第24話 北の森へ
◇ ◇ ◇
という訳で翌朝、北の森へ採取に向かう。
丁度、開門時間の六時に間に合うように宿屋を出たはずだったんだけど、初めての道に少し戸惑っている内に時間が経っていたらしい。既に北門は開いていて、門前は人通りもなく閑散としていた。
門番さんによると開門と同時にもう、第一陣は出ていったそうだ。皆、早すぎでは?
朝夕の開閉直後以外はずっとこんな感じが続くらしく、この門は暇なんだと笑って教えてくれた。冒険者もあまり出入りしないんだとか。
込み合う時間帯を避けたかったので、私にとっては都合がいいかも。明日からもこの時間に来よう。
それから身分証の提示については、町から出るときは不要で入る時だけ見せればいいとの事なので、帰ってきた時にギルド証を出すのを忘れないようにしないとね。
――森が近い。
ここは辺境で、森を切り開いて造った町なんだから当然なんだけど、北門から出るとすぐ広大な森が広がっている。緑が濃いなぁ、朝日に照らされて眩しい。
今日の目的地までは10km以上あるので、体力を温存するために街道を軽く流して走っていき、大体、一時間程で到着した。時計が無いから正確には分からないけど、多分それくらい。
昨日はまったく気付かなかったけど、教えて貰ってから見ると遠くからでも目印となる巨木群がはっきり分かったので、ここまでは迷うことなく来れた。
今度は街道からそれて、森の中へと入っていく。
見通しが悪く危険なので、『索敵』や『マップ作成』など、色々なスキルを平行して使う。
こういうのも毎日しているので、大分慣れてきたと思う。森に溶け込むようにと注意しながら、忍び足で慎重に進んでいく。
一応、採取中心にやっていく予定だけど、絶対、魔物と戦闘をしなくちゃいけない場面もでてくるから気を付けないと。
私の『索敵』範囲は100mしかないので、今も端の方にチョロチョロ反応がある。なるべく戦闘はせずに避けていく予定なんだけど、中には避けられないのも出てくる。
――来た。
また『索敵』に魔物が引っ掛かった。
この感じはゴブリン? 反応は三つ。進行方向からまっすぐこちらに向かって来る。
今なら逃げる事も可能だけど、魔物を避け続けている内に目的地から段々離れてきてしまっている。『マップ作成』があるから迷わないだろうけど、これ以上大回りになるのは不味い。敵の数が少ないのでここは狩ってしまおう。
近くの木に登りじっと身を潜める。
今回は、あれから威力と精度が少しだけ増した火魔法を、速度を意識しながら連続して使ってみる。
『
よしっ、全部当たった!
命中率も上がってる気がする。一度も外さずに三体仕留めることができたし。
魔力の巡りが心なしかスムーズな気がするし、昨日取った『魔力操作』がさっそくいい仕事をしてくれたんじゃないかな!
さて、ゴブリンから取れるのは魔石だけだから、残りはどうしようかなこれ。
今までは常に移動してたから、特に後始末せずほおっておいたけど、 このままにしとくと不味いよね。
これからはこの場所に採取に通う事になるんだし、血の匂いに引き寄せられて魔物が増えても困るし。
魔法で燃やしてもいいけど、まだ来たばかりで何が起こるかわからないから魔力は温存しておきたい。総魔力量も限界値も分かんないし無理は出来ない。土を掘って埋めるのにも時間と体力を使うしなぁ。
しょうがない、今回だけはアンデッド化しないように聖魔法で『浄化』だけして、帰り路は迂回して行くことにしよう。
あれからまた、一度だけポイズンラットの群れと戦闘になったけど、それも落ち着いて切り抜ける事が出来た。
昨日、安全な宿屋の中で、これからのことを考える時間をつくれた事もあって、少し魔物を倒す覚悟もできてきたかも。
新たにスキルが取れるって事が分かって実際に取れてから、気持ちの余裕ができて、色々といい作用を及ぼしているのかもしれない。
ここら辺の森までは冒険者があんまり来ないとエドさんが言っていた通り、魔物討伐がされていないのか思っていたより出くわす回数が多い。
野生動物の種類も多くて、こちらはすぐ逃げていくからいいんだけど、ただそれを食べる魔物も割と森の浅い部分にまで出て来ているみたいで、全然安心できない。
今のところ『索敵』に引っかかるのは弱い魔物ばかりだし、『隠密』を使えば避けられるものもあるからまだ安心だけど。
ここ、私が強ければ獲物に困らない、いい狩り場なんだろうなあ。
でもまだ五日目なんだし、努力すれば報われる世界って例の白い部屋の人も言ってたし、昨日みたいに出来ることからコツコツと頑張っていくしかないよね。
――この世界でも、楽に強くはなる方法はないんだから。
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