第41話  手強いです



 例えば、魔力強化なんかを覚えてみるとかさ……私も『魔力強化』スキルは持ってて便利さを実感してるし。

 ただ自分で習得した訳じゃないから、どうやって教えたらいいか分からないんだよなぁ。


 あと他には……パーソナルレベルを上げる事で魔力を増やしたりとか?



 ――そういうの、出来ないんだろうか?



 確かパーソナルレベルは、魔物討伐でしか上がらなかったはず……。



「リノは魔物討伐ってしたことある?」


「一度もないです。途中で倒れたら危険だからと森の狩り場には連れていって貰えませんでしたし……」


「まあ、そうなるよね」


 やっぱりか。確かに村人達も魔物討伐の専門家って訳じゃないだろから、普通の子供連れでも危ないもんね。




 ――だとすると、異世界生活六日目の私より多分、レベルは低い。


 パーソナルレベルを早く上げるには、一緒に行動して魔物討伐をした方がいいけど、私じゃ人一人守りながら戦えるほど強くないから無理。


 今の状態で連れて行って彼女が途中で倒れたらと思うと、挑戦するには危険すぎるし。


 もどかしいけど命がかかっているし何かあってからじゃ遅い。安易な判断はダメだ。後から後悔したくない。慎重にやっていこう。




 ――と言うわけで実験その一。



 単純に魔力を補強すればいいんじゃね?



「じゃあこれ、さっき作ったんだけど食べてみて」


 私特製、ウルルの実のドライフルーツを渡した。


 ちなみに『鑑定』では……。



 【 ウルルの実


  効能:滋養強壮作用・MP微量回復


  可食:生食可

     水分が多めで控えめな甘さ     

     ドライフルーツにすると甘くなる


  採取:20cm程に成長した緑色の実を採る 】



 となっていて、魔法でドライにしたからちゃんと「MP微量回復」が追加されてた。

 採取方法は特に問題なく普通で、安心して採れそうな果物だから実験に使うには丁度いい。いっぱいあるし。


「ドライフルーツですか」


「うん。 今度はそれを食べてから少し休んで、それからもう一度魔法を使ってみてくれる? 感想を聞きたい」


「分かりました」


 やってもらったら、魔法は使える状態にがはなったけど威力や回数は全然変わらなかった。ドライフルーツの効果はほんのりあるかなっていうくらい。「MP微量回復」じゃ効かなかったか。


 う~ん、手強い!




 ――実験その二。



 魔力が足りないなら、もっと回復速度を補強して上げたらいいんじゃない?



「じゃあ今度は支援魔法をかけてみるね」


 引き続き、ウルルの実を食べて貰いつつ、支援魔法の『MP回復』を掛けてみた。


 結果、変わらず……らしい?




 なら、『HP回復』も重ねがけちゃえばいいよ!?


 今度はどうだ!


 聞いてみると、さっきのとどう違うのかも分からなかったらしい……そしてお腹もしっかり減ってると……おぅ。こういうのステータスに表示されたら簡単なのにね。



 う、う~ん困った。


 えっと、じゃあMPやHPじゃなくて他の原因も考えてみる……とかはどうだろうか? 


 例えば……。




 ――実験その三。



 とりあえずなんか治療してみる?



治療ヒール』!



 ダメ元で聖魔法をかけてみた。


 ど、どうだろうか?


「……っ!? な、なんか少し、体が楽になった気がします!」


「えっ、本当!? ちょっと前進したのかな?」


「はいっ、そうだと思います!」


 魔法の威力は変わってないけど体感は少し変わったらしい。めっちゃ笑顔で報告してくれた。



 でもなんだろう、これ……リノの体質って何かの病気ってこと? それも薬で治せるやつじゃなくって、聖魔法が効くような感じの?


 専門家じゃないし理屈は全く分からないけど、微量でも何か変化したと思ったのなら、続けてみる価値はある。

 それが『治療』単独の効果なのか、併せてHP、MPを回復させたからなのか……不明だけどね。




 少し効果がある方法が見つかった所で、また明日教える約束をして今日は終わり。


 リノは今日、仕事を無くしちゃったから、早朝からギルドに並びに行かなきゃだし早く休んだ方がいい。

 睡眠時間をしっかりとらないと魔力や体力は回復しないだろうし、無茶してもいい結果にならないと思うから……。



 お腹が空き過ぎて寝れそうにないと言う彼女のために、ウルルの実のドライフルーツをお土産にあげた。

 滋養強壮効果もあるし、体質改善に少しでも役立つかもしれないからね。


 長年抱えてきた問題が解決するかもしれないって希望を少し持てたことで、焦っていた気持ちも落ち着いたみたいでよかった。

 明日からもしばらくは町中の仕事を続けて、時間が掛かっても今度こそ装備を整えると言っていた。


 私も安全のためにその方がいいと思う。




 彼女はまだ、採集や討伐をするスタートラインにも立ててない状態だから。

 魔法が使えないので、せめて自分の武器を手に入れてからじゃないと外の依頼は危険過ぎる。

 それに短剣術が使えても、持久力なくてすぐ倒れちゃうって言ってたからやっぱり無理だし。


 だから私に今できる手助けは、ちょっとした食べ物の差し入れと魔法の使い方のお手伝い。それにリノ支援魔法や聖魔法を掛けるのも、いい勉強になるはずだしね。


 お互いの成長の為にも、今はそれだけにしておこうと思う。


 努力が必ず報われるこの世界で、彼女が毎日鍛練して来たことが実を結ぶのはもうすぐのはず……。



 私ももっと強くならなきゃ。



 一緒に頑張ろうね、リノ。





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