第174話 甲斐性が大事という話

 第174話 甲斐性が大事という話



「ナニコレ? チート?」


 棒読みになってますよ。晶君。


 山の日暮れは早いなあ。なんておもう。


 移動速度は早かったのよ。晶とちび助は黒曜に乗っているし、黒曜は自分の周りは重力結界でガードしていて木の枝なんか押しのけてるし。

 俺の方は歩いたりせずに地面すれすれを滑空しているからね。


 ただ移動する度に敵の位置を観測し、また移動。なんてことをやっているうちにあっという間に暗くなってしまった。


 山が日の光を遮っているためだ。


 なので移動は早めに切り上げて石の木の家を出す。

 ちび助はもう慣れたのかトコトコと上がって部屋の中でいい子にしている。

 というかご飯を待っている。


 ご飯をテーブルに並べ、黒曜のために味付きで焼いた肉を出し、いただきます。という感じなんだが家をみて晶があきれてしまった。


 まあ、まだお湯は張っていないがお風呂もあるしな。


「先輩はチート主人公だった…」


「いやいや、来訪者なら多かれ少なかれこんなものだろう?」


「いやいや、出来ないから。こんないろいろできないから」


 うーん、確かに先日見たヘタレ勇者よりもマーヤさんの方がいろいろ強い感じはする。

 晶もあまりできることは多くない感じだし…何が違うんだ?


「要は応用じゃね?」


 何ができるかではなく何をするかだろう。

 俺が普通でないのは認めるのだが…


 ■ ■ ■ ■ ■


 食事が終わったらお風呂を作る。


「チートだチートだ!」


 うるさい。


 収納があれば水は持ち運べるし、水を加熱するのは理屈が分かれば簡単なのだ。

 マーヤさんだって普通にできていた。


 なので熱運動の加速の話をしてやったら。


「いやー、ゴメン、私文系だから」


 このやろ!


「さー、彰雄、お風呂入るよー」


 そしてちび助を連れてお風呂に逃亡。

 仕方なくこの隙に周辺の探索を、と思ったら黒曜に先を越された。

 何がいるのかわからない状況で俺もここを開けるわけにはいかないから仕方ない。留守番だ。


 何もしてないのも退屈なので収納から武器などを出してちょっと手入れなど、そうこうしているうちに。


「あなたー、坊やがお風呂出ますよー」


 完全に楽しんでるな。

 風呂場に行ってちび助を回収。

 ついでに堂々とおっぱいを観察。


「うん、確かに若返っている。これは十八歳ぐらいの時のおっぱいだ」


 本当に全体として若返っているんだよね。

 しかも大きさは維持したまま。 


「肌のハリとかオッパイの突き出し具合とか。なかなかぐっと」


 巨乳でロケットオッパイだ。

 マーヤさんは若返ったようなことはないといっていたから魔力的な作用で身体がベストな状態に維持されるのかもしれない。


 遠慮をなしで見て居たら真っ赤になってブクブクとお湯の中に沈んでいく。

 恥じらいがあるのはいいよね。


 俺は居間に戻ってちび助を着替えさせる。

 もう眠くて電池切れ見たい。


「おっぱい…」


「おお、ちび助が喋った!!」


 初めて聞くちび助の言葉。

 やはりこれが母性の、女の力なのだろうか。

 まあ、第一声がおっぱいなんだからそうなんだろうな。


 ■ ■ ■


「敵襲―――!」


 ゴン!


