第13話
朝日が上るが若干寒気を感じる俺とペルセポネはフード付きのローブを羽織り、ヒロックアクツ商事の幌馬車三台と客車一台の計四台と共に、王都ランドベルクの敷地内にいる。
緑色が綺麗に映えるこの園庭に、白い石畳がまっすぐ城へと続くが、俺たちが居る場所は街に面している城門も潜り、更に本城のある城の城門の間、薄茶の石畳の上だ。
そして、コベソとトンドは、王の所へ謁見しに行ってるが、ヒロックアクツの使用人数名が、荷物を積んだり確認していた。
「まだ?」
「まだも何も、待つしかないだろ」
「」明らかにペルセポネは、今の状況に飽きていると見えるし、護衛の依頼を受けてしまって、後悔していると思える。
「この客車、誰が乗るの? こんな豪華な」
所々装飾され四輪で大きい箱型の馬車だ。
側面には窓がありそこから中を除くと、対面向かい合って乗れるし、後部の扉が出入口のようだ。
その馬車だけ、使用人の動きを見ていると、念入りに掃除している。
「たぶん、勇者達だろうな」
「私たちはこの馬車なの?」
「だろ。 なんせ勇者様と冒険者の違いだ」
不貞腐れてそうなペルセポネだが、それよりも暇すぎて、空を眺めている。
「――――待たせた」
豪快な声をさせやってくるコベソとトンドが、やってくる。そして、トンドの後ろに数名武装をした人がいた。
先頭に一人黒髪で腰まで長く、スラッとした細身の女性に続き、夕陽と同じぐらい赤いパーマの掛かった髪型で少し装飾されている胸当て等軽装備した女性に、重装備と思っていたら焦げ茶色したテカテカの筋肉と、腰巻き篭手やすね当てをしたゴリマッチョの男が出てきて、この二人は戦士っぽい格好をしている。
その後に続いて、フォルクスのパーティにいた神官のライカと同じに見える程の格好をした男が一人と、如何にもとんがり帽子を深々と被ってはいるが長く真っ直ぐな青紫色した髪を靡かせ、黒いローブを纏い如何にも魔法使いっていう格好だが、この三人より断トツに背が低く幼い顔の女がいる。
これが勇者のパーティと思えるが、先頭にいた黒髪の女はコベソとトンドへ笑顔ながらで話をして好感の持てる人物だが、その黒髪の女以外残りの四人は、威圧的な態度で実に不快を覚える。
「あ、ありがとうございます」
「ユカリ殿、アレが我等が乗る馬車ですぞ」
「そうなの?」
「決まってるっしょ。 オレたち勇者のパーティなんだからさ」
アレが、鈴木ゆかり……、勇者ユカリか。
謙虚そうな声を出す黒髪の女勇者ユカリにゴリマッチョ男戦士が、横柄な態度で使用人を退け馬車を見つめる。
だが、ユカリはコベソに、正しいのか聞いていたら、次にコベソの肩を引いて退ける女戦士。
「ええ、そうですとも」
「あたりまっしょ。 ユカリ乗るよ」
「そうですとも、勇者のパーティなのだ、これぐらい当たり前ですぞ」
戦士二人と女魔法使いもそそくさと馬車へ乗り込み、それに続いてユカリと男神官乗る。
「何よ、あれ」
「アレが勇者パーティだ」
既に疲れ果てているコベソに、トンドも飲み物のんで腰を降ろしていた。
「後の四人あれはダメだ」
「勇者の恩恵で、舞い上がってるぞ」
コベソとトンドが、疲れが声に現れているが、俺は、その言葉に疑問を持ってしまった。
「まぁ、お二方、移動中に話しますよ。 あれに」
俺とペルセポネは、コベソが案内する幌馬車に乗り込むが、中は勇者パーティが乗っている馬車の内部と殆ど変わらずただ、装飾と窓が無く、屋根は板張りになっていた。
「これは」
「勇者パーティの勇者以外のヤツら、傲慢知己だからな。 中身なんて分からんもんさ」
コベソとトンドが、乗り込むと使用人一人入り扉を閉める。
コベソの合図で、四台の馬車はランドベルクの街の外へ走り出した。
だが、勇者パーティの出発に、誰も出てこないのは、国を挙げての出発では無いからだと言うことは、先日の話で分かっていた。
城塞都市ローフェンで一時休憩を取り、東へと舗装されている街道を、進む。
道中、コベソとトンドに色々質問をこの世界の事を聞いていたが、二人とも俺の質問に疑問を持たず応えてくれる。倉庫の一室でもだが、それが、当たり前というか懸念すら覚えなかったのを気付いたのは後の事だ。
「魔石は売れるのか?」
「ええ、殆ど冒険者ギルドで買い取ってますよ。 ウチでもですが、ハーデスさん冒険者なら冒険者ギルドで売るのが良いかな?」
「なんでだ?」
「ウチら商人としては、売れる物は買い取るけど売れない物は買い取っても二束三文。 冒険者ギルドは違ってギルド内の相場で変わるし、二束三文の物でも割高で買い取ってくれる」
