第145話 もう暫くはこの町で?
「じゃあ、アイテムを揃えたら暫くはこの町でキノコ狩りか?」
「うん、そのつもり。本当は町から移動した方が安全なんだと思うけど、何しろ二人とも今、資金が底をついてるからね」
「私達って現状、魔道具やポーションを揃えるだけで精一杯ですし……」
「そうだね。稼いでもすぐに出ていっちゃうか、使う予定のあるものだから余剰金がないと言うか……常にカツカツだから」
「命には代えられないとはいえ、消耗品の費用ってばかになりませんもんね。せめて旅支度くらいは整えたいです。じゃないと移動中の命保証が危うくて安心して町から出れませんし、やっぱりもう少しだけ移動は見合わせたほうが安全かと思います」
「金か……何なら援助してやってもいいぞ」
うん、ラグナードならそう言ってくれると思ったよ。本当、面倒見がいいんだから。
――でも、これ以上は駄目だ。
リノもきっと、同じ考えのはず……。
「ありがとうございます。でもそこまでは甘えられないですよ。ね、ローザ?」
「そうだね。今でも十分過ぎるほど良くしてもらっているし感謝してます。だからこそ、何とか自分たちの力で、もう少しだけ頑張ってみたいと思う」
冒険者としての能力も資金もギリギリの底辺を這ってる状態だけど……。
キノコの季節は稼げると聞いているし、危険もあるけどこれまで指導してもらった成果を見せたい。
いつまでラグナードが一緒にいてくれるか分からないしね。上手くいけば、資金不足も解消する……かもしれないしっ。
――彼に頼りきるのに慣れちゃ駄目だ。
早く強くなって、成長したなって言って貰えるくらいになりたい。
「……そうか。分かった。ただし何かあったら遠慮なく頼ること、いいな?」
「「はいっ」」
「よしっ。じゃあ商人対策はそれでいいとして。後は冒険者か。まあ、そんなに押し寄せてこないだろうが……」
「そうなんですか? いっぱい稼げる季節なんですよね?」
「でもリノ、確か女将さんが、この時期にボトルゴードの町から離れる冒険者が多いって言ってなかった?」
「……ああ、そういえば言ってましたね。えっと、雨降りの中の冒険は危険だし億劫だから森での依頼は嫌がられるっでしたっけ。手頃な難易度のダンジョンがある町に移動しちゃうんですよね?」
「そうだな。辺境の町ほど上質なマジックキノコが取れると言っても、ダンジョン産にはかなわないから。広大な森の中を闇雲に探すよりかはそっちの方が確実に見つかるって思ってしまうんだろう」
「なるほど」
ただ、 ダンジョン産のものは危険度に比例して買取価格も高額になるけど、攻略は難しいらしいよ……。
――私達の目標は慎重に命大事に、だからね。
少々、不便でも今のレベルでダンジョンに潜るのが危ないってことはラグナードにも言われているし、まだ近寄らないでおこう。
「高位冒険者辺りのレベルは来ないだろうが、中途半端に強い冒険者たちが移動するからな。ダンジョンを避けるかダンジョンに潜るか、どちらの選択をするかでこの町にも来る可能性はある」
「へぇ、そうゆうもんなんですね」
「ああ、この辺りの力を持つ連中が、新人の次に死にやすいんだよ。ある程度強くなると、力に過信して油断しやすくなるからな」
――成る程、この町の冒険者が移動していくのにも、そんな理由があったんだ。
「 それと一つ提案なんだが。一通りアイテムを揃え終わったら、人の出入りが激しくなるこれからの時期だけでも、拠点をジニアの村へ移すことも考えて欲しいんだ」
「ジニアの村……ですか? それっていつも行っている北の森の、その先にあるという? 私達とパーティーを組む前に一度、ラグさんが迷いの魔樹関連で支援に向かっていた場所ですよね」
「同じ狼人族のお友達がいるんだったっけ。その人って確か、ジニアの村専属の冒険者だって……」
「そうだ。 ただ一人の常駐冒険者というだけあって、住民たちからの信用も大きい。住民の数が少ないし、余所者が入ってきたらすぐに教えて貰える筈だ。その分、この町にいるより安全だと思う。あそこなら旅支度もいらないしな」
「そっか。この季節だけそちらに移るっていうのはいいかも」
「冒険者が長期滞在してくれるのは、村では大歓迎なんだよ。すぐ去っていく商人よりも、余程大事にしてくれる」
「それは……いいですねっ」
「後は、友人から聞いた話だが……いいマジックキノコの狩場があるらしいぞ」
「おおっ、本当ですか!? それなら是非とも拠点にしたいです!」
「そうだね。ただ、宿屋とかはあるのかな?」
あの村って私が初めて訪れた時は、まだ人も少なそうで、建物もそんなに建ってなかった。
小さな農村って感じだったし、同じことを考えている冒険者がいたら、例え宿があっても早く予約しないと埋まってしまうんじゃ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます