第125話 女の人って容赦ねえー ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
第125話 女の人って容赦ねえー ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
「とりあえずこれ、どうしましょうか?」
ネムが怪しくクフフと笑う。
「そうですね。つぶしましょうか」
シアさんがこともなげにさらりと言った。
何を?
「たっ…助けて…」
冒険者たちはほとんどが腰を抜かして震えている。
ドラゴンの咆哮というのはこれほど強いものらしい。
ずいぶん前にゴブリンと戦ったときも上位種が咆哮に魔力を乗せて威圧のような事をしていたが、あれはちょっと物理的な破壊力のあるやつだった。
だがこれはあれの上位版というか、特殊型というか、肉体よりも精神にダメージを与えるらしい。
冒険者たちはもう完全に勇気がくじけているようだった。
そしてもはや戦う意志もなく命乞いをする冒険者にシアさんたちはあっさりと死刑宣告を告げた。
「ダメに決まっているじゃないですか。私これでも貴族の令嬢です。
冒険者としてではなく貴族家の義務でお仕事しているんです。
それを襲った以上、全員重罪ですよね?」
それが身分制度というやつだ。
この世界、犯罪者の命は軽い。
いや、逆か。生きていくのが大変だから犯罪者に容赦などする必要を全く感じていないのだ。
そしてそれは身分が違ってくるとその差は極端になる。
貴族に対する犯罪は普通のものより罪が重いのだ。
そんで貴族の令嬢に乱暴しようなどとした場合どうなるかというと。
ゴシャッ! という音が響いて、『〇罰*//***-+▽ωω×××』一人の冒険者の声にならない悲鳴が響いた。
シアさんのメイスは冒険者(代表)の股間に振り下ろされていたのだ。
なんかさすがにキュッとする。
「つぶれた」
「ちゅぶれ?」
「うわーーーーっ」
うわー以外の何が言えるだろう。
完全につぶれたよ。ぶらぶら二個も、パオーンも、ついでにあれって恥骨のあたりもつぶれてるよね…
「死んじゃうんじゃない?」
「問題無い」
マーヤさんも容赦なし。
こえー、超こえー、異世界の恐ろしさをこれほど感じたことは今までなかった。
男ならこの恐怖に耐えられないとしても全く不思議はない。
ほかのならず者冒険者たちも泣き出した。
泣きながらあとすさり何とか逃げようとしたり命乞い…というか息子の無事を祈りまくる。
なんか大勢でいろいろ漏らしているのだ。目から鼻から下から大洪水。
そして。
「ひいぃぃぃっ。きしゃまら、儂を、儂をられらと…たったすけ…ひいっ。儂はニャチワ子爵に仕えるききききっきしでででっ。
こんにゃことしてただですむと…」
唯一かどうか紛れ込んでいた騎士の男がじたばたと逃げながらわめいている。
「勿論タダで済ますつもりはありませんよ、この討伐はフレデリカ・キルシュ様のお耳にも入ってますし、シアちゃんたちは学園の生徒ですからこの討伐の状況を詳しく報告する義務があるんですよ。
御老公のお耳にも入りますよね。
あなたの御主人はどうするでしょう?
きっとあなたが勝手にやったといってしらを切るんでしょうね。
あら、でもそうするとあなたたちが生きているととても迷惑かもしれませんね。
通り道ですもの、子爵の所までお送りしますわ」
人の悪いネムでした。
「ひぃいぃぃぃぃぃぃっ」
男は話を聞いている間にどんどん青ざめていった。
心当たりがあるのだろう。ありすぎるのだろう。
多分子爵込みで常習犯だ。
「でも助かる方法もあります」
「ほっ、ほんとか?」
「あら、レディーに対する口の利き方がなってないですね」
「ほ…本当ですか?」
「うふふっ、はい、本当ですよ。キルシュ様の役に立ってくだされば命ぐらいは保証してもらえますよ」
そう言いながらネムは久しぶりにキルシュ公爵家の印籠ならぬ家門のメダルをちらちらとちらつかせた。
効果覿面であった。
■ ■ ■
ならず者は総勢13人だった。
そのうち紛れ込んでいた騎士が二人。
この二人の指揮のもとに冒険者たち11人は旅人に絡んでいたらしい。
特に位置関係で奥に当たるラーン男爵領に行く商人や冒険者には絡みまくっていたらしい。
でもやっていたのは強請り集りのようだ。
ニャチワ子爵というのがラーン男爵に対してどういう意志を持っているのかわからないが、周りの男爵領とかには結構迷惑をかけているらしい。
うむ、有罪である。
冒険者は11人。
最初に犠牲になった非常に哀れな彼はお星さまになってしまった。
ご冥福を祈らずにいられないのだ。同じ男として。
同情はしないけどね。
その後彼らの命乞い攻勢はものすごい勢いだった。
人間はここまでプライドを捨てられるのか! といった感じ?
