第56話 魔力感知と身体強化



 講師のボルボスさんから参加証明の引換券を受け取って、この日の「スライム講習会」は無事に終了した。


 最後にギルドの受付でこの引換券を提出し、スライム講習会の参加料50シクルと昇級ポイント10点を受け取る。

 それに加えて、講習会で自分が討伐したスライム素材をそのまま自分のものにしていいんだから本当お得だよね。参加してよかった。


 これで合計94ポイント貯まり、九級昇級の為の100ポイントまであと6ポイントになった。


 


「じゃあリノ、明日からよろしくね」


「はい、ようやく一緒にパーティー組めますもんねっ。こちらこそよろしくです!」



「スライム講習会」が終わってすぐ、リノは念願だった武器を手に入れた。


 ギルドを出て一番に、鍛冶屋まで引っ張っていったのは正確だったよね!


 でなきゃ、美味しそうな屋台の匂いに誘惑されまくっているリノが、武器を手に入れる前に、また食べ物に散財して、すっからかんになってたかもしれない……。


 講習会の参加料を受け取ったのにプラスして、スライムの素材を高額買取して貰えた事もあり、一時的にまとまった金額が手元にあったので、武器を買う事が出来たんだ。 中古品で初心者用の一番安いやつだけどね。


 本当に最低限だけど装備を揃えられて良かったぁ。これで明日から一緒に冒険できるね。




 いつのまにか、ちゃっかり両手に串焼き肉を持っているリノと、狩場の相談をする。


「せっかく学んだことだし、スライムの狩りに行く? 安全だし稼ぎもいいし……」


「スライムもいいんですけど競争率、激しそうじゃないですか? それに食べられませんし。お腹すいちゃうんで、出来れば北の森でお願いします! 前にローザが話してくれた、果樹がいっぱいあるところは駄目でしょうか?」


 う~ん、この間から大分魔物や魔樹を間引いているから、リノを連れていってもギリギリ大丈夫、か? 短時間の滞在にすればいいかな。


「あ、そう? じゃあそっちにしようか」


「はいっ、お願いしますっ。私、お肉も好きですけど、甘いものも大好きなんですよね。そこに行って、お腹いっぱい思いっきり食べたいです。もう、今から楽しみすぎます!」


 ………………。


 ――食べ放題のお店に行く話してたんだっけ、これ?


「……一応、メインは依頼をしに行く事だからね?」


「うふふっ、もう、分かってますよぉ。じゅるりっ」


 ……全然説得力がないんだけど大丈夫かな!? 


「今日は魔法の練習は無してゆっくり休んで。北の森は危険だし、明日に備えよう、ね?」


「はいっ、分かりました! あとほんのちょっとだけ食べたら、私も帰って準備しますね!」


 今度は、甘草を練り込んだお菓子を袋一杯買い込んで幸せそうにモグモグしながら、うんうんと頷いていた。


「ま、まぁ、程々にね?」


 一抹の不安を残しながらも、明日は私の泊まっている宿で待ち合わせをしてから、北の森に向かうことを約束して、その日は別れた。




 ◇ ◇ ◇




 夕食後の時間を利用して、さっそく今日借りてきた基本魔法教本を読むことにした。


 基本魔法教本を読み解いて訓練すると取れる、『魔力感知』『魔力操作』『魔力強化』『身体強化』の四つのスキル。


 自力でマスターした『魔力操作』や、スキルポイントで取った『魔力強化』などすでに獲得済のスキルもあったけど、効率的な魔力操作の仕方や魔力上限値の増やし方など様々なことが書いてあり、興味深く読んでいく。



