第47話 迷いの魔樹⑤
迷いの魔樹を二体、倒しただけなので時間はまだ早いけど、一旦、MPを回復させる為に休憩することに……。
そこで、安全な街道沿いへと移動を開始した。
途中、薬草や茸を採取して行きながら考える。
――なぜ今回は一撃で迷いの魔樹を倒せたのか?
魔法の威力もあるけどそれだけじゃない。たぶんだけど、魔石を造り出す核である、魔物の心臓に直撃したからなんじゃないかな……。
大抵の魔物は人で言うと心臓部分にあたる核の近くに魔石があるので、今回はその両方に当たったのかもしれない……思いの外、一撃が大きかったからねっ。
幹の真ん中にあるのは分かっていて、いつもそこを狙っているけど、成木は結構大きくなるので正確な場所を中々見つけられないでいる。
――魔力感知ができればいいんだけどなあ。
今までの戦闘では、一度攻撃して擬態が解けると弱点である洞のような顔が浮かび上がってくるので、それを待って止めを差してたけど、魔力感知で正確な場所が分かれば常に一撃で倒せる。魔力消費が少なくなって安全だしスキルとして覚えたい。
魔力の一番濃く感じる所を探せばいいのかなと考えてやってるんだけど、これがなかなか難しいんだ。
危険な森の中ではゆっくりと気配とか探っていられないし。
でも魔力の節約と安全に戦闘するためにも、次からはその点を特に意識してやってみよう!
う~ん……茸はもうこれぐらいでいいかな? 色々と考えている間に結構集まったし。
今採っていたのは「虹色茸」といって、虹色の樹が生えている森でよく繁殖しているみたいなんだよね。
――ちなみに「虹色茸」っていうのは……。
【
効能:滋養強壮作用
可食:生食可能だが焼いたほうが美味しい
採取:一つが三~四cm程の大きさ
虹色の樹の周辺に群生し年中採取可能
白色から桃色、水色、檸檬色、若草色、藤色の
五色に色づくのでそれを採取する
雨の後は白い茸のほぼ全部に色が付く 】
と言うもので、色彩は七色ではなく五色のようだけど、虹色の樹の周辺に群生するためこの名が付いたみたい。
見つけやすいけど特別に美味という訳でもなく買取価格も低いから、冒険者が積極的に採取しない茸なんだとか。
生食が可能で滋養強壮作用があるので、見つけたらその場で少し食べるくらい。
でもこの茸は常設依頼になっていて、彩りがきれいなので飲食店でよく使われるみたいだよ。確かに、インスタ映えしそうだもんね……って、ここ異世界だった……駄目じゃん。
とにかく、受注はあっても中々納品されないんですと、エドさんが採取して欲しそうにしながら教えてくれたんだよね。
この巨木群には虹色の樹が群生しているのでよく採れるから、期待されているみたい。
なので、情報料がわりに少し多目に、袋一つ分くらいを採取しておいた。
虹色茸を収穫後、少し行った所で地面を歩く一羽の鳥に出くわした。
あっ、これってウォークバード?
『鑑定』にそう出てる。何かそのまんまのネーミングデスネェ……分かりやすくていいけどさ。
……動いているのは初めて見た。
魔物と違って野生動物だからか、色合いが地味だ。茶色い羽根で、すっかり周囲に溶け込んでるね。夢中で地面をつっついている。どうやらお食事中らしい。
せっかくだし狩ってみようかな。
警戒心が強く、人の気配を感じたらさっさと逃げていくみたいなので、『隠密』を使っていつも以上にこっそりと射程距離内へと近づいていく。
この遠距離からだと、水魔法で攻撃した方がいいか。
的がちっちゃいから集中して、よく狙って……。
『
放たれた魔法がバシュっと胴体を貫く。
おおっ、やったねっ。成功したよ。ウォークバードを一撃で倒すことができた。
落ち着いてやれれば、結構狩れるようになったよね、私。
報酬は魔物の討伐よりずっと安いから、これは自分用にしよう。
魔物と違って野生動物は血抜きが必要だから、嫌だけどすぐやらなきゃいけない。
万能ナイフで首を切り落として逆さにし、念のため足の付け根にも深めにナイフを入れ、短時間で抜きやすくしておく。ううっ、グロい。こっちはまだ慣れないよ。
でもせっかくここまで処理したんだし、休憩時間に調理して早めのお昼にしようかな。たくさん動いたからお腹も空いてきちゃったし。
そうなると、よりおいしくいただくためにも香草が欲しいなぁ。塩はあるから、なにかこう、アクセントになるようなものがね?
後はデザート用の果物なんかも、あったら採っておきたい。
確かこの辺りに一本、果樹があったはず……『マップ作成』で確認してみると、もうすぐ森から出るというような場所にやっぱりあった。ダイダイの実という、オレンジのような柑橘類の果物が。
酸っぱいんだけど、食後に食べると口の中がさっぱりするから好きなんだ。
うん、近いし採りに行こう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます