第93話 目が覚めたらなぜかスライム天国だった
第93話 目が覚めたらなぜかスライム天国だった
「おおーっ。スライム天国じゃ~」
翌朝ドアを開けて小屋から出るとそこには色とりどりのスライムがいた…なんかいっぱいいた。
いやー、いるとこにはいるもんだね。
って、言うかどこから湧いて出た?
「うそ…ありえない…」
え?
「火スライムがいる。風もいる」
「変なの?」
「変過ぎる」
「こんなのありえないよ…スライムは食べるものによって性質が変わるの。だから火はもっと火の魔力が強いところでないと見かけないし、風はもっと森の奥の風の強いところでないと…いないはずなんです」
つまりどんな属性環境で育つかによってどんなスライムになるかが決まると。
だから水と土はいたるところにいるんだね。
土に関してはでかいのもいる。
150cmぐらいか? ものすごい迫力だな。
ゲームの王様スライムもかくやだ。
ただ色とりどりのスライムはみんな小さい。
5センチちょっとぐらいでいっぱいいる。
それが一番たまっているのが…排水口?
お風呂の水を排出するところに水たまりができていて、そこでスライムたちがひしめいている。
「七色のスライムだな」
「本当ですね、にじみたいです」
虹の色とかはっきりとは覚えてないけど紫とか青とか赤とか黄色…というよりレモンイエローがそんなスライムが水たまりで遊んでいる。
「信じられない…これ、光スライムです…この蒼いのは闇スライム? こっちの白金は…まさか…まさかまさか…ホーリースライムですか?
幻のスライムですよ」
あり? やらかしたか?
昨日は疲労回復効果を期待してお風呂の水に俺の魔力を付与したんだけど…ひょっとしてそのせいか?
源理力無尽蔵だしな…
「かわいいですよね…いっそのこと飼いますか?」
「そういえば無害なやつは飼えるんだっけ…」
「はい、結構大丈夫そうですよ」
「いいなあ…」
「寮でなければ飼える。繁殖希望」
つまり家で預かるわけか?
まあ、いいか。
ただこいつら完全に愛玩動物なんだよね。小説にあるみたいに賢くない。
ただただ愛らしい小動物枠。いうこと聞かねえし。
それに危ないやつもいる。
火スライムとかは大きくなると火を吐くし、土スライムは巨大化して生き物を襲う。
だからここら辺はダメ。
なので選別作業が必要になる。
『光スライム』レモンイエロー。暗いところで光る。放つ光に回復効果あり。
『闇スライム』ダークブルー。基本無害。安眠。精神回復効果あり。いじめると精神攻撃してくる。
『聖スライム』プラチナ色。聖別効果。回復効果。お清め効果。結界作用あり。
『透明スライム』クリスタル。空間収納能力在り。攻撃反射能力在り。たぶん空間属性。
この四種類は基本的に攻撃を受けない限り無害らしい。なので全部で九匹ほどいたこいつらを連れていくことにした。
後は断念だね。
これが集団になると、動きがコミカルで面白くて結構可愛いいんだよ。うん。
◆・◆・◆
さて、その後はここをベースにして周辺を探索だ。
とはいっても狩りの獲物としては昨日のビロードバイソンと狼で十分なので、狩りの練習のような感じだな。
冒険者というのは稼ぎがあればその後しばらくゆっくりするし、稼ぎがなければ毎日地道に働かないといけない。そういう仕事だ。
それを考えると現在は余裕の時間であろう。
「うーん、やっぱり基本は逃げますね。効率が悪いみたい」
シアさんが言う。
確かにそんな感じではある。
魔境とはいえ、この浅層は生態系が確立していて動物、魔物はいきなり人間を襲ってきたりしない。
中には狼みたいなのもいるが、これは少数派だ。せんだっての豹のような魔物だって、まだ見てないがライオンのような魔物だってこちらが距離を取れば襲ってはこないようだ。
だからこの辺りの狩りの獲物は草食動物に相当する生き物たちということになる。
インパラみたいなのとかガゼルみたいなのとかだな。
結構たくさんいてそこら辺を飛び跳ねているんだけど、しかしこいつらは逃げるんだよ。人間が近づくと。
で、こういう生き物をどうするか…というと基本は罠とか飛び道具とかだな。例外はあるけど。
ネムも例外。
こう、静かに草叢を足音を立てずに進んで、ある程度近づいたら身体能力強化を利用して一気に肉薄。うまくいくときは首筋を一撃でスパってね。
それで終わり。すごいね。
「いえ、すごいのはマリオン様のマッサージだと思いますよ。あれをやるようになってからすごく強化のノリもいいですし、体の反応も格段にいいんですよね。前はここまで早くなかったですよ。
三倍です」
うむうむ、魔力循環のマッサージは奏功しているようだ。
確かにネムの体の魔力の流れはよどみなく安定するようになっている。そのせいだろう体の切れとか制御がかなり良くなっているみたいだ。
「興味深い」
「これは夫婦の秘め事です」
「エロい話?」
まあ、エッチと一緒にやっているからエロくはある。隅々までいじり倒しているし。
「じゃあ、今は我慢する」
今はってなんだ? 先があるのか?