 この世界の生き物は全て、四属性魔法の素質を持って生まれるが魔力総量が極僅かなものが大半で、その人の魔力値を上回る魔法は覚えることはできない。

 何故なら、生物であれば生命維持の為に血液と同じように体内魔力も使われるため、スキルとして覚えられるほどの魔力が残らないかららしい。


 だが、基本魔法の地道な訓練を続けることで、個人差や種族差はあれどそれを覆す事が出来るという……。


 体内魔力を空っぽになるまで操作して使い切る。それを繰り返すことで、魔力総量を少しずつ増やしていけるんだとか。


 ただし、魔力は生命維持に支障をきたす程、使いきることはできないようになっている。

 枯渇寸前で気絶などする前に、自然と使えない状態になるんだって。限界が来るとどうなるのかが、きちんと書いてあって安心した。


 いままではそこら辺の知識がなくて分からなかったので、怖くて無意識に少しの余力を残して使っていたんだと思う。

 だけどこれを読んで、ギリギリまで使いきっても大丈夫だと分かった。今後は毎日、寝る前に必ずやっていこう。




『魔力操作』をしっかり練習すればするほど、『魔力強化』のレベルが上がるって言うのが確認出来たので、次は『魔力感知』について……。


『魔力感知』は、魔力の核や魔力量を感じとれるスキル。


 この世界の動植物及び魔物は全て魔力を持っており、多種多様な魔力を感知する経験を積むほど、習得が早まりレベルもアップするらしい。


 私が魔物や魔樹の『魔力感知』がほぼ出来るようになったと思ってからも、スキルとして取れなかったのはこれが原因だったみたい。シルエラさんにも今日、指摘されたんだよね。


 確かに魔物以外は積極的に感知をやってなかったし、特に人族はトラブルが怖くて避けまくっていた。それが駄目だったんだ。感知するとか考えた事なかったもんね。




 なので今日の午後は、町を歩いている人達の魔力をこっそり感知してみたり、「スライム講習会」の時にも、人や魔物以外にも、動植物を魔力感知し続けていた。


 そうやって鍛えた甲斐があって、気がついたら取れてたんだ、『魔力感知Lv1』が……スライム狩りの前までにね!


 それまでも魔物のは感知出来てたんだから、すぐスキルとして取れる下地があったんだと思うけど。


 魔物の中でも弱く魔力量が微弱なスライムもこれで弱点が分かり、一撃で倒せた。素材の損傷も少なくきれいだったのでいい値で売れたし、一石二鳥だったよ!


 それに、初めて人を魔力感知したけど、何かみんな、見られてるって気付かないみたい。

 レベル差で気づくとかあるのかもしれないって思ってたけど、観察してても今のところは大丈夫そう。


 なので、これからもこっそり感知させてもらってレベルを上げていこうと思った。




『身体強化』については、他の三つのスキルがすでに取れている事と、魔法書があるので迷走しなくてすんだ。

 これを覚えると安全性が増すから、早く覚えたかったんだよね。



 地道な訓練と、より明確な想像力で強まるって書いてある。


『魔法操作』で全身に魔力を巡回させ、使用者の身体能力を引き上げるんだけど、元の肉体の性能が強さを左右するらしい。

 その為、効率的なレベル上には、ただ身体強化の魔法だけを使い続けるのではなく、体も鍛える必要があるみたい。


 自らの身体能力を伸ばす努力をすればするほど、それに魔力が掛け合わさって、能力が何倍にも引き上がるんだとか。同じレベルでも、力やスピードが上回る結果になるらしい。


 じゃあ、筋肉が付きやすい種族の方がよりお得だって事だよね。エルフより人族の方が有利だって事か。エルフは中々筋肉がつかないらしいから……地道に頑張ろう。


 それでも練習している内に、サイドテーブルくらいなら軽々と持ち上がるようになったし、頑張ればベットも数秒だけ持てた。今の身体能力でこれって……やっぱり『身体強化』はすごいよっ。



 部分強化も可能で、その場合は全身ではなく強化したい場所に魔力を集中させ、イマジネーションする事で出来るらしい。これも試してみた。


 指先だけを『身体強化』して食べ終わったウルルの種を摘まんでみたら……すごいっ、一瞬で粉々になった。


 部屋の中で訓練しているので出来る事は限られるけど、今度は小石を潰せるかやってみたいなぁ。明日、森に行った時にでも拾って来よう。



 というわけで特に問題もなく、一時間ほどであっさり『身体強化Lv1』が取れました! よかった。 




 で、現時点での私のステータスは、こうなった。



 種族 エルフ


 名前 ローザ


 年齢 16才


 武術スキル


 魔法スキル 『火魔法Lv2』『水魔法Lv1』


       『聖魔法Lv2』『支援魔法Lv1』


       『風魔法Lv1』←new!


 身体スキル 『魔力強化Lv2』『隠密Lv1』『俊足Lv1』


       『精神耐性Lv1』『幸運Lv1』


       『暗視Lv1』『魔力操作Lv2』


       『味覚強化Lv1』『嗅覚強化Lv1』『視覚強化Lv1』


       『魔力感知Lv1』←new! 『身体強化Lv1』←new!



 技能スキル 『鑑定Lv1』『索敵Lv1』『採取Lv1』


       『マップ作成Lv1』『料理Lv1』



 スキル、結構増えたねぇ。


 こうやって少しずつレベルアップしていくのを『鑑定』で確認出来るのは、やっぱり楽しい。


 もっと経験値を増やして、バンバン強くなって行きたいな――。





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