第48話 移ろい花
酸っぱいけど美味しい、ダイダイの実を手に入れようと進んでいたら……。
思いがけず「移ろい花」を見つけたよっ。わあっ、大きくって華やかな花。
こんなところにあるなんて気づかなかった……この近くは結構通っていたんだけどなぁ。
ハイビスカスのような一日花をたくさん咲かせていて、とってもきれいだ。危険な森の中にいるってことを忘れてしまいそう……。
鮮やかなピンク色だからよく見えたのかも。見落とさずにすんでよかった……。
これ、花だけど食べれるんだよね……エディブルフラワーって言うんだっけ?
【 移ろい花
効能:鎮静作用
可食:生食可
ドライにすると香りの良い花茶になる
採取:花の色が一日で白から黒へと移ろいゆくが、
午前中のピンク色の花を採る 】
宿の夕食に出てきたので女将さんから少し教えてもらっているけど、私の『鑑定』スキルでもこうなってる。
朝咲いて夕方にはしぼんで落ちてしまう儚い花。
早朝は白く、その後ピンクになり、昼頃には赤になって、夕方にかけて茶色から黒色へと変化する。最後はポトリと落ちちゃうらしい。
午前中のピンク色の花を採るのが一番いいみたいで、偶然だけど時間的にはぴったりだった。
ほんのりと甘みがあって、食感もレタスみたいでサラダ感覚で食べれたんだよね。
もう少しすると赤色になり、時間と共に段々と渋味が増してきて味が落ちるんだとか。
この世界の野菜はお肉よりお高い。貴重な生野菜代わりになるから、この花には採取にしてはいい値が付く。
ドライにすれば香りの良い花茶になるって『鑑定』さんにも出てるし、さっそく摘んでいこう。
移ろい花の採取方法は、いつもの採取みたいに変な条件も付いてなかったから簡単に採れた。
これはきっと摘むタイミングが短くて難しいからなのかもね。
少し花弁が痛みやすいので、コップを重ねるみたいにふんわりと花を重ねてから袋に収納していく。潰れないよう、背負子の一番上へ置いて運ぶことにする。
――結構いっぱい採れたねぇ。
これも今の季節限定の採取依頼だったから、場所を覚えておいてまた来ようと思う。
森を抜け、ダイダイの実をいくつか採ってから街道に出た。
薄暗い森の中から、見晴らしの良い開けた場所に出るとホッとする。日差しが暖かくて気持ちいい。
食材が色々と手に入ったので、早速調理することにした。
まずはウォークバードの下処理、羽を毟らないと。お湯に一分ぐらいつけといた方がやりやすいんだけど、あいにくお鍋がない。
と言うか、そもそも調理器具自体が全然ない。し、しまったですね。すっかり忘れてました。
仕方がないので、上手くいくかどうか分からないけど魔法でやってみる事にする。
水作成で水玉を出し、火魔法を使ってそれを温めていく。おおっ、初めてやってみたけどちゃんと出来てるっ。
温水になったら、その水玉の中にウォークバードを突っ込んで、一分ぐらい放置するんだけど……。
なんかこれ、洗濯機みたいに中の温水をぐるぐる回せないのかなーと思ってイメージしてみたら、ちょっとずつ水が動きだした!
面白くなってぐるんぐるんやってたら、高速で回るようになったけど……やり過ぎちゃったっ。もう一分過ぎてる!
慌てて取り出し水を出して冷やしながら、羽をむしっていく。よかった、ちゃんと外れるねっ。取り残した産毛は火魔法で焼いておいた。
最後に万能ナイフを使って解体し、内臓は食中毒が怖いので穴を掘って埋めた。
これでお肉の下処理は終了。
そういえば、魔法のレベルはそのままだけど、火魔法と水魔法をこうやって複合させて、色々出来る事が増えてきたんだ。
忘れていた生活魔法のことをリノに聞いてから、暇を見つけては実験を繰り返した結果なんだけど。
生活魔法に、どんな種類のものがあるか知らないので、想像力を頼りにあったら生活するのに便利だなぁと私が思ったものから順にね。
初めて温度調節してお湯や冷水が出せるようになった時はうれしかったなぁ。
なんか想像力を働かせたらできたんだけど、このまま頑張ればいずれは氷とかも出せるようになるかもしれない。
それに人の体は半分以上が水分で出来ていると言うから、暖房や冷房がわりに体温調節とかの便利魔法も出来そうじゃないですか? 夢が広がるよね!
魔法ってイメージがとっても大事なんだなぁって思ったのでした。
下処理が終わったウォークバードの肉を食べやすい大きさに切り分け、木の枝を削って作った串にさしていく。
下味をつけて、準備しておいた焚き火にかざして焼いていくんだけど、中まで火が通るのには時間がかかりそうだなぁ。
肉が焼けるまで、虹色茸を同じように串刺しにして軽く炙って先に食べることにしますか。
生食でも大丈夫な茸だから、ほんの少し焼き色が付けばいいよねっ。
摘んできた香草を使い、初めて作った香辛料っぽいもので味付けしてみたんだけど……。
――さてさて、お味の方はどうなっているかな?
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