「いい男を見つけたらゲットだぜ。逃がさない」
手を出すつもりはないよ。ほんとだよ。
この話はここまでとして気になることを聞いてみた。
「でもあんまり弓矢って使っている人いないよね」
「それは私も調べた。効率が悪いから」
?
「つまりですね、弓矢には段数制限があるということです。それに奥に行くと獲物も強力になって有効な弓矢を使おうとすると重くなっちゃうからですよ」
あー、なるほど。
弓でやる以上は矢は持ってこないといけない。だけど矢は消耗品だ。使えば減っていく。
一〇〇本もあれば結構な量だろう。
それに威力の高い弓はそれ自体が大きくなる。
戦闘力自体が低いわけではないが弓専用だと継戦能力が低くなるのだ。となるとどうしてもサブウェポン扱いになる。
そしてそういう使い方なら魔法でもいいわけだ。
「というかその方が効率がいい」
「そうですね、アイスバレットとかでも十分です」
対して都市防衛とかであれば弓矢は有効な武器だ。
矢は置いておけばいいし、でかい弓でもほかに荷物がなければ運搬はしやすい。
だから都市防衛や、輜重部隊のある軍隊なんかではよく使われる。
シアさんたちは言ってみれば士官候補生なので練習はしているらしいが冒険に行く際に推奨はされていないらしい。
なので次は魔法での実演。
「行きます【■■■・■■・■■■■・アイスバレット】!」
魔法を唱えたのはシアさんだ。
これも役割分担の一環で、盾とメイスを持ったシアさんは走るのが遅くなる。
スキルで重さが軽減されているとはいえなかなかに厳しい現実だ。
やりようはあるような気がするんだけどね。
シアさんが魔法を唱えると呪文に込められたプログラムがシアさんの魔力を使って魔法を構築する。この時の魔力の動きをまねると魔法の真似ができるんだが、普通は魔力の動きなんて見えない。
それに結構難しいんたよ。だから要研究だ。
で、この魔法だけどシアさんの前に氷の塊が生み出される。
昨日のアイスショットとは別の魔法だね。
溜めに時間がかかるけ氷の砲弾が順繰りに作られてく。一個できるとまた一個。その数が四になったときシアさんが発射を命じる。そして勢いよく氷が射出されるわけだ。
テニスボールぐらいの氷の球だが勢いがあるのでかなり痛いと思う。
ビシッとかズドンとか音が響き、何発かが命中した。
ガゼルだかインパラだかよくわからないが、その群れに打ちこまれた氷弾は二匹のそれをしたたかに打ち据えた。
倒れる二匹と逃げ散る群。
そこにネムとマーヤさんが駆け込み、倒れた二匹に襲い掛かる。
ずばっとかごきっとかそんな感じで。
これが一般の人の狩りの仕方らしい。
つまり…
「もっと効率のいい飛び道具があればいいわけだよね?」
ネムとシアさんは『なしてそんな結論に?』という顔をしているがマーヤさんはさすが地球人。コクコク頷いている。
これはそう、魔法と銃とどちらが信頼できるかという話なんだよ。
「二人とも戻れ!」
二人のいるあたりに炎の塊が飛んできた。
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