十本目 合コンに誘われた俺は、妹にバレぬように参加したのでした

「なぁ藤麻、お前合コンとか興味……「ある」


 放課後。

 下校の準備をしていたらクラスメイトの男子が聞いてきた。

 俺は食い気味に返事をする。


 最後まで聞かなくても内容は理解している。

 雑学王を決める番組などで、問題を少し読み上げただけで内容を予想し、読み上げ前に答えるクイズキング並だと自負してる。


「そ、そうか。良かったよ、丁度一人足りなかったからさ」

「俺も丁度合コン行きたかったんだよ」

「そんな丁度ある!?」


 マリーに全てを制限されていると、女子とのお話しすらままならない。

 このチャンスを必ずものにするべく、すぐにマリーに連絡を入れる。


「ちょっと連絡するわ」

「おっけ、終わったら教えてくれよな」

「ああ」


 クラスメイトの男子から離れ、廊下でメールをする。

 というかさっきのクラスメイトの名前知らないな、後で聞いておこう。


『マリー、今日は用事が出来たから先に帰っててくれ』


 送信。

 すると送った直後に既読がついた。

 なんでそんな早いの?

 常に開いてるの?


『5W1Hで報告して』


 どうして俺は放課後の予定をここまで詳しく聞かれなきゃならないのか……。

 しかし伝えなくては付いて来る危険性がある。

 少し嘘を混ぜてどうにか凌ぐか。


「『放課後、駅周辺で、友達たちと、買い物をします。新しいイヤホンが欲しいから、色々なお店を見て回る予定です』っと」


 これなら大丈夫だろ、マリーもきっとお許しをくれるはずだ。

 するとまたも秒で返信が来た。


『その友達には雌はいるの?』


 その質問は流石に直球すぎるぜマリーさん。

 まさか散々叱りつけている奴が、懲りずに女子と会うとは流石のマリーも予想できない筈だ。

 悪びれもせず嘘を吐く。


『おりません、ご安心を』

『安心できない、いまからそっち行くから』

「ええ!?」


 何故か嘘がバレた。

 マリーなら、真実までに辿り着くのはそう掛からないだろう。


 俺は先程の男子に急いで声をかける。


「行こうぜ、早く行こうぜ?」

「なんだよそんなに急いで、用事か?」

「いやね、待ち切れないんだわ俺」

「俺もさ。じゃあいくか!」


 このまま学校から脱出してマリーとの接触を避ける他ない。

 二人でそのまま学校を高速で去り、目的のファミレスに向かった。



 ◇



「先に言っておくけど、今日は俺らと女子二人の計四人だから」

「そうなのか、合コンって感じではないな」


 コンパの割には人数が少ないな。

 まあ少数の方が話しやすいのはあるが。


「それがよ、こっちの一人と向こうの一人の予定が開かなかったらしくてさ。残ったものだけでもやろうって話になったんだよ」

「それでも別にいいけどな」


 俺は遊園地に向かう子供のように心踊っていた。

 高校から歩いて数分。

 目的地に到着。


 隣の男子はスマホで相手らと連絡をし始めた。


「そういやお前の名前って何?」

「そこから!? 俺は田中吾郎だよ、同じクラスだろ?」


 何となくその名前に聞き覚えがあった。


「すまんすまん、人の名前覚えるの苦手で」

「まあいいよ、それよりもう中にいるみたいだし入ろうぜ」


 扉をあけていざ入店。


「いらっしゃいませ!」

「先に二名来てるんですけど」

「はい、こちらです!」



 案内された四人席に、俺らとは違う制服の女子が二人で笑談していた。


「お待たせ」

「おっそーい、女の子を待たせんなよな」

「まあまあ、私たちが早く着いただけだし」


 ぱっと見の印象は、少しギャルな子と地味目な子だった。

 それでも二人の容姿はかなり整っており、どちらも違った魅力に溢れていた。

 俺的には地味子ちゃんの方が好みだ。


「そんじゃあまずは自己紹介からするか」

「そうだな」


 吾郎はそう言って自分の紹介から始めた。

 好きなアーティストから最近の趣味など、様々な事を話す。


 簡潔に纏まっているからか、聞いていて疲れることなどはなかった。

 こういった場の経験がありそうだな。


「それじゃあ次は藤麻だな」


 バトンを渡して今度は聞く姿勢になる。

 手慣れてるな……。


「それじゃあ……俺は金神藤麻だ。吾郎みたいに趣味とか呼べるものはないが、最近はスマホで動画を見るのにハマってるかな」


 俺も出来る限り短く纏めてみた。

 皆の反応を見るに悪くはなかったようで、女子からは拍手まで頂けた。

 やばい――メッチャ楽しい。


「次はあたしだね、あたしは轟カレン。あたしはこのマ○メロのグッズ集めが趣味かな。可愛いでしょ!」


 そういって見せて来たのは、ピンクが特徴の頭巾を被った可愛らしいキャラクターのキーホルダーだった。

 かなり集めているようで、色とりどりのマ○メロが鞄に付いている。


「じゃあ最後は奈々ね?」

「う、うん」


 カレンに言われて一度深呼吸をして話し始める。


「えっと、桜井奈々子です……趣味は、実は藤麻君と同じで、動画を見ることかな……あはは、よろしくね?」


 最後は恥ずかしかったのか、照れながら挨拶をしていた。

 何この可愛い生き物は。

 好きになっちゃいそうだ。


「よし、紹介も終わったことだし……藤麻はどれにする?」


 取り敢えずメニューを開いて一品頼もうとする。


「俺か、俺は……「お兄ちゃんはマリーを選ぶよね?」


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