第80話 新メンバー候補
◇ ◇ ◇
ということで翌日、念願の装備も一通り整ったことだし、革鎧に慣れる為に北の森より安全な東の草原に行くことにした。
今日は討伐中心に、スライム講習会で通った道を進む予定だ。一応、冒険者ギルドから虫根コブ草を納品して欲しいと頼まれているので、その依頼もこなすつもり。
活動時間はお昼前までと短めにして、午後は休む。この町に来てから無休で頑張ってきたし、二人で相談して決めたんだ。
私もこの町どころか突然この世界に来てから一度も休日を取ってないから、いい加減リフレッシュしたいって思ってたんだよね。
早朝から東の草原に向かうのは二人とも初めてだったんだけど、やっぱりこっちは人が多い。
エドさんから聞いた情報では、雨降り後は東門前まで来ていたスライムやヒメフロッグなんかの魔物も大分狩り尽くされ、冒険者達は段々と町から離れた場所に狩場を移しているんだとか。
今、東門の近くで水白茸などの食用茸や野草を採っているのは、ほとんどが町の住民らしいので、狩場が重なる事もなさそう。私達が虫根コブ草の採取をしに向かっても大丈夫だね。
それと、雨降り後のこの時期には、東の草原ではグラスラットの駆除依頼が出る。魔物じゃないんだけど繁殖力が旺盛で、貴重な薬草を食べ尽くしてしまう害虫だ。
小さくてすばしっこいため中々捕まえられない厄介なネズミらしい。
茸類も好物らしく、今もまだ大量に生えてきている水白茸があるので餌が豊富なのもヤバい。
早めに手を打たないと大繁殖待ったなし、町まで侵入されてしまう可能性もある為、東の草原に行く冒険者の強制依頼期間中です。パーティー単位で一日十体、討伐証明は尻尾になる。
私達には虫根コブ草の依頼も出ているので、パーティーで二百コブ集められれば免除してもらえるらしいけど、練習にちょうどいいので見つけたら駆除するつもり!
グラスラットはリスぐらいの大きさで、魔物と違って人の気配を感じた途端に逃げていく。その為、最初のうちは駆除するのに手間取っちゃった。
でも『索敵』スキルがここでもいい仕事をしてくれたおかげで、背の高い草影に隠れている奴らを見つけ出すことができたよ。
数匹から二十匹ほどの群れで生活しているらしく、大きな群れほど発見しやすいのは助かる。
リノは長剣、私は魔法を使ったんだけど、これを倒すには槍とか弓が欲しいかもしれない。
それでも割りと直線的な動きをすることが多いと気づいてからは、駆除が楽になったからよかった。
虫根コブ草も場所をマッピングしてあったので、たくさん採取出来た。前回来た時の偽装工作も上手くいったようで、あれから誰も採りに来てないみたい。
高額買取になるし、せっかく見つけたこの場所は他の冒険者に秘密にしときたいんだよね。
周りの状況を見て『隠密』スキルを発動させ、私だけでこっそりと集める事にしたからバレてないはず。
その間リノは、新装備を慣らす為に単独での討伐に挑戦していた。ここは北の森より更に弱い魔物しかでないから、個別に動いても安全が確保出来るのがいいよね。
主に出てくるのはグラスラットで、ヒメフロッグには一度も遭遇しなかったけど、スライムとは何回か戦闘をしたみたい。スライム素材を確保してた。
今日は早めに切り上げる予定だったので、まだお昼前だけど町へ戻った。
冒険者ギルドの受付にはエドさんが座っていたのですぐに査定してもらい、昨日ほどじゃないけどそこそこの稼ぎを受け取った。
虫根コブ草も二百個と大量納品できた事だし、明日からまた北の森に行くと聞いたエドさんから知っておくべき重要な最新情報を教えて貰った。
何でも昨日、北門近くの森で活動していた冒険者が何人か、迷いの魔樹に惑わされ襲われかけたらしい……。
幸い、同じパーティーメンバーが助け出して無事だったみたいだけど。
「その冒険者パーティーさんは、森のどの辺りまで行ってたんですか?」
「中奥より手前の比較的の浅い場所で、そこはいつも活動している見知った場所だったそうです。ただ、迷いの魔樹の幻術に惑わされて、少し森の奥まで入り込んでしまったようだと言っていました。随分さ迷ったみたいではっきりとした位置がお伝えできないんですが……」
「そうですか……外周付近は粗方、討伐出来たと思ってたんですけどね」
「ええ、そうですよね。他に調査依頼していた皆様からも、一旦は収束報告を貰ってましたし、少し警戒を緩めていたんですが……甘かったようです」
収束宣言を出す前にギルド職員を派遣して見回りをし、きちんと確認をとっていたらしい。
ほっとする間もなくこんな事になって、エドさんもとても残念そうだった。
「エルフのローザさんがいるので幻術に関しては大丈夫だとは思いますが、一応気をつけておいてください。それとまた、北の森での討伐の再開をお願いしたいのですが……」
「……分かりました、私達にできる範囲で協力します。ただ、初心者二人だけのパーティーですので、今まで通りお受けするなら森の外周付近のみということでいいですか?」
リノとも相談して、安全を確保した上で今の私達に出来る精一杯がそれになると言うことを説明する。
「そうですね。考えてみればお二人だけの初心者パーティーでしたね……分かりました、それでお願いします。……ただ、誰か、冒険者にお知り合いの方はいらっしゃいませんか」
「知ってる人、ですか……」
「ええ。出来れば期間限定でもいいので、物理攻撃に強い人が一人いれば、もう少し森の奥まで討伐範囲を広げていただけるのではないかと……すみません新人さんに勝手を言いまして……」
「いえ、この状況じゃ仕方ないですもんね。そうですね……いないことはないですけど今この町にいるかどうか」
「よろしければ、ご伝言を承ります。その方のお名前を聞かせてだいても?」
積極的に話を進めてくれるエドさん。
確かに、これからもずっとリノと二人だけのパーティーというわけにはいかないし、ギルドの思惑に乗る形にはなるけど、私達にとって不利な提案って訳でもない。いいきっかけなのかも。
と言うことをまたまたリノと話し合い、快諾して貰えたので提案に乗る事にした。
名前を告げて、メッセージを預ける。
「無理を言ってすみません。迷いの魔樹を幻術に掛からず、安全に討伐出来る冒険者は少ないものでつい……」
「いえ、こちらこそいい機会でしたから」
森の浅い部分にある迷いの魔樹は、順調に討伐出来てたと思っていたので、被害が出ていると聞いて私もショックだったし、パーティーの実力さえ上がればもっと協力できる。
とりあえずは、外周付近で見つけ次第、討伐することを約束して冒険者ギルドを出た。
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