第23話
大柵の枠を握り唖然とする聖女と、堂々と防衛姿勢をしていたが、肩から力が抜けてしまっている騎士団長。
ブラックサーペントを倒したって聞いて驚き何かを話していると、唖然としていた態度からすっかり元通りになっていた。 多分、勇者パーティの冗談と思ったんだろうな。
その前に、目の前に倒れているユカリを助けなくては、あれは大事なこちら側の人間。
俺とペルセポネは、武器を構え勇者パーティを睨み対峙する。
大きな戦斧を軽々持ち上げているゴリマッチョ男戦士は、鼻を鳴らし興奮し、腰が揺れている。
「おい、こっちから行ってやろうかぁー!!」
「行っちゃっいまっしょ」
女戦士の言葉と共に、女魔法使いの手がこちらに向け火の玉が五弾噴出される。
「ファイアァァボール」
「なっんでぇ! 打っちゃ」
「えっ! えぇぇ」
ゴリマッチョ男戦士の叫ぶ声で女魔法使いのハスキーな声が更に高くなって響く。
「先制攻撃食らっちまったな」
「ハーデス、あのクソ殺るから」
「あぁ、だがその前にあの火だ」
俺とペルセポネは、飛んでくる火の玉を武器で打ち消すと勇者パーティの騒めきが起きるが、そのまま攻める。
「神官って回復魔法使えるのか?」
「出来るんじゃない、アイツは分からないけど」
「神官だけは、殺るな」
頷くペルセポネは、更に加速させゴリマッチョ男戦士を蹴りで吹っ飛ばし転がっている。
「マジかよ」と女戦士の声が入るが俺のハルバードの突刺を大盾で防ぐ振りをして受け流される。
「ブラックサーペント倒してもこの大盾、どんな物も貫かせない」
自慢げに語る女戦士は、ロングソードを向け俺に迫ると、女魔法使いのハスキーな声と共に隠されていた幼い顔と三つ編みの髪が見えた。
「ファイアボールゥゥ」
俺に向けて放たれる火の玉と迫ってくる女戦士。
火の玉を避けると、奴の剣がくるか……。
「バカっしょ!! アイツ」
「危なぁぃぃっ」
「えっ!!」
火の玉を身体で受ける俺、もちろんあんな火の玉如きで火傷やダメージなんて負うわけがない。
「この大盾が、ある限りぃっ貫かぁっ」
「盾がぁぁ割れたァァ」
両手を頬にし驚く女魔法使いの声と女戦士の持つ大盾が、砕け散る音が、同時に発せられる。
そして、そのまま魔法使いの驚く声から悲鳴へと変わる。
「ぐぁっ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
ハルバードの斧の刃が女戦士の横腹に刺さりそのまま、鮮血が噴き出しながらも俺は、振り切る。
仰向けに倒れ口から血を吹き出し、内臓物も漏れ出す女戦士は、微かな声で助けを呼んでいる。
駆けつける女魔法使い。
「いやァァァァァァァ!!」
「がっ、は!」
「ちょっ! くそ男早く来い。 早く回復させろっ」
ハスキーな声で男神官を呼ぶ女魔法使いだが、男神官が女戦士の状態を見て手で口を塞ぐ。
「オエッ!」
「何! それっ。 仲間でしょ。 早く助けろ」
「な……かまじゃない。 お前、いい気味だ」
「あぁ? 助けろ」
男神官の首根っこ捕まえ引っ張って、女戦士の所に連れてくる女魔法使いは、座り込んで女戦士の手を取ると同時に俺のハルバードの先を、女戦士の喉に突き刺す。
女戦士は、目を大きく見開くと口から血を吹き出しそのまま亡くなる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「今は戦闘なんだ。 死を覚悟しろ!! そしてもう、コイツは死ぬ運命だ」
「なっ、何が死ぬ運命だ! 助かったかっ! はっ!!」
激しく睨みながら涙目の女魔法使いは、俺に言葉を向けてたが、男神官の振り下ろした鉄製のメイスが後頭部にめり込み、そのまま女戦士の漏れ出した腸に、顔を埋め倒れて、起き上がって来ない。
「今までの、恨みぃ」
「同じ勇者パーティなんだろ? これ大丈夫か?」
「この二人とあの大男には神罰が掛けられたんです」
男神官は、膝を地面に下ろし祈りを捧げる。
「ユカリを回復出来るか?」
「ええ、回復出来ます」
「じゃぁ、やってくれ」
「はい」
男神官は、下ろした膝を上げユカリの元に行き、再び膝を下ろして背中の傷を見るが、一旦手で口を塞ぐが、両手をユカリの背中にかざしブツブツと呟くと傷口に光が灯る。
「俺のユカリちゃぁんにおめぇ何するぅぅぅ!!」
壁に転がっていたゴリマッチョ男戦士は、落とした戦斧を持ち上げ、怒鳴りながら男神官に迫ろうとする。
だが、その間にペルセポネは、高い所から見下ろすかのようにゴリマッチョ男戦士へ冷たい視線をする。
「なぁァんだァァ!! お前。 いっくらぁ美人でもなぁ、俺にはぁユカリちゃぁんと愛し合って」
「気持ち悪い」
「なっ。 そうかそうか、その華奢な体に強い剣技。 俺がユカリちゃぁんを取ったから妬いているのかぁ?」
厭らしく見つめ、ニタッと笑うゴリマッチョ男戦士の顔を見たペルセポネは、余りにも気持ち悪い物を見たのか吐き気を催し、ゴリマッチョ男戦士から遠ざかる。
「良いんだぜ。 ユカリちゃぁんにあんた。 二人とも愛してやるぜぇ」
「気持ち悪いっ! 不愉快! 気持ち悪いっ! 反吐がでる。 てめぇ!! 鏡で自分を見た事あるのかっ!」
「城で自分の部屋で沢山みてるぞっ。 このっ!肉体美ぃぃ!!」
「……」
怒鳴り散らすペルセポネの言葉が、何も心に突き刺さらないゴリマッチョ男戦士は、戦斧を支えにポージングし筋肉を見せる。
「なんで、コイツ選んだ」
「それは。 この俺様に出会って惚れたからだろ。 これは運命さ」
「はぁっ」
頭を揺らしため息をつくペルセポネと、戦斧を床に突き刺し体を大の字にして、ペルセポネに叫ぶ。
「さぁ、何も恐れる事は無いっ。 俺の胸に飛び込んでおいで。マイハニーっ」
「……それじゃ行くわ」
――――躊躇う事もせず剣を握り、地面を蹴ってゴリマッチョ男戦士に接近するペルセポネは、笑顔だった。
「さぁ抱き締めてあげようぉ」
ゴリマッチョ男戦士の至近距離に顔を近づけ不気味な笑みをするペルセポネは、三、四歩ほど離れる。
「早く抱き締めて欲しかったのに。 離れてしまったわ」
「なんで、腕がぁぁ!! なぁいっ! 痛ァぁぁぎゃぁぁ」
ゴリマッチョ男戦士の両腕が斬り落とされ、体の左右から血が噴き出し辺りに血の池が出来上がっている。
「口も体臭も臭すぎ、見てて不愉快なのよ」
「きっ! 貴様ァ」
その言葉を言い終わったゴリマッチョ男戦士の胴体と首に亀裂が走った途端、細々と砕け散り血と肉片が床に散乱した。
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