第104話 いい感じ



 冒険者ギルドを出て、今日もラグナードに剣術の稽古をつけてもらう。


 今回も私達が泊まっている宿、夢見亭の裏庭をお借りしたんだけど、夕方には別の泊まり客が使用するそうなのであまり時間がない。

 それでも限られた時間の中で、自主連の成果を見て助言してくれる他にも対人戦の相手をしてくれたり、体術も少しだけ教えて貰ったりした。


 二時間みっちりと練習に付き合ってくれた後、明日も同じように北門前で待ち合わせる事を確認してからラグナードとは別れた。




 借りている宿の部屋に戻り少し休んでから、今度は夕食の時間まで魔法の練習をしていく。

 今日は私もパワーポーションを飲んだからか、剣術と体術の稽古をした後だけどリノに支援魔法を掛け続ける余裕がある。

 借りていた基本魔法書や風属性魔法書は期限がきたので返却済だけど、内容は頭に入っているので魔法が発動しなくなるまで頑張った。




 また少し休んで動けるようになったので、今の二人のステータスを『鑑定』してみる事に……。




 種族 エルフ


 名前 ローザ


 年齢 16才


 武術スキル 『短剣術Lv1』←new!


 魔法スキル 『火魔法Lv2』『水魔法Lv1』     


       『風魔法Lv2』←level up!

 

       『聖魔法Lv2』『支援魔法Lv1』



 身体スキル 『魔力感知Lv2』『魔力操作Lv3』


       『魔力強化Lv3』『身体強化Lv1』


       『隠密Lv1』『俊足Lv1』『暗視Lv1』


       『精神耐性Lv1』『幸運Lv1』


       『味覚強化Lv1』『嗅覚強化Lv1』『視覚強化Lv1』    


 技能スキル 『鑑定Lv1』『索敵Lv1』『採取Lv1』


       『マップ作成Lv1』『料理Lv1』







 種族 人族


 名前 リーノ


 年齢 15才


 武術スキル 『短剣術Lv1』『棒術Lv1』『長剣術Lv1』←new!


 魔法スキル 


 身体スキル 『魔力感知Lv1』『魔力操作Lv1』


       『魔力強化Lv1』←new! 『身体強化Lv1』←new!


       『暗視Lv1』『幸運Lv1』


       『味覚強化Lv2』『嗅覚強化Lv2』


 技能スキル 『解体Lv1』




 となっていて、二人共、いい感じにスキルが増えている。頑張った結果が出てて、うれしいっ。


「ローザは初の武術スキルを習得ですね。それに風魔法のレベルアップもっ。やりましたね!」


「ありがと。風魔法は中々上がらなかったから嬉しい。リノもいっぱい増えたね!?」


「はいっ、こんな短期間に三つも取れるなんてびっくりですっ」


 彼女は新たに武術スキルとして『長剣術』が、身体スキルとして念願の『魔力強化』と『身体強化』が取れてたんだよね。毎日頑張って練習してた努力が報われて、私も嬉しいっ。


「でも、これで自動的に強くなる訳じゃないですもんね」


「そうだね。威力や精度は実戦と練習で上がるから」


「はい。また明日からも頑張りましょう」


 スキルが習得出来たと言うことは、その技が使える状態になったっていうだけのこと。

 同じレベルのスキルでも努力次第で差ができ強さも変わるから、これからが本番だよね。







 夢中で練習してたらいつもの夕食時間より遅くなっちゃった。ちょうど帰ってきた宿泊客で混み始める時間帯だった事もあって、女将さんも忙しそうだ。

 それでも一階の食堂には二人分なら座れるスペースがあったので、食事をすることに。


 冒険者が多く滞在している宿だけあって、周りから聞こえてくる会話も迷いの魔樹関連が多い。

 こうやって他の冒険者さん達が今回の事態をどう考えているのか知れるのは興味深くて、こっそり聞き耳をたててしまう。


 リノも同じように聞き取りをしているみたいで、早くも内陸の町へ移動しようと相談している話が聞こえてきて不安になったのか、そっと質問してきた。


「まだ大丈夫ですよね?」


「たぶん……ね」


 エルフは森との親和性が高い種族で、森の変化を敏感に感じ取れるらしいからリノも聞いてきたんだと思うけど。


 シルエラさんから魔法を習うついでに教えて貰ったのは、森が本当に危険になるのは地脈からの濃い魔素が広がる時だということで、それはエルフの本能で分かるものらしいんだよね。逃げ出したくなるような衝動に駆られるみたい。

 私は生粋のエルフじゃないからその辺は不安もあったんだけど、これは考えずとも感じ取れる類いのものなので心配はいらないと言われた。


 今のところそんな前兆はないから、まだ対処できる範囲だとしたギルドの判断は支持できるし、それに狼人族のラグナードも自然からのサインに敏感だから、彼が特に反応しなかったいうことはまだ大丈夫だと思うとリノに伝えた。


「ちょっと安心しました。なんか、冒険者になってすぐ、こんな事態に遭遇するとは思わなくて……」


「そうだよね。私も一人だったら逃げる事を考えたかもしれない」


「新人の冒険者にはキツいですもんね。私のいた村ではこんなことなかったんですが……」


「そうなの?」


「はい。辺境の森ならではなんですかね? こんな事が毎年何度も起きているって……信じられないです」


「う~ん。でも早期対応さえ誤らなければ、大侵食になる前に防げるらしいし、この町にはそれを耐えきってきた歴史があるから」


「そうですよね。今は、私より強い二人が一緒のパーティーにいてくれるのが心強くて……」


「私も同じだよ。ラグナードもいてくれるし、何とかなる気がする」


「確かに。じゃあ、明日から頑張るためにも、いっぱい食べて鋭気を養いましょうか! 次はこれとこれ、注文しちゃいませんか!? 美味しいんですよっ」


「あ、私はもういいから。お腹いっぱいです」


「ええっ!? ノリが悪いですよ、そこはもうちょっと頑張りましょうよっ」


「いやいや無理だから。リノのちょっとはちょっとじゃないしっ」




 想定以上の迷いの魔樹を発見して不安になっていたけど、こうして最後は楽しく会話しながら食事をし、明日からの緊迫した捜索を前にリフレッシュして備える事が出来てよかった。今夜もぐっすり眠れそうです。





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