第126話 マルグレーテ・ラーン女男爵
第126話 マルグレーテ・ラーン女男爵
「おかえりなさ~い」
「ただいま帰りました。お母様ー」
領地をそのまま抜けて領主の館(?)まで行くとシアさんによく似た女性が手を振っていた。
そういえば領地に入ったばかりの時のろしを上げているやつがいたな…
まあ、それはともかくその
褐色の肌に青い瞳、目鼻立ちも似ている。シアさんをもっとふわっとした感じだろうか。
違うのは髪の色が黒というところだな。
ああ、あとおっぱいが大きい。これは母親の貫禄だろう。
彼女はこちらに歩いてくると俺たちに軽く頭を下げ、マーヤさんに向き直った。
「マーヤちゃんもご苦労様。シアのこといつもありがとうね~」
「うん」
にこにこにこにこ。
それで意志の疎通が図れているのか。すごいな。
「そんでもってあなたがマリオンちゃんとネムちゃんね~。トリンシアがお世話に…」
その台詞の途中で彼女の目がギュピンと光った。
「かーわーいーいー!」
その次の瞬間ラウニーがつかまっていた。
「一瞬見失ったよ」
「私も」
ラウニーは抱きしめられてオッパイに埋まっていた。
おっぱいが嫌いな子供はいない。
最初吃驚していたラウニーだが、おっぱいに蹂躙されているうちに魅了されたらしい。
オッパイをやわやわ触って嬉しそうだ。
しばらく堪能(お母さんがラウニーを)した後立ち上がった彼女は。
「ラーン男爵領にようこそー。歓迎するわ~私がシアちゃんのママです。マルグレーテって言うの。よろしくね~」
うん、気さくな人のようだ。
■ ■ ■
さて、ラーン男爵家の領主館だが、一言で言うと砦だね。
「こういう場所ですから常に有事に備えている。ということでしょうね」
ネムはうんうんと納得している。
このラーン男爵領というのはキルシュ公爵領の一番西にある領地の一つで、ここから西には大きな山脈があり、隣の貴族領と隔てられている。
つまり標高が高めで、起伏にとんだ地形をしているのだ。
「この領主館は初代様が大地を削って作ったといわれているのよー」
とマルグレーテさんは言う。
岩山だったのか岩盤だったのかわからないが高さ7~8mほどの城壁がぐるりとあって、その大きさは200m×300mぐらいのものになる。
大きく出頑丈そうな門があり、まあ、普段は開かれているらしいのだが、その門を入ると外と同じ高さの広場になっている。100m四方ぐらいだろうか。
その奥は段になっていて上に上ると領主館の敷地で館だの庭だのがあって、下は岩盤を削って作った倉庫だの部屋だのが存在している。
「これってひょっとして普通にお城とか作るより大変なんじゃないのか?」
「えっと、初代様は優れた魔法使いで、土を使うのが得意だったと聞いています」
魔法かーこういうところがすごいんだよね。
下の広場は結構人の出入りが多く。たくさんの荷物が運び込まれたりしている。
「いざというときは領民すべてがここに避難して戦えるようになっているのよ。
今はそのために食料や武器なども用意しているわ。
大丈夫だとは思うけど、万が一ってこともあるしね~」
「緊急時はのろしなどを上げれば中央まで連絡が届くようになっている。はず」
うーん、あの子爵領のことを考えるとちょっと不安はあるな。
上の段はキレイに土が入れられていて、樹木が並び、対円のようになっている。ただ植えられている木々は多くが食べられる実のなるものらしい。
じゃなかったら装備の手入れに仕えるような奴。
ここら辺も心構えが半端ではない。
以前フレデリカさんの教え子だ。というような話を聞いたことがあったがなるほど。という気がする。
「下の段はすべて岩盤をくりぬいて作った部屋で、倉庫なんかに使われているの~。かなり涼しいから食料も長持ちするからここは結構しっかりした要塞なのよ~」
マルグレーテさんはラウニーを抱っこしながらそんなことを教えてくれる。
ちなみにラウニーを抱っこしているのは階段を上りづらそうにしていたからだな。
俺やネムが運ぶのが正しいのかもしれないがさっと、かっさらわれた。
「あっ、シア様。おかえりなさーい」
「マーヤもお帰り、早かったね」
館に向かって歩いていくと木々の奥から武装した人たちが出てきた。
その数10人ほど。
「みんな、なにしている?」
「訓練だよ、一応ラーン男爵家騎士団だからね」
「そうそ、魔境征伐があるんだ、訓練は必要さ」
「といっても作業があるから半分だけどね」
なるほど。確かに彼らは騎士だ。たぶん真面目な人たちなんだろう。
部分鎧と革のスーツで武装している。武器は木剣を持っているな。
鎧は素材は魔獣の甲殻だと思う。割と性能が良くて金属製よりもお安い。
加工しやすいためらしい。
今度機会があったらカンゴームさんに作り方を聞こう。あのドワーフは知らなくても知り合いがやってそうだ。
なんか変な知り合いが多いんだよな、あの人。
「シア、行きますよ、皆にはあとでちゃんとお話しなさい」
「はーい」
盛り上がる騎士たちとお嬢さんたちだがご領主さまの一声でお開きになった。
俺たちは領主の館に移動する。
あっ、ちなみに黒曜もついてきてます。
高さ7メートルの段差なんてあって無きがごとしだ。
さすがに館の中までは無理なので待たせることにする。
いや、待てよ?
