気づいたら異世界ライフ、始まっちゃってました！？

第69話 採取日和

　辛草は唐辛子の、涼草はミントのような風味の香草で、以前この二つを使ってミントチャツネっぽい調味料を作ったんだよね。あの時のウォークバードのお肉、美味しかったなぁ……。

【 辛草（カラクサ）：香草

　　効能：疲労回復効果　防腐・殺菌作用　

　　可食：根っこ以外の全草

　　　　　魔素が濃い場所に生えているものほど、

　　　　　辛みが強く効能が高い　　　　　　

　　採取：先端部分の葉と茎を採る

　　　　　根を残しておくと、1ヶ月程でまた採取可　

　　　　　冬以外は採取可能 】

【 涼草（スズクサ）：香草

　　効能：健胃整腸作用　防腐・殺菌作用

　　可食：根っこ以外の全草

　　　　　魔素が濃い場所に生えているものほど、

　　　　　清涼感のある香りが強く効能が高い　　　　　　

　　採取：先端部分の葉を採る

　　　　　根を残しておくと、1ヶ月程でまた採取可　

　　　　　冬以外は採取可能 】

　この二種類の香草と甘草については、北の森に割りとよく生えているので見つけやすいんだ。

　甘草は、その名の通り庶民の砂糖って呼ばれる甘い香草のこと。ちょっとステビアっぽいかも。

【 甘草（アマクサ）：香草

　　効能：鎮静作用

　　可食：根っこ以外の全草

　　　　　魔素が濃い場所に生えているものほど、

　　　　　甘みが強く効能が高い　　

　　採取：先端部分の葉と茎を採る

　　　　　根を残しておくと、1ヶ月程でまた採取可　

　　　　　冬以外は採取可能 】

　ただ、三種類共にあまり見た目に特徴がないので、『鑑定』スキルがなければ見つけにくかったんじゃないかな。本当、このスキルを取っててよかったよ。

　根っこ以外の全草が使えるとなっているので、雨の影響でもっさりと繁った香草達を根元近くでバッサリと刈り取っていった。

　それから、黒鞘豆草も採取する。

【 黒鞘豆草（クロサヤマメクサ）：香草

　　効能：消化促進作用　抗菌・殺菌作用

　　可食：種と葉の部分で生食も可　

　　　　　乾燥させるとより香りがいい　　　　　

　　　　　葉より種の方がより肉や魚の臭みを取る効果が高い　　

　　　　　魔素が濃い場所に生えているものほど効能が高い

　　採取：種は夏に緑色の鞘が黒くなったら採れる

　　　　　蔓性植物で葉は種を作る前までは採取可能 】

　黒鞘豆草は種の方がいい効果が出るみたいだけど、今の季節はないので葉っぱを摘み取ることに。これ、大きさも色も赤紫蘇の葉に似ているんだよね。

　肉料理にも魚料理にも使える便利な香草だけど、春から夏までの短い間しか手に入らないので多目に欲しい。

　幸いにして次々と見つかった為、予定以上に採取できた。これだけあれば乾燥させて保存しておけるよね。来て良かった、満足ですっ。

　香草をこれだけ短時間に採取出来たのは、リノの活躍が大きい。

　彼女の『嗅覚強化Lv2』のスキルは、知っている香草ならある程度離れていても、匂いでその場所が分かるらしいんだよね。

　私の『鑑定Lv1』だと直接自分の目で見ないといけないから、見通しの悪い森の中だと不利だし、彼女のスキルの方が使い勝手がいいから。

　それに優劣の選別にも、とっても役立つ優秀なスキルだって分かったんだ。

　香草塩に使っているのはごく一般的な香草なので、森の中には同種の株がたくさん生えている。

　そこから、より香り高い良質な株を嗅ぎわけて選ぶことが可能だったんだよ。なんかもう人間業とは思えないんですけどっ。

　スキルがすごいのか使いこなしているリノがすごいのか、とにかく香りのある採取には便利すぎる。

　私も同じ『嗅覚強化』を持っているけど、レベル１なので精度が違うのか、初めは違いが分からなかった。

　リノに教えてもらいながら『採取』スキルと合わせて使用することで、何とかコツを掴めてきたって感じかな？　勉強になります。

　香草塩の材料としては虫根コブ草以外がこれで大体揃った。状態もいいし、前より品質の良いものが作れそうですっ、楽しみ！

　二人で一緒に採取した後、今度は道々生えている茸を重点的に『鑑定』していく。

　雨が降ると、何種類もの茸がポコポコ生えて来るって言ってたけど、本当によく見つかるんだよね。

　中には下級ポーションの原材料となる 水光茸（スイコウダケ）が、樹の幹にびっしりと群生している場所なんかもたくさんあった。

「うわぁ、もっと淡い光かと思っていましたけど、割りと光ってますね」

「うん、きれい……何か幻想的だよね」

「そうですね。それに、こんなにいっぱい生えているなんて……凄いです」

「本当だね」

　ちなみに『鑑定』結果だと……。

【 水光茸（スイコウダケ）：薬用茸

　効能：ＨＰ・ＭＰ微量回復効果

　可食：生食不可

　　　　火を通すと美味　　　

　　　　乾燥させたものにはＨＰ・ＭＰ微量回復効果が付くので

　　　　ポーション作成にも使われる

　採取：季節を問わず雨の翌日のみ群生するが、一日で消滅する

　　　　林や森の生木に生え、発光しているので見つけやすい 】

　となっている。マッシュルームに似た姿形の淡く光る茸で、今日のような雨降りの翌日のみ群生して生えてくる。その為、雨不足の年だと品薄になり買取価格が上昇するらしい。

　雨量が多いほど大量に採れるみたいだけど、少しの雨でもここまでの数が出てくるんだねぇ。

　こんなにいっぱいあるのに品薄になる時があるなんて信じられないけど、どうやらポーションに使う以外にも消費する量が多いからだそう。

　ポーションほどの即効性はなくても、干して食べるだけでＨＰ・ＭＰが微弱回復していくという便利な茸だし、それが安価で手に入るからなんだって。

　保存もきいて料理やお茶にと手軽に使えるから利便性も高いし、ポーションが高くて買えない層に需要があるんだと聞いて、なるほどと思った。

　だから、年間を通しての常設依頼になっているんだね。それに、冒険者ギルドでは売る時に乾燥させてから売ると二倍の価格で買取してくれるらしいよ。

　人手間かけるだけでとってもお得になるから、私達も生のまま売らずに魔法で乾燥させたものを持ち込みする予定です。

　明日にはもう消えてしまうので、出来るだけたくさん採ろうと頑張ったよ！

　他の茸も今までになく至る所で探そうとしなくても次々と見つかり、ちょっと雨が降っただけでこんなに増えちゃうなら、雨の月ってどうなるんだと思った。もっと凄いんでしょ？　今から楽しみなような怖いような……。

　――でもこれなら、金茶香茸（キンチャカダケ）もあるかもしれない。