第22話 異世界の料理、とは……
『俊足』スキルとかその他色々のスキルのお陰だって分かってますけどっ……でもすごい身体能力でしょ?
チート無いとか言っちゃってすみません。私の元のスペックは記憶がなくて不明だけど、充分チートっぽいですこれ!
まあ、この世界の人と比べるとどうなのかは、全く分からなくてちょっと怖いけどね。生まれたときから魔物のいる環境で育つんだから、成長具合が半端ないんじゃないかってね。
――確か、町の門が開くのは午前六時から午後六時までの間だったはず。
アクシデントがない限り時間的な余裕はあると思うけど、まずは様子をみるつもりで無理せず慎重に行こう。命大事に、だからね。
朝一で行ってお目当てものを順調に探し出せれば、上手くすると昼頃に帰って来れるはず。計画通り行くといいなぁ。とりあえず頑張ってみよう。
じゃあそろそろ帰ろっかな。
今日はしっかり食べて早めに寝よう。久しぶりにベッドで安眠出来るんだし。
宿の食事、美味しいといいなあ。
◇ ◇ ◇
結論から言うと、女将さんの料理、めちゃくちゃ美味しかったです!
具沢山の肉入りスープとパンの実だけのシンプルなメニュー。
それが、はっきり言って今まで食べた中で一番のうまさだった!
食べたときには、ここに連泊出来るように頑張ろうって思えたぐらいで、久しぶりのまともな食事だったこともあって、じっくり味わう暇もなくあっという間に胃袋に消えていった。
ホロホロとろける大きなお肉はしっかり中まで味がついてて、噛めば噛むほど口いっぱいにジュワーっと旨味が広がる。
ゴロゴロと食べごたえのある大きさに切られた野菜も色鮮やかで美しく、目で見て楽しんで食べて満足して……。
何の調味料を使ってるのか、こってりとチーズクリームっぽい真っ白で濃厚なスープも、最後までしっかり飲み干した!
お腹いっぱいになってもう大満足です、おいしかった!!
これが『料理Lv3』の実力かって思ったね!
女将さん、『料理』スキル持ってるんだって。
料理人は一部の屋台を除き、だいたい皆持っているらしく別に珍しいスキルではないのだとか。
お店の看板にこの星マークがあればスキル持ちがいる証明になるんだと、三つ星マークを指して誇らしげに教えてくれた。
この、星マークの数とレベルの高さが同じ数らしく、この街で最高位の料理人は五つ星、レベル5の人なんだそう。
女将さん曰く、お高いけど天国が見れる味らしいので、頑張ってお金貯めていつか食べてみたいです!
いやはや、王道のメシマズ展開を危惧して『料理』スキル取ったけどあっという間に無駄スキルになってしまった……。
『解体』スキルとどっちにするかすごく迷ったんだよね、あの時。ちょっと残念!だけどおいしいものが毎日食べられるのはとっても幸せだからいいとしよう!
その料理上手な女将さんは夕食時に予約しておけば、宿泊客に昼食のお弁当を作ってくれるらしい。
今日のは、パンの実を茹でて潰してマッシュポテト風にしたやつを肉で巻いて、仕上げに葉っぱで包んだだけの簡単なものだったそうだけど、聞いてるだけで美味しそう。
お値段なんと銅貨2枚、とってもお安い! 200円ぐらいってことですよ!
けど、今の私には、ない……。そのちょっとも持ってないよ、無一文だよ……か、悲しい。
う、うううっ、明日こそは食べてやる!
さて、なんでこんな事をダラダラ喋っているかと言うとですね、あれなんですよ、とっても残念なお知らせがあるからなんですよ……。
先ほど大絶賛させて頂いた具だくさんの美味しいスープ。
あれ、メインの食材は、スモール・ワームという魔物だったんですよ……。
……昼間ギルドで聞いたでっかいイモムシの、たっぷり入ったスープ。
もう、た、食べっちゃった……おぇ。
嘘でしょ? 吐きそうなんですけど!
昆虫食とか本当勘弁して……いや厳密には魔物だから昆虫ではないかもだけどそういう問題じゃないよね!?
思わず口を押さえて涙ぐんでしまったのは許してほしい……。
「泣くほど懐かしかったのかい。故郷の味だもんね。そんなに泣いて。よし分かった。おばちゃんに任せときな! また作ってやるよ、何なら持ち込みしてくれてもいいから!」
これがエルフの郷土料理とか信じたくない~。エルフってこんなの食べてるの!? 一度、集落とか訪ねたかったけどもう行かない~。
「あんた冒険始めたばっかりなんだろ?だったらスモール・ワームの強制討伐依頼受けるときにさ、余分に採ってきてくれたら直接買い取ってまた作ってあげる!」
私が衝撃の真実を知って呆然としている間に、女将さんはなんかいい感じに勝手に勘違いしてくれていってる。いい人。
でも今はその勘違いがとっても辛いよおばちゃん……。
それから止める間もなくスモール・ワームの上手な素材の活かし方なんかを、内緒だよって言いながらこっそり教えてくれた。
熱を加えるとトロトロに溶けるらしくコクと旨味をひき出すには火加減が特に難しいらしい。つまりあのスープの正体って、と、溶け出したやつの肉体とか体液とか全部まるごとってわけで……おぇ。
生々しくてやっぱり泣きそうになった。
もういいよわかったよおばちゃん十分だよ、気持ちだけはとっても嬉しいよ……。
なんか訂正する気力もなくなって、もうひたすら曖昧に頷いておいた。
最後まで素材が何かは知らずにいたかったよ、切実に!
あんなに美味しかったのに、最高の一品だったのに、詐欺だ~!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます