第154話 迷宮に行こう
第154話 迷宮に行こう
セルジュさんとの話を終えた後俺たちは町に出た。
この町は新しい町で木組みの新しい建物ばかりだが町は活気に満ちていた。
露店などの前を通ると熱いラブコールが…ラウニーとマーヤさんに降り注いだ。
すっかり人気者である。
ラウニーは俺に抱き付いてというか巻き付いて背伸びをして愛想を振りまいている。
マーヤさんは冒険者や一般のお姉さんたちから熱い声援を受けていた。
「マーヤ、大人気ですね」
「当然、悪役を倒せば人気が出る。それが正義のみかた。正義のロボはそうでなくっちゃ駄目」
「ロボって何ですか?」
「ひーろー?」
ああ、マーヤさんはそっちが専門なのかな?
二人の楽しげな掛け合いをBGMに町を歩く。
「これからどうしますか?」
「うーん、勇者の様子を確認したいんだが…」
大ダメージを受けて『デロリン』と伸びた勇者は仲間に運ばれていったきり行方が分からない。
一番いい宿に部屋を取っていたらしいのだが、そこはもぬけの殻だったらしい。
どこに行ったのやら…
「まあ、勇者が分からんのなら仕方がないから一回迷宮にもぐってみようか?」
「わーっ」
「賛成です。ぜひ行きましょう」
「楽しそう」
「わきゃう」
うん、みんな冒険大好きだな。
件の魔物のせいで迷宮の危険度が上がって慎重になっている冒険者が多いんだけど…
「問題にならないんでしょ?」
ネムが横からのぞき込んでくる。
まあ、確かに問題にはならないだろう。
ここに来たばかりの頃だってAUGと地より沸き立つもののコンボで瞬殺だったんだから、今はもっとうまくできるさ。
でもなんであれのこと知っているのかな?
「さあ?」
謎めいた女は美しいな。
俺たちは馬車を止めたギルドの駐車場に向かった。
■ ■ ■
馬車はとりあえず止めていただけだ。
ここにいる間、いい宿屋がなければ森の中でキャンプを張るつもりだったからね。
あれだったら寝るところもお風呂もあるんだ。快適な生活できる。
あれ? 宿屋とる必要なくね?
となると森に入ってよさげな場所を探す方がいいのかな?
「わきゃうー、わきゃうー」
「迷宮楽しみですね」
「ん」
あっ、こりゃダメだ。
どちらにせよ一回、迷宮を探索してからでないと話が進まないな。
そんな感じで馬車まで帰ってくると馬車のそばで黒曜がくつろいでいた。
そしてその近くになんかしらない奴が転がされていた。
「なに? 泥棒?」
黒曜が肯定のイメージ。
まあ、そういうのもいるだろう。
でそいつらはなぜか縛られていて、いくら黒曜でも人間を縛り上げる…ぐらいできるかもしれないがやらないだろうな。
で縛ったのは。
「お待ちしてました」
ここまで一緒に来たギルドのおっちゃんだった。
「何かありましたか?」
いえいえ、単なる車上荒らしですよ。一人がこの竜馬の気をエサで引いてその間に盗みを働こうとしていたようです。
「なんでまた?」
家の馬車って見るからにやばそうな感じだと思うんだが、なんでそんなのに向かっていくんだ?
このコソ泥たちはあえて苦難に挑戦するチャレンジャーな泥棒とかなのか?
「さあ、どうでしょう、ちょっと不自然ではありますね。
まあ、それはさておきカウナック様とギルド長から宿の手配をしたからというので連絡に上がったんです」
ああ、なるほど、確かに必要な気遣いだな。
「大丈夫なんですか? この町に宿屋の余裕があるとはとても思えないんですが…」
「まあ、そこらへんはVIP用の部屋は確保されていますので。
うちはご老公の影響で冒険者をやる貴族も多いですし」
「いや、べつにそれはいいんだけどさ、冒険者になって、でもVIP扱いで宿屋とか配慮してもらうってなんか違わないか?」
「そうですね、フレデリカおばさまなら『醍醐味がなくなる』とか言いそうですよね」
だよな。
というわけで辞退しよう。
気遣いはうれしいが、やっぱりなんか違うよ。俺らはただの冒険者だ。
それにVIPとして活動していると馬鹿貴族をシメるというお仕事がやりづらくなるだろ?
いかにもVIPな相手に突っかかってくるバカもいないだろうし。
「まあ、そこらへんは分かっていると思いますよ、事前に打ち合わせなどあれば違ったんでしょうけど、現状では『配慮しない』という選択肢はないですよ。
必要がなくても、形だけでも」
おお、このおっちゃん、けっこうできる人だな。
であればギルマスもカウナック君も断られること前提で宿を提供してきたわけだ。
「なら、とても感謝していたとお伝えくださいな。でも仕事の関係で動きやすさを優先します。みたいな感じで」
「わかりました、そんな感じで」
できるおっさんとの話は早くていい。
一応勇者の居所について何か情報が入ったら教えてほしいというお願いはしておく。
俺一人で何もかもなんてできないからどうしてもギルドやカウナック君の協力は必要だ。
「わかりました、お任せください」
そう言って離れていくおっちゃんを見送りつつ…
「あのおっちゃんの名前なんだったっけ?」
相手の名前が分からなくっても普通に知り合いとしての会話ってできちゃうんだよね。
ここに連れてくるときに一応きいいたんだけど、覚えてなかった。
「あの男性の名前がタウロ・エッフェンベルガーさん、一緒に来た女の子がニナ・レフティヴァーちゃんですよ」
「ああ、そうだった、ありがとう。流石ネム」
「どういたしまして、得意ですから」
本当にね、ネムって一度会った人間の名前と顔を忘れないんだよ。
すごいよね。
俺なんかすぐ忘れちゃう。
それで営業が務まったのかって?
大丈夫なのさ、手帳という第二の記憶装置があるからね。
サラリーマンの常識だよ。
さて、馬車を収納にしまって、黒曜も連れていってみようか。
俺たちはぞろぞろと迷宮に向かって歩き出した。
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