第144話 誰が銃器を作ったか…

第144話 誰が銃器を作ったか…



 証言その一・ドワーフ・アメトリンさん・芸術的な石材加工師


「ライホー…といったと思ったのう。こいつは儂が南に行ったときに見たことがある。いけ好かない公爵殿の領地だったな。やたら自慢しとった。

 なんでも帝国から入ってきたものだそうだ。

 魔法を一切使わない賢者の技で作られた武器だそうでな。

 離れたところから一方的に魔物を攻撃できるんだそうな。ワシはあまり興味がなかったがの」


 アメトリンさんは手に取ったハンドキャノンを見て鼻を鳴らした。よくよく印象が悪かったようだ。


 証言その二・ドワーフ・セプターさん・金属加工師・新しいもの好き。


「その時は儂も一緒だったんじゃよ~。

 わしはこういうの好きじゃな~。なのでよく見せろと言ったら偉く怒っておったわ。

 見せる気がないのなら見せびらかすな戯けが。

 伯爵だか何だか言うとったが、小童のくせにぃぃぃぃぃ。

 しかし現物が見られるとは…まあ、全く形が違うがの。

 なに、それでなぜ同じものだと分かるかだと?

 ほれ、このマークじゃ。この〇に横棒、これを三つ重ねたマーク。

 あれにも同じものがついとった。

 わしらもよくやるが、製作者のマークじゃろ。

 何? ばらしていいのか。よし、早速やろう」


 いきなり銃を分解しようとしてどつかれているセプターさん。


 証言その三。ドワーフ・ルチルさん・建築設計士


「わしはまあ、あまり興味はないかの。

 わしが話を聞いたのは南からきた冒険者だった。

 聞いた話じゃと帝国ではこの武器がやたら沢山使われているらしいの。

 一応国の兵士が使ってるものらしいがそこはほれ、蛇の道は蛇というやつだ。

 冒険者にも出回っておってな、やたら幅を利かせておるらしいぞ。

 ただ、わしが思うにちっと威力が足りんな。

 役に立つのかのう?

 かなり数をそろえてみんなで撃てば…まあ、そこそこの魔物には効くかもしれん。

 じゃが何で魔法を使わんのじゃ?

 魔法を使えばもっとずっと効率のいいものが作れるじゃろうに」


 彼の話ではこのライホーと呼ばれるこの武器は帝国軍の中ではそれなりに浸透しているらしい。

 秘密兵器なんだろうけど外に漏れちゃね。


証言?その四・ドワーフ・レエスチャル・魔術付与師


「面白い、儂らで魔法付与型のものを作ってみようではないか。

 これは何というんじゃ? ライホー? 変な名前じゃのう。

 温泉の脇に研究小屋を建てよう。

 よし、そうしよう。温泉づくり? 安心せい、すでにわしが魔法を刻印せねばならんところはほとんど終わっとる。

 ちと暇だったんじゃ。

 森の中で酒を飲むだけというのもの」


 あーあ、ほら暴走しちゃった。


■ ■ ■


「まあ、ドワーフの皆さんですから」


 ロッテン師の評価は適切だと思う。

 本当に人生を満喫しているよ。

 最も楽しい人生を送るのはドワーフである。という格言もあるぐらいだ。


「でも確かに威力的にはいま一つよね。中程度の魔獣にはそれなりに聞くと思うけど、それ以上だと難しいんじゃないかしら…しかもこれって純粋な物理攻撃でしょう?

