第35話 再び、虹色の樹へ



 ……って思ったけど、もう一つ大切なことがあったよ!


  それは逃げ足を鍛えること!


 最後に必要なのはやっぱりこれでしょ。


 命大事に、安全第一に冒険するためにも、危なくなったら即逃げなきゃっ。


 取っててよかった『俊足』スキル! 筋力、体力、持久力に劣るエルフには伸びにくいスキルだから、長期戦を覚悟して、 これも地道にコツコツと育てていこう。


 でも地道なトレーニングは苦手……実践形式の方が私の性に合ってるから、その代わりとして毎日の北の森までのハーフマラソンを続けていこうと思います!






 そうこう考えているうちに今日の目的地へ着く。


 昨日行った巨木群の場所より少し手前になるけど、今回はここから森の中に入っていく事にする。


 森の奥へは入らずに外周付近を通ってマッピングしながら、最終的に虹色の樹まで行くんだ。


『マップ作成』があるので迷わないし、そこまでの道をパーソナルレベルを上げるの為、魔物を討伐しながら進もうと思ってる。




 ここら辺はギルドで聞いていた通り、冒険者があまり来ない事もあって、見るからに荒れ放題というか……。

 倒木が道を塞いでいたり、草が生え放題になって藪も多いし見通しも、足場も悪い。


『索敵』スキルがなければ何か潜んでるんじゃないかと気になって、怖くて真っ直ぐ進めなかったかもしれない。


 昨日、東の草原で確認したところ、何もないところでの『索敵』の捜索範囲は少し広がっていた気がしたんだけどなぁ。あれは遮断物が無かった場所だったからなのか……。

 森の中だと100m以内が限界みたいだから、慎重に進まないと。




 しかしこうやって改めて魔物を討伐しようと探していると、面白いようにすぐ『索敵』に引っかかるな。


 何回も遭遇した魔物は目視しなくてもスキルからの気配だけで特定できるようになるから、これは……。



 ――ポイズンラットだ。



 弱いけどすぐ増えるから即殲滅しなきゃいけない魔物の内の一つで、森の浅い部分に多く生息している弱い毒を持つ小型魔物。


 お手頃な獲物だし、まず手始めにこの群れから討伐して行きますか!



 

 周りは燃えやすいものでいっぱいなので、火魔法は使えない。


 でも私には、聖魔法と水魔法のコンボがある……これで倒していこう!



 まずは目潰し!



聖火ホーリーヒート』!!



 パアァァッと、まばゆい光が頭上で弾けた瞬間。


 直接浴びる格好になったポイズンラットがふらついて、突進が止まるっ。


 やはり魔物には聖魔法の『聖火』がよく効く。


 よしっ、今のうちに続けて……。



水矢ウォーターアロー』!!



 何度も放ち、群れを殲滅する。



『聖火』の光で足止めして、怯んだ隙に『水弾』で止めを刺すこの方法は、ホーンラビットの毛皮を傷つけず倒すために使っていたんだけど。


 思ったより『聖火』の効果が高くて、六体の群れ程度なら余裕で倒せる時間を稼げた。

 割と広範囲を覆う光だし、単体のホーンラビットより、群れを成す魔物により有効なのかもね。

 

 サクサクと手際良く順調に仕留められて良かった。色んな種類の魔法が使えて、経験値的にもおいしかったし。




 じゃあ次もドンドンと行ってみよう!


 また同じ反応のが近くに来てるからね、ポイズンラットの群れだねっ。


 どんだけいるのポイズンラット!?


 ほんと一匹見つけたら三十匹はいるってやつだよっ。地球にいるみんなの嫌われ者、例の黒光りするやつと同じだ、これっ。経験値稼ぎになるから頑張るけれども!




 それから虹色の樹へ辿り着くまでに四度ほど戦闘したが、魔力不足に陥ることもなく、何も問題なく倒せた。


 ――全部ポイズンラットの群れだったけどね!







 次々と順調に討伐を続けていると、今日の目的地……虹色の樹へ着いた。


 昨日、邪魔になる草や枝なんかを最低限払って道筋をつくっておいたので、近付くほど進みやすかったよ。




 相変わらずの巨木に圧倒される。


 今日は昨日よりもさらに高く、樹の天辺まで登る予定。途方もない高さだけど、昨日の経験からして行けるはず。


 ――が、頑張るぞ――!


 僅かな樹の節を足掛かりに一番下の枝まで登り、そこに採取に必要ない荷物を置いて身軽になる。


 昨日そのままにしといたロープをつたいながら、するすると登り、もう一本ロープを出して更に上へと登って行くと、この高さにはさすがに風が少し強めに吹いていた。


 主枝も側枝も多いし、バランスの取り方は本能で分かるので採取に支障なさそう。

 怖くは無いけどよく揺れるので、念のため命綱はだけはつけとこう。



 ――吹き抜ける風が、火照った体にすっごく気持ちいい!


 この高さからだと昨日は見えなかった、ボトルゴードの町と、最初に立ち寄ったジニアの村の両方がよく見えるね。絶景です!


 じゃあお仕事、始めますか。




 今日もいいお天気なので、葉っぱはキラキラしてます……そんなに張り切って煌めかなくてもいいのに。


 『鑑定』して、状態が「特上」の葉がないか探しているんだけど……どれだろ?


 ――あ、あった! 


 見た目では判断つかないけど、これが「特上」だって『鑑定』さんがいってる気がする、多分。


 やっぱりよく陽が当たる、この天辺付近は多いみたいだね。


 一枚ずつ確かめていくんだけど、ほとんど移動せず次々と採れるし。




 キラキラ攻撃にも、来るとわかっていたら怯まずにいられる。


 昨日と同じように聖魔法の『治療』で治しているし、ちょっとずつ慣れてきたよ。


『採取』スキルもレベルアップはしないけど、毎日使っているし、段々と採るスピードが上がっているから経験値は順調に貯まっていっていると思いたい。




 虹色の葉の七種類の葉色をそれぞれ百枚ずつ、合計七百枚集めて一セットで、更に「上」か「特上」だけが、昇級ポイントの3点を貰えるから、今日はそれを目指してる。


 厳しい条件だけど、この調子でいけば何とか数を集められそう。


 昨日は、二種類の葉色を集めただけだったので、適当に二つの袋に分けて突っ込んでいっていたけど、それだと嵩張っちゃってたんだ。


 なので今日は五十枚ずつを、紐がわりの長めの草で束ねてから、袋にしまっていってみると、随分とコンパクトにまとまった。

 ちょっと時間はかかるけどこれはいいね、たくさん収納できる。今度からこうしよう。




 ――ふうぅぅっ、終わったぁっ。


 チマチマと面倒臭くて気の遠くなるような作業だったけど、集め終わったよ。


 これで採取依頼を一つこなせたので、一旦、保存食とお水を飲んで一息つく事に。

 いつものドライフルーツと魔法で出したお水だけの質素なものだけど、大きな樹の上で食べると美味しく感じるなぁ。


 丁度、支援魔法が切れていたので、『HP回復』と『MP回復』を掛け直し、体調も万全にしてっと。


 休憩の後は町へ戻る道すがら、もう一度魔物討伐をするつもりだからね。


 ステップアップのため……頑張るぞぉっ!





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