)

 異性に対してコスチュームプレイをさせることに興味を持った者。(初級)相手は戸惑いながらもその衣装を受け入れてしまうことがある。




「悪意しか感じないぞ、これ」


 よもや色欲の皇帝だけではなく他の称号のランクアップや新たな称号が増えていることに、ケビンは『この世界のシステムはどうなっているんだ』と悪意を感じずにはいられなかった。


「ランクアップと新しいのは今回のことが原因ね。あなたもだいぶ楽しんだのだから仕方がないんじゃない?」


「ぐっ……それを言われると辛い……」


「ノリノリで攻めていたものね。私たちもノリノリで受けていたし」


 ソフィーリアの言葉にケビンは何も言い返せなくなり、他の嫁たちはその時のことを鮮明に思い出してしまう。


 受けになっていた時の乱れに乱れた淫語を口にしていたことや、自らケビンのものを欲して腰を振っていたことなどがフラッシュバックして、ベッドの上で悶えながら顔を真っ赤に染め上げるのだった。


 とりあえずそれからは帝城へ戻ろうということで話はまとまって、お風呂で体を流したあとは何事もなかったかのように帝城へと転移したのである。


 だが、帝城へ戻ってきたケビンたちを待っていたのは女子トーク好きな女性たちで、すぐさまソフィーリアたちは連行されて1日不在にしていたことの内容を根掘り葉掘り問いただすのだった。


 それを聞いた女性たちは信じられないようなものを見る目付きで、ケビンやソフィーリアたちを交互に見続けるのである。


「24時間ぶっ続け……」


「耐久レース」


「お姉ちゃんには無理かも……」


「イメプレをやってみたいなぁ」


「コスプレをしてみたいです」


 三者三様の反応を示す冒険参加組だったが、奴隷たちは自分のご主人様の性欲に戦慄を覚えるのだった。


 そのような中でプリシラがケビンへ声をかける。


「ケビン様、私がメイドとしてお相手したらどうなるのですか?」


「んー……プリシラたちは本職だろ? 俺たちがやったのは真似事みたいなものなんだよ。例えて言うならティナがメイド服を着るだけならコスプレ、そこからメイドとして役に成りきればイメプレになるかな。だからプリシラたちがメイド服を着てメイド役をやっても意味がない」


「なるほど……」


「プリシラだと何が似合うかなぁ。うーん……そうだ、美人教師かな」


「それは確かに似合いそうだわ。またあの空間を作る機会がありそうね」


「あぁ、いいかもしれない。放課後の教室で教師と2人きりで居残り勉強かぁ……」


 ケビンの言葉にソフィーリアが賛同すると、ケビンは早くもそのシチュエーションに想いを馳せるのであった。


「ケビン様、お2人の言う教師とは?」


「それはね、プリシラって眼鏡かけてるだろ? 髪の毛も長いし顔立ちも可愛いと言うより美人よりだから、スーツを着せたら似合うと思うんだよなぁ……そんなプリシラが先生として勉強のできない生徒の俺に2人きりで勉強を教えるんだよ」


「はい、はーい! 私もケビン君に勉強を教える先生役をやりたい!」


 ケビンの語るシチュエーションにクリスが食いついて、先生役へ立候補するのであった。


「クリスもいけそうだね。理知的な先生役とかで」


「よっしゃあ!」


 ケビンのお墨付きをもらってクリスが喜んでいると、興味のあったアリスが食いついてくる。


「ケビン様、私はどうですか? 先生をやれますか?」


「アリスは小さくて可愛すぎるから先生よりも妹かな?」


「そんな、可愛すぎるだなんて……」


「試しに俺のこと呼んでみて」


「ケ、ケビンお兄様……」


「んー……まだ固いね。敬語は無しで『お兄ちゃん』に変えてみて」


「ケビン……お、お兄ちゃん……」


 恥じらいながらモジモジしつつ上目遣いで呼んでくるアリスの姿に、ケビンは居ても立っても居られずに、両手を広げてアリスを呼び寄せるのだった。


「アリス!」


「ッ! ケビンお兄ちゃん!」


 勢いよくガバッと立ち上がりケビンへ抱きつき行ったアリスは、王女としての嗜みなど既に休暇へと入っており、ケビンの足を跨いで膝上へと乗るのであった。


「んー……アリスのおっぱいは柔らかいし、いい匂いがするな」


「お兄ちゃん、くすぐったいよぉ」


 ケビンは抱きついてきたアリスの胸へと顔を埋めて、柔らかさのある癒しの空間を堪能してしまう。


「アリス、今度は『にぃに』って呼んでみて」


「にぃに、アリスのおっぱいがそんなに気持ちいいの?」


「アリス、大好き!」


「あんっ……にぃに、おっぱいのところでお顔グリグリしないで」


 アリスに萌えの要素を見つけ出してしっかりと堪能したケビンは、アリスを抱いたまま説明を始めるのであった。


「今しがた俺とアリスがやったのがイメプレだな。兄妹プレイというやつだ」


「ケビン様、私……ケビン様の妹になりたいです。いっぱい甘えたいです」


「うん、俺もアリスに『にぃに』って呼ばれたら、ゾクゾクして妹にしたくなったよ」


「にぃに……アリスを妹にして?」


 何とも抗い難いアリスの雰囲気にケビンは呑み込まれていき、瞳をうるうるとさせて庇護欲を掻き立てられるその姿にケビンはすぐさま決意する。


「よし、アリスは俺の妹だ」


「にぃに、大好き!」


 2人のやり取りに羨みや呆れる視線を送る面々であるが、ソフィーリアだけはほっこりとしていた。


「ケビン君、アリスにメロメロね……」


「魔性の女」


「私はお姉ちゃんだから妹なら被らないし問題ないわ。あ、でもニーナならお姉ちゃんをやってもいいわよ」


「それなら『ニーナお姉ちゃん』って呼んで欲しいな」


「う……今それを言うの?」


「シーラはお姉ちゃんのことが嫌い?」


「うぅ……ニーナお姉ちゃん……」


「大好きよ、シーラ」


 ケビンとは別でここでも新たに姉妹が誕生するのであった。憩いの広場に兄妹・姉妹ができあがっていく中で、ほっこりしているソフィーリアがケビンへ声をかける。


「あなた、今日のあなたの予定は私が決めるわね」


「ん? どういうことだ?」


 ソフィーリアからのいきなりの申し出に、ケビンは何故そうなるのか理解できずに聞き返すのであった。

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