第19話 基本は常設依頼で 後編
冒険者ギルドの荒っぽくも適切な対応により過渡期の混乱も乗り越え、今は利用者の棲み分けが上手く機能している。
落ち着いて平和的に、依頼を受注出来るようになった時期に来れてよかったよ。
「最後になりますが、十級の皆さんに必ず毎月一度はしていただきたい強制依頼があります。スモール・ワーム十体の討伐です」
スモール・ワームは、果実が大好きな30cm程の巨大なイモムシで、さほど早く動けず比較的おとなしい魔物。
ただし買取価格がとってもお安く儲からないため、報奨金があっても受けてくれる冒険者が中々いない。
その為ギルドでは十級冒険者の強制依頼にして、一ヶ月に十体狩らないと違反ポイントが付くようにしたらしい。
おぉぅ、巨大化した虫系魔物の討伐ですか……。
虫苦手なんだけどな……大丈夫かなぁ、私。精神的にとってもきつそう……。
「ただ、町中の依頼中心の方には救済措置がありまして、50シクル支払えば免除されます。これは普段から、町の外で採取中心に活動される方には適用されませんのでご注意ください」
今の季節なら、実のなる果樹があまりないために同じ木に群がっている事が多く、討伐数が稼げるので狙い目らしい。
それにここでまとめて討伐しておくと来月以降に繰り越しができて、昇級ポイントも5ポイントと高くお得なので頑張ってくださいと言われた。
「それとこれは強制ではありませんが、スライム討伐の講習会を受けることをお勧めします」
達人による「上手なスライムの取り方」という講習会が、一ヶ月に一度開かれているらしい。
参加するだけで冒険者ギルドから50シクル支払われる上に、昇級ポイント10点が貰えるとか! ナニソレすごくない?
確か、さっき貰った討伐の小冊子には、ゴブリン十体で1ポイントって書いてあったよ? 比べると明らかに高いよね、なんでだろ?
「……スライムってそんなに強い魔物でしたっけ?」
「いえ、ご指摘通りむしろ弱い魔物なんですが、素材として確保するとなると難易度が上がるんですよ」
聞けば、普通は魔石を獲ると水みたいに体が溶けて消えるのに、上手く獲れると溶けずに素材として利用できるようになるとか。
スライムの素材は年中品不足なので、是非参加だけでもして欲しいと言われた。
他にもお金を払えば冒険者としての必要な技能を教えてくれる、ギルド職員を主とした講習一覧表が掲示板に貼ってあるので利用してみてくださいとのこと。
これは、常設依頼中心へと制度が変わり、ギルド職員の業務が減った事を利用して始めたものだそう。
それが上昇した冒険者の死亡率を下げるといういい結果に繋がったようで、冒険者たちにも好評らしい。
――こうして説明してもらっている内に、買取の査定が終わったみたい。
「お待たせしました。こちらが、魔石の買取分から、今月のギルド会員費と革袋の代金を引いた残りです。全部で395シクル、昇級ポイントは7ポイントです。確認が済みましたらこちらに魔力を少量流していただき、登録をお願いします」
お金を入れたトレーが目の前に置かれる。
それと共に差し出された、魔方陣魔法を刻んだミスリル板。教えられた通り、その上に左手をかざして軽く魔力を流すと、魔方陣からもふわっと魔力が流れ込んできた。
念のため、浮かび上がっているギルド証のスクリーンを確認すると、昇級ポイントが新たに登録されていたので、これでいいらしい。
手続きが終わり、私の全財産は村での取引の残りと併せて410シクルということに……。
よかった、大きくは稼げてないけど数日なはなんとかなりそう。
へえ、ゴブリンは1体で大銅貨1枚になるんだ。日本円だと千円ぐらいかあ。命懸けで戦ってこれじゃ安いよねえ。
でも、今回の買取からギルド会員価格を適応をして報償金を出してくれてる!
十体で大銅貨1枚の報奨金が出るから、三十体以上あったので報償金だけでも、別額大銅貨3枚ある。
こうゆうことなら端数は出さない方がお得だったような……いやでも今はそんな余裕ないし、しょうがないか。
常設依頼には、こういった単価の安い弱い魔物をまとまった数倒すという依頼が多い。
単体だと討伐料が安くて受けてくれる冒険者が少ないので、報償金を出して対応する為らしいけど、それでも中々厳しいみたい。
派手に冒険して一発デカイのを当てたいという夢をもち冒険者になる若者が大半であって、基本、こうした地味な下積みの依頼はカッコ悪いとしてしたがらないらしいから。
ギルドでも困っているようで、今回、特にポイズンラットの魔石を持ってきた事が、とても喜ばれた。
これも常設依頼で、十体の討伐料はゴブリンの半額だけど、報償金と昇級ポイントは二倍支払われる。それでも安いけどね。
こまめに駆除しないと手に負えない規模まであっという間に増殖し、町まで群れで押し寄せて来るんだとか。結構な頻度であるらしくて、その時は緊急の討伐依頼を出して対応するらしいよ。ナニソレ怖い。
あれがここにいっぱいって想像したくもないよ!
よしっ、今度からは見つけたら即討伐する事にしようそうしよう。
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