第74話 茸はどこに?
◇ ◇ ◇
北門から北の森へ向かう街道には、等間隔で光り石が埋め込まれてるので距離が分かりやすい。
2km毎にあるので、北門を出て三つ目の所まで行ってから、北の森へと入って行く事にした。
リノと相談した結果、町から離れた方が人の出入りが少なく、マジックキノコや
茸が溢れる森の中を魔物にも注意しながら、慎重に進む。
短時間で見つけるには厳しいだろうけど、あったらいいなぁ。
森に入ってまず目につくのは大きな葉っぱの茂み。
両掌を目一杯広げたぐらいの大きな葉で、初めてこの世界に来た時からなにかとお世話になっている大葉だ。
この葉で料理したり包んでおくと常温でも長持ちするので野宿していた時は本当に助かったんだよね。
――ちなみに『鑑定』では……、
【
効能:防腐・殺菌作用
可食:不可
採取:効能が高い濃い色の葉を採る
森の中なら何処でも大量にある
加熱に強いので、器の代わりに利用される
繁殖力旺盛で年中採取可能 】
となっている。
町中で育てても効能のある葉に育ちにくいらしく、冒険者ギルドが百枚で1シクルの常設依頼を出ている葉だ。
安全な森の外周付近でもすぐ見つけられる新人冒険者向けの安い依頼になるんだけど、屋台や商店で、持ち帰り用の器にも使われているから常に需要がある。
宿で女将さんが作ってくれる携帯用の昼食だって、実はこの大葉で包んだものなんだよ。
冒険者や狩人も、採取物を包んでおくと鮮度が保たれ買取価格も上がるからよく使うけど、繁殖力旺盛なのでいくらでも生えてくるというとっても使い勝手のいい便利な葉っぱなんだよね。
私達用にもたくさん摘んで行く予定。
午前中に続いて、雨の後にしか採れない水光茸を収穫しながら進んでいると、ようやく『索敵』でウォークバードを見つけた。念願のお肉にリノの目がキラキラ輝いてるよ、三羽もいるし、彼女の為にも全部狩りたいな。
飛べない鳥だけど、臆病なのでこっちに気付くとすぐ走って逃げてしまう。
あまり近づけないので、私が遠距離から水魔法で狙い打ちする事にした。
『
「おおっ、やりましたねっ」
「いや、失敗した……」
う~ん、惜しいっ。
ノーコンを返上したとはいえ、この距離からピンポイントで三羽の頭だけを続けざまに狙うのは厳しかったみたい。
『水矢』は、同じ水魔法の『水弾』より飛距離はある分、発動に時間が掛かるからしょうがない部分もあるんだけど。
「一羽、逃がしちゃったよ……」
「大丈夫ですって。止めと解体は私がしますねっ」
「うん、お願い」
残りの二羽も胴体に着弾してしまっているので、致命傷ではなかったみたい。リノがそう言って、ナイフで止めはを刺してくれた。
飛ばない鳥とはいえ、すばしっこいから逃げられる前に全部を仕留めきるって難しい……つい焦っちゃうし。まあ
今回は二羽狩れたし、よしとしとこう。
下処理の方も『解体』スキル持ちの彼女に任せ、その間に私は『索敵』しつつ、『鑑定』と『嗅覚強化Lv1』で周辺の地面を探る事に……。
前回、金茶香茸を見つけたのが樹の根元だったので、その辺りを中心に期待を込めて視ているんだ。
この茸は、色は濃い茶色で周囲と同化しやすく、生えてる場所も地表ギリギリな為、非常に分かりにくく採取の難易度が高い。
この広い森の中から見つけ出すにはスキルがあっても中々難しい条件だけど、雨降りの後は他の日より有利だと言われているので根気よく探していくしかないんだよね。
以前採取した場所は『マップ作成』にマークしてあるけど、最初に立ち寄ったジニアの村近くなので行くには遠くて無理だし。
しばらくそうして地道に探っていると、『嗅覚強化』スキルで気になる所があった。
落ち葉が降り積もっているのではっきりとしないけど、多分何かある。風魔法で一気に巻き上げて地表を確認してみると……。
――んんんっ?
あっ、これって……やっぱりありそうだよ!
たぶんここかなって場所を『鑑定』してみると……。
【
効能:食欲増進作用 滋養強壮作用
可食:生食可
バターのような香ばしい独特の香りがある
大きい程香りもよく希少価値が高い為、高値が付く
採取:地表ギリギリに生え、落ち葉に隠れて見つけにくい
鑑定スキル持ちや、嗅覚の優れた獣人族向けの採取
採取時期には同じ場所に何回も生える
春~晩秋迄採取可能 】
――おおっ、あ、あったっ。これだよこれっ、ようやく見つけたよ!
ということは……周辺にもきっとあるはず!
ワクワクしながら更に範囲を広げて落ち葉を退けていくと、案の定ポコポコといっぱい出てきたっ。
やったぁ! 群生してる!
「見つかったんですねっ、金茶香茸。それもこんなに!」
「うんっ、ようやくね! 早速採っていこうか」
「はいっ」
狩った獲物の処理をしてくれていたリノも合流し、大小様々な大きさの金茶香茸を嬉々として二人で採取していく。
「うわぁっ、大きいのも結構ありますね。これなんか8cmくらいはあるんじゃないですか? はあぁ、いい匂いぃぃ――!」
「おおっ、大きいやつほど香り高くなるって聞いてたけど……うん、本当だね」
「高値で売れそうじゃないですか?」
「そうだね。この場所は当たりだったんじゃないかな。しばらく誰も見つけてなかったのかもっ」
「ラッキーでしたねっ」
「うんっ」
最終的にはこの一ヶ所だけで、小さな袋一つ分は採れるという大収穫でした。もうとっても満足です!
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