第20話 お披露目会前の暇つぶし

「……ン……ビン……ケビン」


 誰かの呼ぶ声がする……俺は微睡みの中意識を覚醒させていった。


「う……う~ん」


「ケビン、起きなさい。そろそろ着くわよ」


 あぁ、そういえば王都に向かっていたんだった。なんだか熟睡してしまっていたな。


「すみません。完全に寝入ってしまいました」


「いいのよ。寝る子は育つんだから。寝心地は良かったかしら?」


「はい、母さんに抱かれてると不思議と安心感があって、熟睡してしまいました」


「それは良かったわ。王都に着いたらお昼にしましょうね」


 馬車は衛兵の検問を通過するとそのまま王都へ入り、貴族街にある別宅へと向かう。暫くして別宅へ着くと使用人が出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。奥様、ケビン様」


 現れたのは別宅を管理している筆頭執事のマイケルだった。燕尾服をピシッと着こなして、行動に無駄がない洗練された動きだった。完璧超人ここに極まれりだな。


「マイケル、昼食にするわ。準備してくれるかしら」


「はっ。畏まりましてございます」


「ケビン、食堂へ向かうわよ」


 スタスタと歩く母さんの後ろをついて行くと、一際大きい食堂へと到着する。別宅は初めて来たけど食堂ひとつとっても大きいな。


「ここはね、お客様とかも来られるから大きめの屋敷にしているのよ」


 なぜ考えていることが分かったんだろうか? 母親のなせる技か?


「ふふっ。ケビンはね、顔に出るからわかりやすいのよ。別宅に着いてからはキョロキョロとしてたでしょ? 初めて来たし珍しいのもあるけどね、食堂に入った途端ポカンと口を開けてたわよ」


「それは、お見苦しいところをお見せしました。貴族にあるまじき行為でしたね」


「いいのよ。ケビンは可愛いんだから、何をしても許すわ。さぁ、席に着きましょ」


 この母親の溺愛っぷりは何なのだろうか? やっぱり一番下の子には甘いっていう都市伝説の賜物か?


「そういえばお披露目会は夜からでしたね。何処で行われるのですか?」


「王宮よ。親子併せて何十人と参加するから、大きなホールじゃないとみんな入れないのよ」


 うへぇ~……人混みかよ、面倒くせぇ。行く気がどんどん無くなっていくな。何とかならないのか?


「そんなに心配しなくても、実際にそこまでの人数は来ないわ。貴族や名のある商人限定で、同じ年にそんなに子供は産まれないし、病欠したりする子もいたりするわ」


 やはり、病欠で欠席はありだったのか! 最終手段の仮病を使えばよかった……


「でも、欠席した場合は翌年に参加するのだけれど」


 ダメか……何をやっても参加は確定事項なんだな。


「お披露目会なんだから気負う必要はないけれど、一応お父さんの迷惑にならないように気をつけましょうね」


「はい、分かりました」


(コンコン)


「お食事の準備が整いましたので、お持ち致しました」


「入って構わないわ」


 扉を開けて入ってくるのは、マイケルとメイドさんだった。


 うちの使用人たちはタイミングを見計るスキルでも持っているのか? 的確すぎるだろ。


 それから二人で食事を摂り、食事が終わった後は使ってもいいと言われた王都用の自室へとやってきた。


 夜までする事がないな。何して過ごそうか……魔力操作でもして遊ぶかな。


『マスター、未だレベルの低いスキルの訓練でもしたらどうですか? 【魔力操作】はこれ以上レベルが上がらないから、他のスキルで暇つぶしするべきです』


 確かにレベルカンストしてるスキルを、更に鍛錬してもメリットは少ないしな。ステータスで確認してみるか。


『ステータス』




ケビン・カロトバウン

男性 4歳(今年で5歳) 種族:人間

職業:社交界デビューを控えた子供

状態:憂鬱


Lv.1

HP:39

MP:68

筋力:21

耐久:18

魔力:38

精神:30

敏捷:30


スキル

【言語理解】【創造】【センス】【隠蔽】【偽装】

【剣術適性】【魔法適性】

【剣術 Lv.3】

【身体強化 Lv.3】【属性強化 Lv.4】

【病気耐性 Lv.EX】【魔力操作 Lv.EX】


魔法系統

【火魔法 Lv.2】【水魔法 Lv.2】【雷魔法 Lv.2】

【土魔法 Lv.2】【風魔法 Lv.2】


加護

女神の寵愛

原初神の加護


称号

アキバの魔法使い

女神の伴侶

ゴロゴロの同志




 職業ってリアルタイムか!? ここへ来て状況が変わったから更新されたのか? しかも、状態が憂鬱って……確かに憂鬱だけど、あえて文字にしなくても。


 レベルが上がっていないのに、ステータス値が上がってるのは訓練の賜物だろうか? 今の強さは一般的にどのくらいなのだろう。


『サナ、一般的な5歳のステータス値を教えてくれ』


『それは、マスターの初期値とほぼ同じです。訓練するしないで若干の誤差はありますが』


『俺のステータス値は一般的に見てどうだ? 閲覧許可を出すから確認してみてくれ』


『んー……HP、筋力と耐久に関しては初等部中学年くらいのステータス値ですね。それ以外のステータス値は初等部卒業くらいですね』


 これは偽装しとかないとやばいな。基本的にスキル関係は隠蔽するだけだから楽なんだけど。


『サナ、【創造】使うからサポートよろしく。今回は、偽装用のステータス表示をデータとして保存・読込み出来るようにしてくれ。毎回偽装し直すのは面倒くさい』


『了解でぇす。サナちゃん頑張っちゃいますよぉ』


 無駄にテンション高いな……元気づけられて助かる場合もあるんだが。


『ではでは、ちょちょいのちょいっと。終わりましたよ』


 呆気ない……それじゃあ、偽装でもしとくか。




ケビン・カロトバウン

男性 5歳

種族:人間

職業:子供

状態:普通


Lv.1

HP:8

MP:4

筋力:10

耐久:7

魔力:8

精神:6

敏捷:5


スキル

【身体強化 Lv.1】【剣術 Lv.1】




 こんなもんだろ。スキルが何もないのは怪しまれるかもしれないし、在り来りのやつで問題ないだろ。


『サナ、今の偽装中のステータスを、偽装1として保存しといてくれ』


『分かりました。偽装1《5歳児》としておきます』


『助かる。あとは、時間まで魔法で遊んでいよう』


『そうですね。魔力操作は完璧なので事故にはならないでしょうし』

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