「ラーン男爵様」
「あら、マルグレーテでいいですよ。お母様でもいいですよ」
「恐れ入ります。ではマルグレーテさま」
お母様発言はたぶん深い意味はないと思いたい。うん、たぶんそうだ。
「うちの竜馬なんですが、少し散歩に出していいですかね?
しつけはしているので人の迷惑にはならないと思うんですけど」
「うーんそうですね、竜馬ならそんなに危ないこともないですよね…わかりました。いいですよ」
すみません、竜馬の振りをしているけどドラゴンです。言わないけどさ。
「というわけだ、黒曜は勝手に森を散歩してよし。ただし人間には絡まないように、人間が近づいてきたらすぐに移動して、面倒になったら帰ってきなさい」
『くるるっ? くる?(???・わかったー)』
じつは分かってないだろお前。
もう一回言い聞かせようとしたらすたこら逃げてった。
「まあ、いいか」
「大丈夫ですよ」
ネムの信頼は厚い。
どういうわけか黒曜のやつはネムには従順なのだ。絶対服従といっていいレベルで。
だが俺の信頼は薄い。
なんかやりそうな気がする。
こういう時唱える不思議な呪文。『ケセラセラ』
意味の分かったマーヤさんは噴き出していた。
ちなみに館は中世ヨーロッパの『お屋敷』といった作りだった。
シンメトリーで尖塔とかあるやつ。
なかなかロマンあふれるお屋敷だ。
■ ■ ■
さて、館に入ってお茶を頂いたら周辺の確認だ。
マルグレーテさんは地図を見せてくれた。
かなり精巧で、戦略物資と言えるものだろう。
この領地は一言で言うと、けっこういびつで一言で言えない形をしている。
領主館は結構北側にあり、北は当然に魔境である。つまり魔境から領地を守る砦としての意味もあるのだ。
距離的には数百メートル。
なので反対側は農地が多い。
民家もこの方向に多い。
領地全体の人口は3000人ぐらいだそうな。
ほとんどが農民で彼らが総出で耕すぐらいには農地が多い。
そして西側は山。
ここあたりまではまだしも穏やかなのだがこれより西はどんどん勾配がきつくなり、途中からはもはや登山である。
昔テレビで見たアルプスのほうの山々といった感じだろうか。
そう思うのはこの辺りでは羊だの山羊だのが普通に飼育されているからだろう。
羊はお肉と羊毛のため。山羊は山羊乳とお肉のためだな。
本当にそれっぽい。
でもなぜか室内は和室っぽい。
靴を脱いで直接床に座るスタイル。
このスタイルだとラウが生活しやすくていいんだよね。事実部屋の隅でメイドさんと遊んでいるというかメイドさんにかわいがられている。
ラウは下半身が蛇なので部屋に上がる際はクリーンの魔法できれいにしてもらってます。
この山の中のこれって何ですか?
地図の表記でちょっと気になるものが。
「ああ、これはお湯が湧き出しているのよね~」
なんと温泉ではないか!
ぜひ行ってみたい。
「うーん、ここからだと山登りで五時間ぐらいかかるわよー」
なるほど利用されないわけだ。
でも行ってみたい。
行くべきだ。
うん、ここにいる間に一回は確認に行こう。
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