第4章

「マリンちゃんの感受性は、ずば抜けて高い。だが、その能力を最大限に発揮するには、君たち二人の安心感が必要なのだよ」

「あたしには、そんなパワーありません」

「ぼくも自信ないです」

「お兄ちゃん、リカちゃん、そばにいてね」

 マリンが小さな手で、ふたりの指を握る。

「わかったよ。兄ちゃんたちがついてるから心配するなって」

 ハルトは自分がヒーローになったつもりだったので、内心とてもがっかりした。

「ハルト君、正直すぎ――、顔に出てる」

 リカはハルトの落胆ぶりに、思わず吹き出した。

「そんなことないよ。マリンは、ぼくが守るんだ」

 ハルトは、かわいい妹のためなら、命すら惜しくないと思った。

「マリンちゃん、安心して、あたしもいるからね」

「兄ちゃん、リカちゃん、ありがとう」

「じゃ、始めるよ。三人とも、目を軽くつぶって。眠たくなったら寝ても良いからね」

「はい」

 ハルトとリカはマリンを挟んで、ソファで目をつぶった。

 ソファの背もたれがゆっくり倒れ、同時に腰から下が水平から三十度の角度で止まった。まるでベッドのようだ。

 かすかに音がする。

〝ドッ〟

 それも一度鳴ると、しばらく静寂が続く、そして、また、〝ドッ〟と鳴る。

 とても眠い。意識が遠のく……。


「……」

「ハルト君、ハルト君」

 名前を呼ばれる。繰り返し、肩を揺さぶられる。

「お兄ちゃん!」

「ハルト君!」

 目の前に、マリンとリカ、博士、オサム君の顔が飛びこんできた。

「あ、あれれ」

「よく眠っていたね」

 博士がほほ笑む。

「実験は?」

「成功したよ」

「そんな、だって、何も記憶にありません」

「マリンちゃんが、太陽の心とアクセスに成功したのよ」

 リカがにっこりほほ笑み、マリンの頭をなでた。

「うん、太陽さんと少しお話ししたよ」

 マリンが驚くべきことを普通に言う。

「太陽さんは何て言っていたの?」

 リカが優しくマリンに尋ねる。

 マリンはうつむき、大粒の涙を流した。

「マリン、大丈夫か?」

 ハルトが、マリンの前にかがみこむ。

「太陽は生きる希望を失っているの」

 マリンは涙ながら太陽の言葉を伝えた。

「なぜ」

「太陽の子の地球を人間が痛めつけるから」

 リカには察しがついていた。ここ数年の地球上の異変には何かあると。

「世界中にできている、シンクホールは地球の心の痛みなの」

 マリンは声を震わせた。

「世界中に、地球を痛めつけないように呼びかけよう!」

 ハルトが、珍しく声を荒らげた。

「そうだ、君の言うとおりだ。我々は声を上げ続けなければならない」

 博士が拳を振り上げた。

 そのとき、大きな揺れが天文台を襲った。

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