 魔力を込めたりできるのかしら?」


「無理じゃろうな。構造的に飛び出すのは小さな鉛玉じゃ。これに魔力を込めたところでたかが知れとるし、構造的に弾に直接も触れん。魔力を込めると暴発するじゃろ。

 だが弱い魔物相手に数をそろえてドコドコ撃てばそれなりに成果が上がるじゃろうな」


 フレデリカさんの話にカンゴームさんがこたえる。

 他のドワーフたちはライホーをばらして盛り上がっているが、といっても大騒ぎでばらしているくせに精密な図面とかドコドコできている。

 同じものなら明日から量産できるような状況だ。

 これがドワーフのすごいところだよね。


 そのグループをしり目に(未練はあるみたいだけど)フレデリカさんとまじめな話ができる当りカンゴームさんはすごいと思う。

 別の意味でね。


「そういう威力で、多くの敵に使うとなると…魔物より人間相手の方が有効そうね。

 帝国だからろくなことに使わないわよ~きっと」


 苦笑するフレデリカさんの言葉はまるで予言のようにその場に響いた。


 魔物相手の武器…ではあると思うのだがフレデリカさんは為政者だ。

 この武器が戦争に使われた際の影響。というのを考えてしまうらしい。


 確かに銃の脅威というのはそういうものだ。

 だが俺が気になっているのはこれがここにある理由。


 これは間違いなく地球人の手で作られたものである。ということ。


 名前はたぶんライフルがブレたものだろうし、この魔法のある世界でわざわざ火薬式の銃を作る理由がわからない。

 まあ、誰でも使える。というのが利点なんだろうけど、この世界の人間にその発想はできないだろう。


 となると…考えたくないが…これを作っているのは晶なんだろうな…


 銃器マニアということならほかのやつという可能性もあると思うんだが…あのマークだからな…


 何であいつここにいるの?

 穴に落っこちないように押し戻したのは無意味だったんだろうか…


「しりあい?」


 マーヤさんがやってきてそっとささやいた。


「多分? 銃器が大好きで地球でも隙あらば改造拳銃とか作ろうとしたやつだし、法律があってもそうなんだから、銃刀法なんてないここに来たら絶対に銃の自作を試みるに違いない…」


「危ない人?」


「そうなんだよ、いろいろ危ない人なんだよ…」


 そこで俺は意識をフレデリカさんの方に戻す。


「出来ればうちでも作りたいわね。現物があれば参考にはなるでしょう。魔法を使った改良型があればなおいいわ…ってそれはみんながやる気になっていると。

 あと私がやるのは環境整備かしらね。

 一回王都に行って国王と話をしてこないと…」


「そうですな。同じ武器が同じだけあれば抑止力にはなります。

 帝国もそうですが、オルキデア公爵当りがろくでもないことを考えないようにしませんと」


 そう、ドワーフたちが言っていた南のナンチャラというのはオルキデア公爵領のことらしい。

 帝国との関りを考えると、公爵家にはそれなりに重火器が流れている可能性もあるか…


 とにかくフレデリカさんは手に入ったライホーを調べて新しいぶきを作るつもりみたいだ。まあ、それもありだな。

 銃を作るんならガトリングガンとかつくってほしい。ちょっと情報を流して…ってそうじゃないって。

 この銃の出所を調べないと…


「北に行って勇者とか言うのを調べてみるか…」


「あら、ほんとう? マリオン君が勇者に対応してくれると助かるわ。

 どうも行く先々でトラブルまき散らしているみたいなのよ。

 対応は強硬でいいと言ってあるんだけど、どうもそれなりに強いみたい」


 あー、一応勇者だしね。

 勇者のアドバンテージというのは魔法への適性と莫大な魔力だ。

 俺みたいにジェネレータが自分の中にあるわけじゃないんだけどね。

 それでも一般人よりは強い。


「マリオン君なら全然負けてないと思うからのしちゃっていいわよ~うちの孫が行っているからついでに手紙も届けてね。よく言っておくから」


 ふむ。つまりぶちのめして情報を引き出せと…

 いいんじゃない?

 勇者、アホみたいだし。


「だけど中途半端はよくないからここがある程度形になってから?」


「おう、それなら心配するな、そりゃあと四日ぐらいだ。それでベースになる施設はできる。一番中心のでっかい館だな。

 あとは追々にするしかない。人の集まりをみて、必要な施設を増やしていく感じだ。

 となるとある程度は成り行き任せだな」


「なるほど」


 言われてみればその通りだ。

 山の上だから町というよりはリゾート施設みたいになるんだろうし、いろいろなサービスを展開するのもラーン男爵家でやらないといけない…。


「せんせ~っ」


 あっ、マルグレーテさんがフレデリカさんに縋りついた。

 まあ、あとは任せていいだろう。


「じゃあ、あとはネムたちと予定をすり合わせて…北に行くか」


「少し温泉を堪能してからね」


 あっ、はい、そっすね。

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