第4話

魔法使いの手をひかれてやってきたのが、二階建ての住み心地そうな家だった。


幕末志士が扉を開けると、「ただいま戻った!」という声が聞こえていた。


「さぁ!入って!」


魔法使いが笑顔を浮かべてボクに言う。ボクは少しずつうなづいた。

それにしても、この魔法使い。可愛い。

ボクはそんなことを思っていた。


ボクが扉を開けると、やはり過ごしやすそうなリビングがあった。


ただ、たくさんファイルが詰まった本棚に囲まれていたのがきになるところであったが。

幕末志士がソファにシゲルを座らせると、幕末志士は治療道具を手に持ち、シゲルの足を治療し始めた。


「やはり、応急処置がよくできているな。ありがとうな、客人…。

キミの名前は?」


幕末志士がボクに話しかける。

スチームパンク風の青年はさっさと階段に登ってしまった。


「村井…おさむです」


幕末志士は疑問に満ちた顔をしていた。

やはりいつも声が小さいからと、ボクは息を吸い込み始めた。


「ああ、おさむっていうのか」


その声は幕末志士や魔法使いより大きかった。

声の方向を向くと、シゲルがそこにいた。


初めて一発で声を聞いてもらえた。

ボクはそれだけでも心が温かくなるものがあった。


「あぁ…。おさむくんか。

オレは加州光弘という。よろしく頼む」


幕末志士…光弘さんは明るく微笑むと、またシゲルへの手当てへと戻った。


魔法使いはボクの手を取った。茶色いクリクリとした瞳が可愛らしい。


「えっと、おさむくんだね。

ボクはブラウニーだよ〜。よろしく! 」


魔法使い…ブラウニーくんはピョンピョンとはねる。

はねた分手が動き、痛いがどこか心地よかった。


足音が聞こえる。目を向けた先の階段からは、先ほどのスチームパンク風の青年が降りてきた。


「ああ!そいつはセカイ・オルゴ。

セカイ、そこのマスクはおさむっていう名前だ」


またシゲルの大きい声が響く。だけど、その声の大きさもなぜか心地よかった。


セカイさんの後ろにまた誰かの足音が聞こえた。

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シャーペンのヒーロー 夜雨N @yosameN

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