第37話 慣れって大切
こうして予定していたよりもずっと早く、スモール・ワームを倒しきることができた。
そして幸いなことに、虫系が苦手な私が戦闘後の後始末に苦手意識を持たずに済みそうなんです。
――グロくないんだよね、これが。
スモール・ワームの体毛が黄色にピンクのシマシマというメルヘンチックな色合いをしていることもあって、果樹の下にモコモコのファンシーなクッションを積み重ねてあるみたいに見える。
それにスモール・ワームの体液って、なんか甘くていい匂いがするから血の匂いに酔うこともなくて、精神的にとっても楽なんだ。よかった、これなら触れる。
さすがに全部は持てないので、冒険者ギルドで買った大きくて丈夫な皮袋に、傷が少ないスモール・ワームだけを選んでを詰めていく。
三十匹は軽く入ると言われていただけあって、楽々収納できた。
肉が売り物にならない、傷だらけのやつからは万能ナイフを使って魔石を取り出しておく。
残りはまとめて火魔法の『火炎噴射』を使って一気に燃やし、後始末をした。
――なんか今日の戦闘で、スモール・ワームに対する苦手意識がちょっとだけ減ったよね。
これからも遭遇したら討伐しないといけない魔物だから、本当によかったよ。
それに実物を見た今なら、昆虫型の魔物を使った料理に前ほど嫌悪感を抱かずに済みそうだしっ。なんだか地球にいる昆虫とは別物に見えてきたから。
エルフとしてこの世界に、順応できそうな気がしてきたっ。
さて、スモール・ワーム討伐のついでに、思いがけず大きなウルルの実がきれいな状態でたくさん手に入ったんだけど、これで背負子がいっぱいになっちゃった。ちょっと、重いです……。
一旦ギルドに行って、買取して貰おうかな。
まだ魔力も体力もそれに時間にも余裕があるけど、疲労を溜めて疲れたって思う前に余力を残して止めないと命に関わるからね。
ここら辺にはあまり冒険者も来ないということは、何かあっても誰も助けにてくれないって事だから、引き際を見誤らないようにしないと。
――うん、いいタイミングだったと思おう!
◇ ◇ ◇
あれから『索敵』スキルを使い、少し回り道をしながらも魔物を上手に避けていった。
かさばる荷物を背負っていたので、一度も戦闘せずに安全な街道まで出れた時はホッとしたよ。よかった。
――中途半端な時間帯だった為か、街道でも誰とも会わずに町まで戻ることになった。
さっそく冒険者ギルドへ行き、背負子いっぱいにある午前中の成果を買取カウンターへと持っていく。
さすがに量がある為、査定には結構時間が掛かると言われたので、それなら一旦、ギルドに全部預けておけるかを確認してみた。
これからもう一度採取予定なので夕方に再度来る事になる。そのときにまとめて精算してもらえたら、時間のロスもなくて助かるんだけど。
出来るか聞いてみた所、大丈夫だというのでお願いしておいた。
一日に何度も運び込む人もいるそうで、引き換えの番号札を貰った。便利な制度があってよかったよ。
さて、この後は東の草原へ虫根コブ草の採取に行く予定だけど、その前に昼食を買わないとね。いっぱい動いてお腹空いちゃった。
手持ちのお金は1シクル……串焼肉一本しか買えない……。でも、さっき採ってきたウルルの実もあるし、少なめだけど我慢するか。
屋台で串焼き肉を買い、お行儀悪いけど時間を節約したくて、食べながら歩いていくことにした。
今日はウォークバードのお肉を選んだんだ。ホーンラビットよりは固かったけど、一本でもこっちの方が量は多かったからさ。お腹も膨れたし塩味でまあまあ美味しかったし、よしとしよう。
昨日と同じように東門を出て、『マップ作成』でマーキングしておいた場所へと向かう。
受付のお兄さんと約束したからね、虫根コブ草の採取依頼、今日中にしておかなくちゃ!
周りに誰もいないことを確認してから『鑑定』スキルを使い視てみると……。
――あ、よかった。大丈夫、残ってる。
誰も採りに来てないみたい!
太陽も傾いてきてるし、ちょっと急ごう。
女将さんが、夕方までは部屋を開けて待っててくれるって言ってたからね、それまでに帰らなきゃ。
じゃあ、昨日と同じ手順で一つずつ掘り返して行きますか!
昨日のうちに目を付けておいた、大きな株ばかりを選んだおかげで、一株からたくさん採れる。
三株ほどを、掘り返しては埋め戻してをした辺りで二百コブを越えた。いやぁ、これは大量ですね。『鑑定』スキル様々です!
虫根コブ草の昇級ポイントは、百コブで1点だから今日はこれぐらいにしとこう。
それほど時間をかけずに採取を終えることができたので、これなら今日もギルドが本格的に混んでくる時間前に間に合いそう!
東門で少し入門するのに時間をとられたけど、 昨日と同じぐらいの時間に町に戻れたので、まだそこまで混んでない。
外套のフードを深く被り直してから受付に向かい、少し待つだけで順番が回って来た。先程の分とまとめて買取してもらう。
虫根コブ草と引き換えの番号札を渡して、今度は受け取りカウンターへ並びなおす。
魔石は、午前中の分と昨日半端に残っていたのを足して、報償金を貰える数にきっちり合わせて渡しておいたので、買取価格が上がっているはずだから楽しみ。
この時間は対応している職員さんも多いから、それほど待たずにすぐに順番が来た。
今回は種類も量も多かったので査定に時間がかかったみたいだけど、全部で912シクル、昇級ポイントは28点でトータル36ポイントになった。うん、一日の稼ぎにしては割りといい感じじゃない?
お金を受け取り、魔方陣魔法の描かれたミスリル板に左手を置いて魔力を流し、点数の更新をしてもらう。
お金も昇給ポイントも予定よりたくさん稼げたし、この調子で行けば、明日には中古の革鎧くらいなら手にはいるかもしれないっ。もう一息、頑張ろう。
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