第166話 なんか拾った
第166話 なんか拾った
大急ぎでギルドの管理する駐車場に行く。
冒険者は騎獣や馬車を持っているものも多いし、ギルドが貸し出してもいるらしい。
なので結構立派なスペースの駐車場が確保してあるのだ。
俺も当然そこに黒曜を置いて待っているように言いつけたんだが、とりあえず行ってみればそこは結構カオスだった。
広々としたいい場所に黒曜が寛いでいて、それ以外の騎獣や輓獣ができる限り黒曜から離れようと隅っこに集まり固まっている感じだ。
「これはいったい…」
「はい、実は…」
と男性職員が説明しようとしていたところに新たな馬車がやってきた。
それは結構立派な竜馬(こっちは本物)が引いていて、竜馬というのは戦闘力の高い感じの馬のような魔獣なのでほんとうに勇敢なのだが、その竜馬は馬車を牽きつつ悠々と広場に入ってきて、すぐに異変に気付いたようだった。
まあ、ほとんどの魔獣が隅っこに固まって、それこそ漫画みたいに抱き合っているようなものまでいて彼らの緊張は見てすぐに伝わってくるのだ。
その様子をいぶかし気に伺う竜馬。そのまま前に進み、その結果進行方向にいる黒曜を見つけるわけだ。
そしてその瞬間、竜馬は文字通り飛び上がる。
「ひひひーーーーん」
「ぎゃーーーなんじゃー」
「いきなり何が!」
「あが、ふげっ、ほげっ」
ジャンプした後竜馬は方向転換すると全速力で隅っこのおびえる動物たちの所に仲間入り。
馬車がつないだままだったので急な転身でひっくり返り、御者が投げ出され、馬車の中の人が転がり、馬車ががりがりと引きずられ大騒ぎ。
ここがギャグ漫画の世界ならまあ、笑いの取れるいい場面で、しかもすぐに元にも戻るのだろうがここは現実だからな。御者は怪我をするし、馬車は傷だらけ。
おまけに馬車の突進を受けた動物たちが逃げまとって走り回ったから本当にカオス。
結構な惨事になってしまった。
「あー…なんといいますか…あなたの竜馬は特に強いようですね。さすがと申しましょうか…」
まあ、竜馬っぽく見えるだけで実は麒麟だからな。
上位竜なんだからそりゃ怖いだろうさ。
いわんけど。
結局黒曜を泊められるような獣舎のある宿、というのは…
『申し訳ありません、さすがに当方も心当たりがなく…』
とか断られてしまったよ。
まあ、当然だ。
ちらりと黒曜を見る。
『なんね?』
全然わかってないな。
まあ、仕方ない。
見舞金として金貨袋をさらに一つ置いて俺は町を出ることにした。
■ ■ ■
しかし持ち運びのできる家を持っているので実はキャンプの方が快適だったりする。
風呂を沸かしてお茶を飲んでいると黒曜がイノシシっぽい魔物を捕まえてきて俺を呼ぶ。
『俺は食うぜ、俺は食うぜ、俺は食うぜ、マスターは料理するぜ』
あー、はいはい。
こいつこの頃ちゃんと料理された物しか食わないからな。
だからいろいろ安全なんだけど。
黒曜が落ち着いて寛ぐ中俺がイノシシをさばいてステーキみたいに焼いていく。
塩と胡椒で出来るので結構簡単。
焼くのにあまり時間をかけてはいけない。
「強火で一分、弱火で一分。ひっくり返して30秒」
まあ、焼き方はいろいろ言われているのだが俺はこれで焼く。
その後少し鉄板の上において火を通し。
「食ってよし」
『わーい』
食っている最中にキャベツの玉をポーンと放ってやるとばくっと口でうけとめてそのままぐわしゃと食べる。
でもにんじんはちゃんと火を通さないと食べない。
でもこいつは肉の熟成とかは全く考えてないから多分味付けがされていればそれでいいんだと思う。
似非グルメだな。まあ、いいけど。
晩飯が終わった後少し離れて黒曜を洗う。
こいつはものすごく丈夫なので普通に攻撃魔法で全身を覆ってやるとかなり喜ぶ。
重力で風を起こし、その乱流の中に魔力を流してやって、普通の人間なら風と砂塵と魔力であっという間に塵になるようなエネルギー風の球体を作ってやると飛び込んで大喜びだ。
強い流れに痒い所をぶつけて気持ちよさそうにしている。
「ほかのやつには見せられないけどね」
『むふ~っ』
あと歯磨きは自分でやる。
歯を磨かないといかんと教えたら、ファイアーブレスを口の中にためてドラゴンの炎でよく口を漱いで最後にペっとしている。
吐き出した炎で木とか岩とか溶解しているけど、まあ、小規模だから良し。
といってもこれもひとさまには見せられない。
最後は重力の触手でそこらの枝をもぎ取って積み上げ、自分の寝床を作ってそこに収まってまったりと寛いでいる。
やっぱりドラゴンはドラゴンだなあ、なんて思う今日この頃。
そこまでやるともう一日も終わりなので俺も風呂に入り、その後でウイスキーを軽くひっかけながらくつろぎのひと時。
入浴シーンはないぞ。
ヤローの入浴シーンなんて誰得だ! と俺が怒る。
一人なので嫁さんに対する奉仕の必要もないので以前手に入れた大昔の鍛冶士の手記などを呼んで新しい武器を夢想しながら寝るだけ…
ゴンゴンバキッ!
と思っていたらいきなりドアが吹っ飛んできた。魔物とかではない。
「
後ろ足でドアをノックするのやめろって言うのに。
いくら丈夫って言ってもドラゴンのキックに耐えられるほどじゃないんだ。
よくあることなんで予備パーツはたくさんあるが。
俺は立ち上がって入り口に向かう。
「どうした?」
『獲物?』
そこには何かを加えてぶら下げる黒曜がいた。
なんじゃと思ったらもそもそと動いている。
しかも黒曜の食べ残し(夜食用にとっておいた)肉を咥えてもぐもぐしている。
よく見れば頭ぼさぼさでぼろきれをまとった人間の子供。
たぶん獣人。尻尾がだらんと垂れている。
『食べる?』
「いや、たべねえし」
というか食えねえし。
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きりがよくで今回は短め。すまぬ。
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