第67話 九級昇格
そのためにも効率的な基本魔法の使い方を勉強して身につけなきゃね。
基本魔法教本が理解出来ると、『魔力感知』『魔力操作』『魔力強化』『身体強化』の四つのスキルが取れる。
リノにすでに『魔力感知』を習得済で、町に来る前から『魔力操作』スキルも練習してきている。
念願だった魔力も今日で増えたと思われるし、あと一歩で習得出来るところまで来たんじゃないかなっ。
「じゃあリノはこのままいつも通り練習してみてね。私はドライフルーツを作るから」
「はいっ、頑張って覚えます!」
二人とも魔力を使う事になるので、先にいつもと同じように支援魔法の重ね掛けしておいた。
と言うわけで、私は今日採ってきたウルルの実とトゲトゲベリーをドライフルーツにしていこうと思う。
まずはウルルの実から。
机の上に、北の森で採ってきた殺菌作用のある大葉を隙間なく並べ、その上に聖魔法の『聖火』を浮かべて作業する。
皮剥きはリノがしてくれてあるし、魔法で下処理済みなので水分も少し抜けて軽くなっているのですぐ出来そう。食べやすい大きさにカットしてから、仕上げの乾燥作業を魔法でパッパとやってしまう。
続けてトゲトゲベリーの方も作っていく。こちらは一つ一つの実が小さいので、ウルルの実よりも簡単だった。
今回は乾燥に風魔法を意識して使ってみたけど、美味しそうに出来あがったよ!
リノはまだ、魔力切れせず頑張っているようなので、念のため出来立てのMP微量回復効果付ドライフルーツをそっと横に置いておいた。魔力補給しながら頑張ってね。
続けて女将さんから追加で注文された香草塩作りに必要な分量を調べる事に……。
辛草や甘草の他にもいろんな香草をブレンドしているので、足りない分は明日、採取しに行かないとだし。それにお塩も少なくなくなってきたから、買い足さないと。
一通り確認し終わったところでリノも魔力切れをしたので、今日の訓練は終了となった。
『鑑定』で確認してみたところ、スキルとしてはまだ三つとも取れてない。まぁ、そう簡単にはいかないか。
でも、今までよりはっきりと魔力感知も出来るようになり操作の仕方も分かってきたと思うとの事。近いうちに取れるといいな。
寝る前にそれぞれベッドに腰掛けて、パーティー初戦を振り返ってみた。
――パーソナルレベルを上げる目的があったから、戦闘数は全部で十二回と結構多かったんだよね。
ほぼポイズンラットとのものだったけど、どれも危なげなく倒せてたと思う。
『索敵』があるから、事前に来る魔物情報が分かって備えられたのがよかった。安全に討伐出来たから。
北の森の中でも弱い魔物とだけ遭遇したから、リノが前衛で短剣での接近戦を、私が後衛で遠距離からの魔法攻撃をと、役割分担して連携の確認も出来たし。
成果も、新人だけのパーティーとしてはかなりの数だと思う。
私達が討伐しているような弱い魔物の報奨金は十体単位で出るので、規定数に達してなかったポイズンラットとスモールワームについては、私が以前討伐し貯めていた魔石を足してきっちりと数を合わせた。
内訳はホーンラビットが二体、ポイズンラットの魔石が四十体分、スモール・ワームが魔石のみと併せて四十体分と、採取したウルルの実が十個。
この中で報奨金が出るのはポイズンラットとスモール・ワーム。
報奨額は二つとも十体で20シクルと同額だったので、合わせて160シクルになった。少ない額でもコツコツ積み重ねることがとっても大事だから数合わせは大事。貰えるものはきちんと貰っとかないと。
ホーンラビットは大きな個体だったので、一体35シクルのところを40シクルに、ウルルの実もきれいな状態だったので最高額の一個3シクルと、それぞれいい買取価格がついた。これには二人で満足したよね。
今日の討伐・採取の買取総額は584シクル、ここに女将さんから受け取った香草塩の代金、100シクルを加算する。
日本円だと、二人で約七万円近くを一日で稼いだ計算になるんだけど、リノの籠手を買ったらもうほとんど手元に残ってない……。
装備品、高いんだよね。いいいものを求めたらきりがないけど、中古品でもそこそこのお値段がするから。
一人前の冒険者となるにはまだまだ揃えられてない物も多くて、ちょっと貯まったと思ってもすぐにこうして消えてっちゃう。
細かいところからも節約して頑張ってるつもりなんだけどなぁ。自由に使えるお金っていつになったら持てるんだろ?
昇級ポイントの方も26点となった。これも、町中の依頼だと、丸一日の仕事一件につきほぼ1点しかつかない事を考えるととっても多い。
お金はパーティー費用分とメンバー数で三等分し、昇級ポイントもパーティーで等分される。
という訳で累計昇級ポイントはリノが27点、私は108点となった。
九級昇格に必要なのは、ポイントが100点とスモールワームの討伐だからこれで私の方は条件を満たした事になる。
早速、手続きしてきたんだ。
ギルド証の更新は、九級だと銀貨3枚。迷いの魔樹を討伐したお金があったから、すぐ支払えてよかった。これで私も九級冒険者になったよっ。
「昇級おめでとうございます!」
「ありがとう。でも昇級のメリットってあんまりない……よね?」
「う~ん、そうですねぇ? 自分がどれぐらいの強さか分かる……とかですかね? それにギルドから等級にあった最新情報を教えて貰えたり?」
「まぁ、そのくらいかなぁ」
確かに、自分の強さを測る目安として利用する、討伐・採取依頼一覧表に書いてある基準と照らし合わせ最適な依頼を自ら探せる、ってくらいか。
基本、それらは等級別で受けられない依頼というのはない訳だし。冒険者ギルドは、無謀な挑戦をしたければ自己責任でどうぞって、冒険者本人に危機管理を任せるスタンスだからね。
次回、八級昇級までのポイントは1000点。
今度は簡単に上がれなさそうです。八級になるとダンジョンに入れるようになるから、そこまでは早く上げたいなぁ。
彼女も今日で十級の強制討伐依頼である、スモール・ワームの討伐を達成した。パーティーでのポイントは等分割されるから、スモール・ワーム二十体分のポイントが一気に入ったんだよね。
私の『索敵』スキルがあれば、今日のような討伐数がこれからも安全に稼げて、昇級ポイントもたくさん入ってくるはずだから、すぐランクアップ出来そう。
リノさんもお金、溜めないとねっ。
特に、
食べる量を減らすのは彼女の体質を考えると難しそうだから、出来るだけ北の森で調達しようねっていう話をして、今夜はもう休むことにした。
しかし、ほんと今日は朝から色々あったなぁ。
『幸運』スキルが必ずしも幸運だけを運んでくれるとは限らないこと。リノが木登りそれほど得意じゃないと判明したこと。適当に調合した香草塩が、リノと女将さんの心にクリーンヒットしたこと。リノの不調の原因が推察出来たこと――。
色々あったけど、彼女と一緒にいることで、何か不利になるような出来事は起こっていない。むしろ、良い運が呼び寄せられている気がする。
――案外、『幸運』スキルの迷信レベルな噂も、私たちに関しては当たっているのかも、ね?
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