第42話 スキルが増えた



 リノが帰ってから、いつものように魔法の練習をする。


 部屋の中なので、主に『魔力操作』の練習なんだけど、今日はいっぱい魔力を使ったから、総残量も少なかったらしくすぐ疲労してしまう。


 これが魔力を使いきった状態なのかな?


 この状態で支援魔法の『HP回復』や『MP回復』を掛けて、回復しようとしても出来なかったんだよね。

 やっぱり回数無制限に使えるチートなスキルじゃなかったか……これ以上は練習続けるの無理っぽい。


 少し早いけどもう休む事にしよう。寝ると自然回復するみたいだし。



 ――でも、その前に!



 今の私のステータスを『鑑定』してみようかなっ。何か増えてるといいなぁ……ドキドキする。




 種族 エルフ


 名前 ローザ


 年齢 16才


 武術スキル


 魔法スキル 『火魔法Lv2』『水魔法Lv1』


       『聖魔法Lv2』『支援魔法Lv1』


 身体スキル 『魔力強化Lv2』『隠密Lv1』『俊足Lv1』


       『精神耐性Lv1』『幸運Lv1』


       『暗視Lv1』←new!『魔力操作Lv1』←new!


       『味覚強化Lv1』←new!『嗅覚強化Lv1』←new!


 技能スキル 『鑑定Lv1』『索敵Lv1』『採取Lv1』


       『マップ作成Lv1』『料理Lv1』




 ギルド登録を偽名で済ませてから、さりげなく名前の項目に偽名が表示されるようになったんだけど、これってどうなんだろ?

 定着しちゃったの? まあいいけどさ。



 スキルは順調に増えていってるね、うれしい。


 この街に到着して初めて取った『暗視Lv1』と『魔力操作Lv1』。


 それに加えて五感のスキルのうち、狙っていた視覚強化と聴覚強化はないものの、『味覚強化Lv1』と『嗅覚強化Lv1』がいつの間にか取れていた。


 何でだろ? 謎だ……。 


 取れたのは嬉しいんだけど、特に味覚と嗅覚は訓練してなかったんだけどなぁ?

『料理』スキルを持っている事とかが関係してて、取りやすかったんだろうか?


 そして今日もレベルアップしたスキルはなしか、残念。


 いまだに一つもアップしてないって……どんだけ経験値が必要なんだ、これ新しくスキルを取るより難しいよ。


 『索敵』、『隠密』、『マップ作成』なんかは、宿で一人になるとき以外、ほぼ常時発動させてるし、毎日ハーフマラソンぐらいの距離は『俊足』スキルを使って走ってるんだけど……まだまだ足りない、もっと努力しろってことなのかな?


 ――まあ頑張るけどさ。


 明日、から、ね……おやすみなさい……。




 ◇ ◇ ◇




 そろそろ視覚強化と聴覚強化のスキルも覚えたい、今日この頃。


 やっぱり狙って取るのは難しいのかなぁ。成功率は半々ぐらい?


 訓練してたら『暗視』とか『味覚強化』とか思いもかけないスキルが取れる事もあるから、まぁ無駄にはなってないと思うけどね。


 中々計画も通りいかないけど、実地訓練も兼ねていつものように北の森に行きますか!




 毎日活動しているからか、段々と北の森のことや、そこで活動している冒険者たちの様子が分かってきた。


 冒険者の多くは、主に町の近くの森から活動拠点を伸ばしていっているので、10km 以上離れたところで活動している私と活動地域が被らないのは前にも確認済み。


 確かに森の再生能力や一度に持ち運べる量を考えると、それで十分やっていけるんだよね。


 それに活動時間も違う。


 大抵夜遅くまで有り金叩いて酒場で騒いでお昼前から活動し出すことが普通で、朝早くから冒険者ギルドで依頼の受付をしなくてよくなってからは、早朝から活動するのは珍しくなったみたい。


 10km先が稼げる狩場だったらこうはいかなかっただろうけど、近場と収入的には変わらないし、まぁそうなるのも分かる。


 あんまり森の中で他の冒険者とかち合いたくない私は、助かってるけどね。




 色々考えて、午前中は魔物討伐をしながら採取するって決めた。


 なので、街道を行かずに虹色の樹がある巨木群のずいぶん手前から森の外周周辺に入り、移動するようにしている。



 巨木群につく前にいくつかの戦闘をこなしていくんだけど、よく出会うのはやっぱりゴブリンとポイズンラットの群れと、ホーンラビット。


 ホーンラビット以外は毎日狩ってるのに、全然減ってる気がしない。前は戦闘を避けてたけど今は積極的に狩りに行っているのにね!


 だいたい3体から6体で固まって移動しているのを狙って不意討ちするので、これくらいの数なら楽に倒せるようになってきたよ。


 今こうやって討伐している魔物は、弱いのばかりで単価も安い。


 数をこなさないといけないので労力に見合わないし、何より地味なので忌避されがちだけど、『索敵』で居場所を見つけて効率よく討伐出来る私にとっては無理せず比較的安全に狩れる都合のいい魔物だと思う。


 本当に『索敵』スキル取っててよかったっ。


 常設依頼だし、報償金が出る規定数に達したら買取に出すことにしている。


 数日前まで、余裕なくてすぐ売るしかなかったことを考えると、少しずつだけど前進しているよね。命大事に、安全第一にとやってるから、地味だけど今はこれでいいんだっ。




 今日は採取の他にもギルドから依頼された、迷いの魔樹を討伐する予定。


 巨木群へ行く道筋にあるし、以前見つけたものが『マップ作成』にマーキングしてあるのでそっちに向かってるんだけど……。


 やっぱりというか、さっそく魔物の団体さんのお出ましになりましたよ……呼んでないのにっ。




 前方にゴブリンの集団がいて、こっちに向かって来てる。


 いつものように『索敵』で見つけたんだけど、なんか一体だけ他の個体と違う……ような? 上位個体なのかな、初めて見たけど反応が強そうだ。


 でも、散々ゴブリンは倒してきたし、奇襲を掛ければいけるはず! っていうか、武術スキルのない私にはそれしか勝ち目がないんだけどねっ。




 急いで手近な樹の上へ登って、『隠密』スキルを使い、そっと気配を消した。


 ポイズンラットやホーンラビットならまだいいんだけど、ゴブリンは奴らよりは賢いし、人型の魔物で接近戦は精神的にきついから、遠距離からの攻撃で出来るだけ倒しておきたい。


 まずはリーダーであろう、例の上位個体から倒す。指揮系統を真っ先に潰すのは基本だからね。


 初めてで強さが分からないし、私の持ってる中の最大魔法で先制する事にした。


 ここも下草が生い茂っているけど、あれから命中率も上がっているはずだから、火魔法で一番威力の強いのを使うよっ。




 ――来た。



 あっ、ロングソードを持ってるのか。まともな武器持ちの個体って初めてみたかも……ゴブリンソルジャーかな?



 接近戦にならなければ怖くないはず、なので……。



火炎噴射フレイムジェット』!



 先制して撃った攻撃が、ゴブリンソルジャーの上半身に見事に命中したっ。


 炎を纏ったまま吹っ飛んでいったんですけどっ、ちょっとやり過ぎちゃったか? 『火矢』でも十分だったのかもしれない。


 魔石もどっかいっちゃたねこれは……後で探さなきゃ。





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