第144話 くれぐれも油断しないようにな!



「よしっ。二人共まずは、こんなもんでいいだろう。毎日練習を続ければ、スキルとして『偽造』や『隠蔽』のを習得できる可能性があるから、最終的にはそこを目指してもらう」


「うん、分かった」


「はい、頑張ります!」




 ――『偽造』と『隠蔽』のスキル。


 ラグナードによると、似ている部分もあるけど全く異なるスキルらしい。だけど、習得方法は被っているところが多いんだって。


 なので、どちらが取れるかは出たとこ勝負みたいなところがあるらしい。上手く行けば両方共、習得出来る可能性があるとか……。


 おおっ、それはいいこと聞いた。


 是非、二つとも取りたいです!


「一つでもスキルとして取れると、よりバレにくくなったりするのかな?」


「確実にな。ただ、無理矢理引き出す方法もあるからレベルが上がらない内は気休め程度だと思っておいた方が安全だ。くれぐれもっ。くれぐれも油断しないように! 特にローザ、分かっているな?」


「う、うん。分かった。油断しないように頑張る」


 色々と前例がありまくるので、そこはしっかりと念入りに釘を刺された……。


 ――本当、ご心配をお掛けしております。


 これまでの私の行動を鑑みると……うん、全然、 反論できないですね!?


「是非、そうしてくれ。俺の心の平穏のためにもなっ。それと、もう一つだけ教えておく。魔道具は、頼りすぎるとかえってスキルが成長しないっていう弊害があるんだよ。覚えておいた方がいい。使い方には注意すること」


 成る程、便利すぎて成長を妨害してしまう可能性があるのか。気をつけよう。


「は~い」


「分かりました」


「よしっ。じゃあ今日の練習はここまでだな」


「「はいっ、ありがとうございました!!」」


 こうしてきめ細やかに教えてもらえるのって本当、ありがたいよね。ラグナードには感謝しかない。早く結果を出して彼の期待に答えたいな。




 ――それにしても、やっぱり魔法って意識して使うってことが大事なんだなぁ。


 無意識でするのとでは全然精度が違うらしいので、これからは積極的にやっていこうと思う。


 しかし信頼しているラグナードにステータスが筒抜けになっていたということはですよ? 同じ『鑑定』スキル持ちで、ある意味彼よりも同族として全面的に信頼している彼女には、当然……。


「……視えてたんだろうなぁ」


「ん?」


「うん。シルエラさんにも、ステータスが筒抜けになっていたんだろうなって思って……」


「シルエラさんって、確か、本屋のエルフさんのことですよね? 私はまだお会いしていないんですけど、美味しくて栄養のあるジャムとかを色々といただいた?」


「うん、そう。同族ってことで、この町に来てからとってもお世話になってるし、スキルの警戒とか全然していなかったから。聞かれたことは無いんだけどね」


「ああ、それは相手にスキルを尋ねないのが礼儀だから、だろうな。エルフは特に礼節を重んじる種族だし。……多分だが、ローザが信頼して話してくれるまで待っていてくれたんだと思うぞ」




 そういえば私、シルエラさんの誤解を解いてないままだった。


 異世界転移だか転生だかどちらかは当事者である自分にも不明だけど、こんなこと説明しづらくって。その部分だけ取り除いて事実を話したんだけど、見事に勘違いさせちゃった状態で、今に至っているんだよね。


 なので、彼女の中では『気が付いた時には森の中にいて記憶が無くなっていた可哀想な幼児』のまま、なんだ。


 気を使ってくれたんだろうな……真実を言えなくて申し訳ない。




「……そっか。随分とご心配を掛けているし、もっと早く言っとくべきだったよね」


「彼女はそれほど気にしてないさ。今度会った時にでも話せばいい」


「うん、そうする」


 いつも一歩引いたところから、適切な助言と手助けをして優しく見守ってくれているシルエラさん……。

 あの礼儀正しさは種族特性だったのか。日本人としての記憶がある私には、馴染みのある距離感で嬉しかった。


「じゃあ、明日の仕事は早めに切り上げるか」


「はい、お店巡りもしたいですし、そうしていただけると助かります」




 ラグナードに隠蔽スキルのコツを教えてもらったことだし、魔導具の助けがなくとも強い意志さえあればある程度防げるとはいえ、彼が言ういうように慣れない内は頼りになるから買いに行きたいし。


 もう何時いつ、町の外から商人が来てもおかしくないから急がないとね!





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