いなくなった妹探す俺は、その妹にそっくりな子と出会うのでした

 訳がわからなかった。


 昨日の夜、俺はマリーと抱き合って意識を手放したはずだ。

 それなのにマリーの姿は何処にも見当たらない。


「夢……だったのか?」

「――夢じゃないですよ」


 独り言に返事が返ってくる。

 その声のする方向に顔を向けると、探していた人物が立っていた。


 糸のような黄金の金髪に、透き通った白い肌。

 それを見てすぐに身体が反応する。


「何だよマリー、何処行って……」


 しかしその瞳は見知った金色ではなく――青眼だった。


「お久しぶりですね、藤麻さん」

「真里ちゃん……」


 背後にいたのはマリーでは無く、真里ちゃんだった。

 マリーに容姿が酷似している彼女は、出会い系アプリであった子だ。


 どうしてここに真里ちゃんがいるのか。

 そして何故マリーが居なくなっているのか。

 それだけが今の俺の脳内を回っていた。


「マリーちゃんがどこに行ったか知りたいんですよね」


 その言葉に俺は酷く驚いた。

 俺の反応に真里ちゃんは寂しそうな顔を見せる。


「マリーちゃん。ううん……お姉ちゃんは、私の代わりに金剛家の後継になったんです」

「……は?」

「正確には、本来の役割に戻されたと言った方がいいですね」


 次々と知らない情報が出てきて、脳の処理が追いつかない。


 お姉ちゃん?

 金剛家の後継?

 何のことだ。


「訳がわからないって顔をしてますね」

「……真里ちゃんは何を知っているんだ?」

「少し場所を変えて話しましょうか」


 そういった真里ちゃんは、俺に手を差し伸べ立ち上げる。

 そしてゆっくりと歩き出した真里ちゃんの後を、俺は只付いて行くのだった。



 ◇



 数分歩くと、一度訪れた事のある公園に着いた。

 そして俺と真里ちゃんは公園内のベンチに二人で腰掛けた。


「真里ちゃん、マリーは今どこにいるんだ?」

「金剛家ですよ」


 先程から真里ちゃんの顔は曇っている。

 その姿を見ていると、マリーが悲しんでいる様に思えてしまう。


 俺はマリーの事よりも先に、真里ちゃんの事について聞くことにした。


「真里ちゃんとマリーは姉妹なんだよね?」

「そうですね、私が双子の妹にあたります」


 双子の妹か。

 言われてみれば納得がいく。


 これだけマリーと瓜二つの容姿で、血縁の関係が無い方が不思議だ。

 初めは他人の空似だと思っていたが、やはり血縁関係はあったのか。


 それにしても一番気になるのは『本来の役割』というところだ。


 マリーが元は金剛家の者だと言うことはわかった。

 しかしその役割が一体どんなものなのか想像が付かない。


 マリーが俺たちの家族になったのは小学生に入った辺りからだ。

 それ以前の事は、母親しか知らない。


 もしかしたら母親はその役割とやらを知っているのか?


「どうかしました?」

「いや、何でもない」

「ふふ、『役割』が何かを知りたそうな顔をしてますよ」


 一瞬、マリーに見透かされたあの時の様な感覚に陥る。

 しかしそれはただの錯覚だと理解する。


 何故なら目の前にいるのはマリーでは無く、真里ちゃんだったからだ。


「ではそこから話していきましょうか」


 漸く知りたかった内容が聞ける。

 俺は真里ちゃんの方に身体を向けて、その小さな口が言葉を紡ぐのをゆっくりと待つのだった。

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