公園で話をする俺は、先輩と妹の話をするのでした

「ここにしよっか」


 公園に入って数十分。

 入り口からぐるりと回る様に出来ているこの公園は、至る所に小さな公園がある。


 小さな公園ごとにはモチーフがあり、タコやら象の滑り台などの銅像が造られていた。


 ユニークなそれを眺めながら歩いていると、話をするのに丁度良いベンチを見つけた。

 そこに二人で腰を下ろす。


 ベンチからの眺めはとても良いものだ。

 遊具で遊ぶ子供達や、今は青い葉を付けている桜の木が一望できる。


 親御さんたちはここで座りながら子供を見守れるいい位置だし、桜が咲いていればシートを用意せずとも花見ができる。


 恐らく花見の季節ではこの場所は取り合いになっているだろう。


「かなり歩いたね」

「良い運動にはなりました」


 背もたれに体重を預け、疲れた足を揉んで癒す。

 ここまで来るのに割と歩いた。


 外から見た通り、この公園は中々に広い。


 道中にあちらこちらとベンチはある為休みながら周れるが、回りきった頃には足が棒の様になるだろう。


 歩きやすい靴だったのが救いだ。


「それじゃあ何から話そうかな」


 顎に手を当て先輩は少し悩んでいる。

 そこで俺は気になっていた事を聞いてみた。


「お昼に言っていたマリーの事ってどういう事ですか?」

「ああ、じゃあその話をしよっか」


 いよいよ疑問だった話が聞ける。

 俺は先輩の目を見つめて待っていた。


「藤麻君から見て、マリーちゃんはどんな子に映ってるの?」

「俺からですか……」


 綺麗な金髪と金色の瞳。

 愛らしいその顔は誰が見ても可愛いと言うだろう。

 外見だけは完璧だが、内面がかなり歪んでいる。


 女子との会話は禁止。

 女子との接触は禁止。


 自分以外の女を俺に絶対近づけない。

 マリー曰く、女というものは危険な存在らしい。

 唯一の例外はうちの母さんくらいか。


「束縛が激しい子、ですかね」

「あはは、それは間違いないね」


 制服検査の時や喫茶店の時を思い出す。

 先輩から見ても、俺への執着はかなりのものに見えただろう。


「じゃあそんなマリーちゃんが、お兄ちゃんがいないとどうなると思う?」

「俺がいないと?」


 自分で言うのもなんだが、俺を基準に構成されているマリーがどうなるかなんて想像できない。


 実際そんな出来事は無かったわけで、今回だっていつかは捕まるんだ。

 そんな事を考えても仕方ない様に思える。


「多分マリーちゃんは今、必死に藤麻君を探しているよ」

「見つかったらまた怒られるんでしょうね」


 毎度お馴染みの怒りの笑顔で俺を捕まえたら、その後は監禁のワンセットが待っている。

 最早ルーティンだな。


「違うよ、安心するんだよ?」

「え?」


 俺の答えに苦笑しながら先輩は答える。

 その言葉に俺は困惑した。


「どうして安心するんですか?」

「あらら、それが分からないか」


 俺の反応に先輩は少し困った顔をした。

 どうして安心などと言うワードが出てくるのだろう。


 安心するという事は、心配していたという事だ。

 マリーが俺を心配している事などあっただろうか。

 全然思い出せない。


「それは藤麻君が自分で理解しないとダメだね」

「乙女心をですか?」

「んー、まあそうだね」


 ただでさえ女子と話せないのに、乙女心を理解しろとは難しい話だ。


 ましてやマリーの内心を理解しなきゃならない。

 あれ程歪んでいる子の思考など理解できるのだろうか。


「この話はまた今度にしよっか、日も落ちてきたし」


 気付けば周りには親子供が自転車で出口に向かって行く。

 木枝の間からは夕陽が俺らを照らしていた。

 かなり話し込んでいたらしい。


「そうですね、戻りましょう」

「あれれ、またうちに来るの〜?」

「あ……」

「冗談だよ、今夜はうちで泊まっていきなよ!」


 夏は陽が落ちるのが遅いとは言え、暗くなるとかなり冷え込む。

 それを予想して先輩は、ゼロ円旅行の為の一泊を提案してくれた。


 先に立ち上がった先輩は、俺に手を差し伸べてくれる。

 その手を握って立ち上がり、二人で出口に向かって歩き出した。


 すると出口付近で、見たことある少女が俺たちの前に現れた。

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