まあ、これも気持ちはわからなくもない。
その後隙を見て逃げようとしたのが二人出たが、こいつらはその場で死刑が宣告された。
もうチャンスはないそうだ。
ちなみに俺が首をはねました。
無抵抗のやつを切るというのは何かいやーんな感じなんだけど…
「人の上に立つということは、滅ぼすべきを滅ぼすことであり、救うべきを救うことです。そりゃ勢いで敵を殺すのは誰でもできます。
でも責任ある立場の人間は、罪人の処刑は出来なくてはいけません。
人に命じるのもありですが、それは役目として、自分が嫌だから…というのはあってはいけません」
と、ネムに切々と諭された。
その心構えは大事だと思うけど、それって俺に必要なものなんだろうか? なんて思いはするが、ネムと生きていくのなら必要なことなのかもしれない。
世の中は難しいものなのだ。
まあ、でもやることは簡単なんだけどね。
完成したばかりのレイピアでスパッと切るだけ。
簡単なお仕事だった。
ただ空気は厳粛だったと思う。
ネムはラウニーを支えるように抱きかかえ、罪人が首をはねられるのを見ていた。
ラウニーに何かいろいろと教えているようだった。
やっぱりこの世は難しい。
うん。
残り8人は生き残った。
俺は彼らから冒険者証を取り上げ。そして犯罪者捕縛用の首輪をつけた。
この犯罪者捕縛用の首輪というのは単純な魔道具で、時限式で締まる首輪となっている。
一定時間内にしかるべき場所に出頭するとそこにカギがあり、外してもらえる。
しかしそれをしないと首輪が『きゅうっ』と締まってやっている人が逝っちゃうというものだ。
かなり単純な、だからこそ効果的な拘束具である。
ここでいうしかるべき場所というのはベクトンの司法局だ。
そこに駆けこんで自分からつかまらないと自動的に死刑が執行されます。
首輪って言ってもワイヤー上のものなのでキュッと行くと首が落ちちゃう。というもので、当然フレデリカさんから貸し出された物。
冒険者たちよ頑張ってベクトンまで走ってくれ。
そして手紙を渡すのだ。お前たちの罪状が書いてあるからね。
冒険者証はあとで俺たちがギルドに提出します。
二人の騎士のうち、下っ端と思しき者は一緒にマラソンコースだ。
だが上司らしきものは首輪をつけて、おまけにふんじばられて家の車の荷台に積まれることになる。
こいつらはラーン女男爵へのお土産。証人として利用されることになるだろう。役に立てば命は助かるのだ。
これにて今回の処理はおしまい。
みんなありがたがっていた。
「普通は死刑」
「そうですね、連れていけませんから普通はその場で首を切りますものね」
それが普通の対応。
彼らが助かったのは大量の首輪を貸し出してくれたフレデリカさんのおかげというもの。
キルシュ家の役に立つがいい。
「でもよかったです。せっかくの新しい武器をあんなことで汚したくないですもの」
それが本音か?
■ ■ ■
その後ももうひと悶着。
ラーン男爵領との領境に関所があって、関所の人が当然のように絡んできた。
そして荷台に積まれた同僚を見て唖然茫然。
「貴様ら、自分が何をやっているのかわかっているのか!」
「子爵様に対する反逆だぞ」
「おとなしく解放せぬとあらばその分には捨て置かぬぞ!」
はい、あっという間に関所の役人たち全員のされてしまいました。
よっわいなー。
そんでこの紋所がーとやったら、『平に、平にご容赦をーーーーっ』だって。
存在自体が笑いを取りに行ってるよな。
この後子爵様の所に知らせに走るんだろうから子爵様の対応が楽しみだ。
そして俺たちはラーン男爵領に到着した。
うん、自然豊かでいいところだ。
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