「ウチらが高値つけてもギルドだと、安い時も有るからな〜」
トンドの説明を付け足そうとするコベソと、俺を睨みつけるペルセポネが、割ってはいる。
「ハーデス!魔石は売らないのっ」
「――――何だ急に」
「魔石は、宝石の様に綺麗なんだから」
「確かにダイヤモンド等の宝石類と同じ位の見た目だが、宝石と同じ希少価値は、まぁ有っても宝石では無いし、魔石を装飾する人や装飾品にする奴なんて居ない居ない」
「うん、そうだな。 魔物の破片を身につけるって事だからなぁ」
トンドの言葉を聞いて、隣で頷くコベソは、納得している模様。
「じゃぁ魔石って?」
「魔力が篭った石。 肉体に秘めている者は、その石に合った魔法が使え、取り出されたら魔力が有るから道具の材料に使われたりとかな」
「その石持ってたって、魔法は使えないのか」
「それは、分からん。 昔、使ってたとか古い書物とか載ってたの」
「うーん?」
「……」
悩んでいるコベソに、喉を指さして何か思い出しそうに苦しんでいるトンドの顔が、目を見開く。
「あれだ、女の勇者と魔王の恋の物語。 ラブストーリーだっけ?あれだな」
「あー、あれかぁ。 女勇者と魔王の戦いで、倒れた魔法使いの魔石を勇者が抜き取って、魔法使ったとかだっけか!」
ラブストーリーの内容に盛り上がっいる中年男性二人を見て俺は、そんなに気にしてないが、隣のペルセポネの顔、めっちゃ引いて顔が引きつっていた。
「あれは、捜索物だからな」
「魔石は、ヒロックアクツ商事でも使うからな。 珍しい物が合ったら鑑定するぞ」
魔石の他にも話をしたかったが、急用と言って使用人の人と話してたり、トンドとコベソ入れ替わりで寝てたりと、あまり会話が出来てなかった。
御者の男が、幌の中にいるコベソに声を掛ける。
「会頭、例の場所にそろそろ着きます」
「あぁ、ゆっくり近づいてくれ」
御者の後ろから前方を見渡す幌の中にいる四名。
そして、見える先には木々や草が生い茂っているのだが、黒い大岩に注意が行き、コベソが御者の肩を掴むと、馬車を停止させる。
ペルセポネが、無言のまま小走りに馬車から降りるのを俺も着いていく。
「あれだな」
「何かあったんですか?」
ペルセポネがニヤつき黒い大きな岩に目を奪われていたが、後ろから黒髪の女勇者であるユカリが、馬車から俺たちに近づくが、その後ろにゴリマッチョの男戦士と女戦士もやってきた。
「なんだ、なんだ? 魔物か?」
「それならウチらの出番っしょ」
と腰にあったポーチからゴリマッチョ男戦士は大きな両刃の戦斧を、女戦士は、刃渡りが長い剣ロングソードと胴体を隠す程の四角い盾を取り出し構えたが、二人とも黒い大きな岩を見た瞬間、この辺りを見回す。
「おい、あれ」
「あれ、ヘビっしょ」
一、二歩後退りすると、その後ろから来ていた男神官と女魔法使いに背中を叩くと、男神官の小鳥の囀りと思える程の声量で話し始める。
「俺たち、まだあれ手出せないな」
横で頷く女魔法使いだが、勇者ユカリと戦士二人は、聞こえてなさそうで間が開き頷いていはいるが、空返事の気がする。
「あれ、ブラックサーペント。 確かランクAの依頼だっけか? ヤバいな」
「あー、この国内であのレベルだろ。 山から降りてきたのか?」
コベソとトンドの目が微かに青く発光し、黒い大きな岩に見えるブラックサーペントを凝視している。
「で、レベルどうなの?」
「レベル22だな」
ペルセポネの問にコベソの返答を聞いたユカリは、再び俺たちに近づく。
「私、私達が倒します」
「そ、そうだぜ。 俺たち勇者パーティだ。お前ら冒険者の出る幕じゃねぇ!」
「私達がどれだけ強いか、見とけ冒険者っ」
「「……」」
先程とは違い目に力が入ってブラックサーペントを睨むユカリに続き、ゴリマッチョ男戦士と女戦士がヘラヘラと自前の武器を振りながらユカリの近づくが、男神官と女魔法使いは、何も言わずにょこひょこと向かってきた。
「ユカリ殿、あれ。 この前のヤツで」
「そうね。 あれ、倒す」
「あの時とは違うってとこ、見せるっしょ」
武器を構える突撃しようとした勇者御一行。そこに、割って入り足留めをするペルセポネは、納刀したまま剣を振り、砂埃を上げ、地面に一筋の線を書き込む。
そして、勇者パーティへ睨んだ。
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