「みぎゃーーーーっ」


「痛いよ先輩すごく痛い!」


 自業自得だと思うぞ。


「夜這い禁止」


 そう、敵は晶でした。


 当然のように別々に寝所を用意したのだがそれを乗り越えて忍んできました。

 なので拳固を落とす。

 微妙に発情してるっぽいな。


「なあ、お前さん、今の生活があるから…みたいなこと言ってなかったかい?」


 おふざけ的な部分はなれなれしかったけど全体として袂を分かつような方向で物を考えているのだと思っていたのだけどね。


「えっとですね…」


 上目づかいで俺をちらちら見ながら晶が話し始める。


「この世界に来てからですね、ずっとご無沙汰だったんですよね…ほかの男には目もくれず見たいな感じで、別に気になったりもしなかったんですよ。

 好き放題銃器とか火器とか武器とか作れたし…」


 つまり趣味に没頭して性欲を忘れていたと。


「でも久しぶりに先輩に会ったらその…妙に疼くというか…やっぱり私ってば先輩のこと好きなんだなあ…って。

 でね、彰雄のこと見てたら…先輩と子供ほしいなって…うん」


「子供を拾ったことで母性が刺激されてしまったと… ところで彰雄って何?」


「えへへ、私がアキラで、先輩がマリオで、合わせて彰雄?

 彰の字は私のお父さんからもらいました。

 先輩と結婚して子供出来たらこの名前を付けようと思ってたんだよね。

 チビちゃんかわいかったから、そう呼んでたら…なんかもうね、女の本能が止まらないというか…

 女はね、性欲=愛だと思うんだよね。

 愛してるからエッチしたいのよ。

 だって命がけで子供産まないといけないんだよ。

 誰の子供を産みたいかで相手を選ぶのよ」


 うん、まあ、いろいろなぞは解けた。


 女は子宮で考えるというやつだな。

 昔からよく言われるやつだ。


『女は子宮で考える。男は胃袋で考える』


 女は男を選ぶのに優秀な子供を産めるかどうかで本能的に男を選ぶ。

 男は出世(金)に役に立つかどうかで計算づくで女を選ぶ。というやつだ。


 地球にいたころはそういうプリミティブな感覚ってなかった気がするが、ここは環境的に厳しい世界だから、そういう感覚はみんなが持っている。

 たぶん晶もそんな感じが分かっていたのだろう。


「で、まあ、一発やればふんぎりがつくかなって」


「うん、実に分かりやすいな」


「でしょ?」


 でもまあ、それに付き合ってやれるかどうかは別問題。


「まあ、この世界が一夫多妻でОKなのはわかっているけどね、嫁さん同士の序列ってのも大事だよ。

 なので前にも言ったけど、晶の身柄は俺が責任をもって保護します。

 たとえ俺の所に来なくても身の振り方で苦労はかけないつもり。

 でも晶がうちの嫁、ネムって言うんだけど、それとうまくやっていけるかどうかって問題はあるし、それに肉食系の、それこそ本能的にアグレッシブなお嬢さんたちに狙われたりもしているし、それって晶を受け入れると逃げられなくなりそうな気もするんだよね。

 そこらへんはいったん顔合わせをしてから、どうするか考えたい」


「すごい先輩。ハーレムだね」


「できれば避けたかったんだけどね」


「晶的にはそのあたりハーレムどうなの?」


「うーん、そうですね、抵抗がないといったらうそになります。でも私もここに来て長いですから、女子トークで良い男は逃がしちゃだめだ! みたいな話はよく聞くし、日本と違ってすでに嫁がいるからあきらめなきゃいけないっていうのはないんですよね。

 甲斐性って大事ですよ。

 たった一人の人を選んだって食べていけなけりゃダメです。

 男は女の生活と、子供の生活をきっちり守れる人でないと…

 あっでもそうすると先輩が甲斐性があるかどうか確認が取れてないのか…」


「おっ、その感覚はいいぞ。そうでないとこの世界生き残れないからな」


 男は甲斐性って言うけどほんとにそうなんだよ。

 甲斐性がないと生きてけない。

 生きてけないと嫁さんなんか来てくれないから。うん。


 そんなこんなで晶も落ち着いたみたいなので寝室に放り込む。

 下手になあなあでやってて流されてはまずいからね。

 ほんと男と女ってのはさ。


 俺は仕方なしに入り口近くで座ったまま眠りについた。

 まあ、眠らなくても平気なんだけどね。


 ■ ■ ■ ■ ■


 翌日。


『ドカーーーーーン』


 というすごい音で目が覚めた。

 何事?


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