第75話 『幸運』スキルのおかげ?



「これで目的のものは手に入れましたけど、この後はどうします?」


「う~ん、せっかくだし今度はマジックキノコを探したいかな」


「あ、そうですね。水玉茸なら色鮮やかなので私でも見つけられそうですし。じゃあまだ時間もありますし、ちょっと遠回りして別ルートで町まで向かいましょうか?」 


「うん、そうしようか」


 背負子のスペースにも余裕があるし、ここまででたぶん二時間ぐらいしか経ってないはず。


 森の奥に行くほど魔素が濃いから発見出来る確率は上がるけど、命大事にっ、だからね。

 奥に進むのはやめて、このまま森の浅い部分を町に向かって戻りつつ、その過程で採取や討伐をしていく事にした。

 マジックキノコは色鮮やかなものが多いというし、それなら遠くからでも目立つはず。見つかるといいなぁ。




 途中、やっぱり魔物や野性動物にもよく遭遇したけど、ホーンラビットやウォークバードも手に入れられたので、リノがホクホク顔でお肉を担当すると言って自分の背負子に乗せて持ってくれた。

 うん、重いのに幸せそうに持ってくれてありがとう。これだけあれば、そのお肉で今度こそ念願の干し肉が作れそうだねっ。


 相変わらず水光茸はよく見つかるので、出来るだけたくさん採取していく。すぐに消える今日限定の採取物だといれると、頑張って採らなきゃって思っちゃうんだよね。



 それともう一種類、白くて大きな傘のキノコが同じぐらいポコポコ生えているんだけど、これは見たことある。


『鑑定』すると……。



水白茸ミズシロダケ


 効能:免疫力強化作用


 可食:生食不可

    水分を多く含むものほど栄養価が高いが味は薄い


 採取:主に草原など、明るい場所に生える真っ白な茸

    年中採取可能だが、雨が多い時期は大発生する

    7~10cmの大きさになったものを採取する 】



 となっていて、食用茸らしい。鑑定結果をみると、この水白茸も雨が降ったら一気に増える茸みたい。


「これ、北門近くにもたくさん生えてたやつだよね」


「はい、街道沿いにもありましたし、早朝から町の人達が採取していたのと同じ茸です。東の草原にも大発生しているんじゃないですか? でも、森の中でもこんなに生えるなんて……知らなかったです」


「ここが外周付近で開けた場所が多いからかも。陽の光が入るし」


「そうかもしれません。比較的明るいですもんね。それと多分ですけど、雨が続くと町中にも生えてくると思いますよ。私の村でもそうでしたので」


 少しの雨でもすぐ生えてきて、一日で7~10cm程の大きさに急成長するらしい。

 晴天が続くと水分が足りず十日ほどで消えるけど、雨が頻繁に降る月には消えることが無いため、どんどん増えてしまうんだとか。

 なのでその時期は、村の中に出てきた水白茸の採取が小さな子供達のお仕事になるそう。


「乾燥させると効能がなくなりますので、出来るだけ取れたてを食べた方がいいんですよ」


「へえ、そうなんだ。免疫力強化っていい効能があるし、自分達用に食べれる分だけ採っていく?」


「いいですねっ。採取は任せてください!」




 ということで、リノが採ってくれている間に、私は周囲を計画的して『索敵』しつつ、近くの木に登って上からマジックキノコを探すことにした。


 金粉茸は群生しないのと、傘の部分の色合いが黒や紫と暗めで散りばめられた金粉も光が当たっていないと綺羅めかないから探すのが難しい。


 でも水玉茸は群生するし、傘の部分が薄桃色で、赤、青、緑、黄色の水玉模様があって森の中では派手な色合いなので見つけやすいはず。


 幸いにして、ここら辺は木が疎らな場所なので、遮るものも少ない。


 場所を移動しながらあちこちの木に登る。そうして私が上から探している間に、リノが採取してくれた水白茸や水光茸で背負子がいっぱいになってきた。


 今日はもう無理かなって諦めかけた、その時……。


 目の端に鮮やかな色が映り込んだ。色合い的にあれは水玉茸っぽい!



 ドキドキしながら二人で近づいてみると、そこには期待通り、一面にマジックキノコが生えてはいたんだけど……。







「あああぁぁっ、これは……」


「結構、ガッツリと食べられちゃってますねぇ」


 残念ながらあちこちで囓り取られた跡がある。マジックキノコは食べるだけで強くなれる種類が多いから、争奪戦が激しくなるのは仕方ないんだけど。


「残っている水玉茸も無事なものは少ない、か」


「そうみたいですね。こっちのは水玉が消えちゃってますし……」


「う~ん、じゃあまずは採取出来るものを探さないと。とりあえず、黄色以外の水玉茸があったら教えてくれる? 魔法で採っていくから」


「分かりました、探しますねっ」



 四種類の水玉茸は、赤が火魔法、青が水魔法で緑が風魔法、黄が土魔法を使って採取でき、それぞれの属性魔法の上限値が+1上昇する効能がある。


 私はまだ土魔法を習得していないので、黄色の水玉茸だけは採れないんだよね。でも、雨が降った後だとこんな場所でも見つかるなら、早めにレベル1でもいいから覚えておかないと勿体ない。


 採取に生活魔法が使えたらいいのに、それでは採れないっていうのが辛いとこだよね。かといって、四属性魔法だと本来は攻撃に使うものだから、威力調整が難しいし……。


 それでも二人で協力しながら、三種類の無事な水玉茸を二十個ほどは手に入れることができた。


「……これだけかぁ」


「でも、食べれるのが残ってて良かったですよ」


「うん……そうだね」


 仕方ない。少な目だけど、リノの言う通りあっただけでもよかったって思っておこう!




 日も傾いてきたので、それからすぐに北の森を出る事になった。


 活動時間が短い割には、運よく欲しかったものがいっぱい見つけられたよね。レベルは上がってないけどこれも『幸運』スキルのおかげかも?


 雨降り後の冒険者ギルドは、いつもより多く成果を上げた冒険者で混み合うらしいので、二人で相談して直接宿に帰ることにした。今日は帰ってからやることもいっぱいあるからね!





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