第26話 宝火樹
だからロープがなくても大丈夫だと思ってたんだけど……こうなってくると命綱が必要だね。
薬効の高い魔力を含んだ葉の周りほど発熱しているから暑さに負けてふらつきそうだし、採取中にも他の葉に触りでもしたら熱さのあまりバランス崩すかもだし……何しろにわかエルフだからさ。だから、ちゃんと装備することにした。
……はあぁ、ドキドキするなあもう。
落ち着け私、一瞬で終わらせるよっ。
火傷したくないから素早くねっ。
えいっ!
プチっとな。
よしっ、採れた!
でも、やっぱ熱いっ!
採る瞬間、とっても指先が熱くて痛いんですけどっ。
皮手袋も焦げてないし、ちゃんと採れてるし、『鑑定』で見ても効能は消えてないから、これいいんだろうけど……。
手袋を取ってみたら指先が赤くなってた……ううっ、ジンジンするよぉ。数をこなすにはこのやり方だと無理っ。
もっと安全に取れる方法、何かないかなぁ?
……一度、ナイフとか魔法とかでも可能か試してみる?
『鑑定』レベルが低いからか、採取方法については出てこなくて不明だし、失敗するかもしれないけど。
よしっ、やってみよう。
まずはナイフを使って……。
スパッと切り落とす!
やってみたけど、う~ん……ダメかあ。『鑑定』したら薬効が消えてる。
じゃあ今度は魔法で……どうしよ、火魔法でいいかな。
この樹も発火してるようなもんだし、同属性っぽい方がいけるかもしれない。
念のため葉っぱが落ちないように、落下地点に袋も広げておいてと、うん、これでいい、準備できた。
じゃあ、いくよ!
ごく細く魔力を絞って……ピピッとこう、えいっ!
ひらりっ。
落ちてきた大きな葉っぱを素早く掴む。あ、普通に掴めた! 落下直後だったのに全然熱くない! 本当に採る瞬間さえ注意すればいいんだ。
効能はどうなっているかな?
……うん、大丈夫。
『鑑定』でもちゃんと薬効ありってなってる、消えてないよっ。良かった!
このやり方のが安全だし、これでいこう!
火魔法は一番使用頻度が高いからか、割りとイメージ通りに操作出来るようになってきたし。
枝から枝へと発熱する葉っぱに触れないよう慎重に移動し、『鑑定』で確認しながら効能満たしているものを一枚ずつ採っていく。
採取可能な赤黒い葉は、見た目でもある程度判断できるという事もあって、『鑑定』スキルも少し確認する程度でいいので、次々と迷わず採れた。
『採取』スキルもいい感じに働いてくれてるらしく、途中からスピードアップしたのが体感出来たしね。
初めはどうなるかと思ったけど、短い間に布袋いっぱい採れたので満足です!
はあぁ、暑かった!
汗もいっぱいかいちゃったから、聖魔法の『浄化』キレイにして……と。うん、スッキリ快適です。魔法って便利ですね!
じゃあ次は、今度こそ虹色の樹を探そうかな。
方向はこっちで合っていると思うんだけど、今いる場所からじゃ木々が邪魔をして遠くまで見渡せないし、宝火樹は上へ行くほど熱い葉があるからこれ以上登るのは、紙装備の私には危険。
なので一旦、
天辺付近から森を見渡すと……。
……あ、あった。
探し求めていた虹色の樹が、一際高く、にょきにょきと生えているのを簡単に見つける事が出来た。
思った通りここから近い、もうすぐ辿り着ける。
宝火樹から少し歩いて、虹色の樹にたどり着いた。
うわあっ、いっぱいある。ここら一帯が全部そうなんだ。
しかしこの鮮やかな虹色の色彩、目がぐるぐるして変になりそうだなぁ。
樹皮が七色なのは知ってたけど、想像以上に一色一色が濃くてはっきりしている上にそれらが複雑に配置されてるんだよね。より強調されてきっつい配色に感じる。
--なんか魔界の植物みたいじゃない?
いやほら魔界とか行ったことないけどイメージとしてはそんな感じ。森の中は少し薄暗いから、余計に薄気味悪いというかね。
っていうか、高っか!
なにこれ、見上げすぎて首が痛いっ。
近くで見ると、よりいっそうその巨大さが分かるなぁ。確か、樹高が70~100mもあるんだったっけ?
そりゃ高いわけだよ。樹冠がまるで見えないもん。一番下の枝だって身長の三倍ほどの高さまでないし、前だったら絶対登ろうと思わないやつだよ。
でも今はどうやって登ったらいいかその道筋が本能で分かるって言うか。まあ本能がいけるって言ってても躊躇するぐらいの高さなんだけどねっ。
昨日、ロープを余分に買っておいてよかった。一本だけじゃ絶対足りなかったよこれ。
虹色の樹は、一本あたりが大きいから樹の間隔は広く、この辺りの見通しはそれほど悪くない。
これなら樹に乗り降りする時だけ気を付ければ、割りと安全に採取出来そうかな。
じゃあまず、一番下の枝までちょっと登ってみるか。
ロープをブンブン振り回し、周りの枝に進路を邪魔されながらも、なんとかお目当ての枝に引っ掻ける事に成功した。
結び方とか分かんないから、そこは適当にやってみた。念のため力をいれて引っ張ってみても外れない。
よしっ、大丈夫そうだね。
――じゃあ行ってみよう!
ロープを手にしてスルスルと登って行く。
うん、やっぱり、にわか仕立てのエルフでも木登りには強いね、ちゃんと余裕をもって登れてる。一番下の太い枝まで、あっという間に来れた。
――ここまではいいんだ順調なんだいつも。
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