先輩を待ってる間に俺は、先輩の妹ちゃんとお話しするのでした

「それじゃあ、着替えてくるから待っててね」

「わかりました」


 そう言って先輩は自室に向かって行く。

 俺はそのまま居間で舞花ちゃんと待つ事にした。


「お姉ちゃんのごはんおいしかった?」

「うん、凄く美味しかったよ」

「ほんとう!?」


 腕を広げてまるで自分の事の様に喜んでいる。

 本当に良い子なんだな。

 先輩の教育がきちんとしているのだろう。


「お姉ちゃん、おとなになったらりょうりのお店をやりたいって言ってた!」

「そうなんだ」

「うん!」


 先輩は将来お店を出したいのか。

 それならあの料理の腕に納得がいく。


 昼食にはオムライスを作って貰った。

 外はふわふわ、中はとろとろ。

 お金を取れるレベルに感じた。


 俺も偶に料理をしたりするが、いざやってみると中々に難しい。


 それを先輩はあのクオリティで、ましてや三人前を素早く作っていた。

 相当練習をしたのだろう。


「でもお店にはおかねがひつようだから、あるばいとしてためてるんだって」


 今度は難しい顔を舞花ちゃんは見せる。

 舞花ちゃんも、お金を貯めるのは簡単ではないと理解している様だ。


 どんなものにもお金はかかるが、店を出すのはかなりの額になる。


 親の知り合いで、自分の店を持っている人がいる。

 場所は人通りの多い都心だ。


 その人曰く、下手したら外国の新車が買える程の金額だったと言っていた。


 先輩の理想とする店は分からないが、是非とも夢の為に頑張ってほしい。

 残念だけれど、俺は応援することしか出来ない。


「舞花ちゃん、先輩のこと好きなんだね」

「うん、大好き!」


 目が絡みそうな程の笑顔に、先輩への想いが伝わってくる。

 これ程妹に愛されて、先輩は幸せものだと思う。


「お待たせ」

「あ、お姉ちゃん!」


 着替えが終わった先輩が居間に戻ってきた。

 その姿に見惚れてしまう。


 黒のノースリーブニットにボトムはジーンズ。

 年は一つしか違わないのに、とても大人っぽく見えた。


 特にノースリーブニット。

 大きめの胸が強調されていて、少しエロい。

 童貞の俺には刺激の強い服装だ。


「舞花と何か話してたの?」

「ええ、まあ」

「何それ、怪しいー!」


 はぐらかされた先輩はぷくっと膨れる。

 その姿が少し幼く映り、少し可愛く思えた。


「とりあえず行きましょう、折角のデートなんですから」

「そうだね、じゃあ藤麻君の奢りで回らないお寿司食べよっか!」

「お、俺はお茶だけでいいです……」

「いってらっしゃい、お姉ちゃんたち!」


 玄関で大きく手を振る舞花ちゃんに見送られ、二人で外に出た。


 デートとは言ったが、金が無いこの状況では行く場所もかなり限られてくる。

 どうしたものか。


「近くに大きな公園があるからそこに行こうよ」

「いいですね、行きましょう」


 聞くところによると、東京ドームが十個は入る大きさらしい。

 丁度良いスポットがあって助かった。


 夏休み初日。

 太陽が完全に登りきった時間に俺は先輩と公園に歩き出した。

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