第82話 ポーションの作り方と思わぬ大金。ウハウハ?

 第82話 ポーションの作り方と思わぬ大金。ウハウハ?


 ついでにポーションづくりも見せてもらえることになった。

 ラッキー。


「えへへっ、実はポーションも聖水も作り方の基本は変わらないんですよね~」


「え? そうなの?」


「そうなんですよ」


 と言いつつミルテアさんはポーションづくりを始める。


 ポーションというのがどういうものかというと小瓶に入った飲み薬だ。


 種類はいろいろあるらしい。

 例えばけがを治す『治癒ポーション』であるとか『毒消しポーション』とか『麻痺直しポーション』とかだ。

 ほかにも一時的に能力を上げる身体強化ポーションとかもあるらしい。


 この基本になるのが『魔草』と呼ばれる薬草だ。

 以前聞いた月光魔草とかもこの一種だね。


「この魔草をですね、すりつぶして、よく搾って濾してきれいな水に溶くんですよね」


 これがポーションの基礎となる『回復魔力水』と呼ばれるものだそうだ。


 この魔草は微弱な回復の魔力を持っていて、この魔力は速やかに人体に吸収される性質がある。ポーションに即効性があるのはこの魔草の力だ。


 あと水も重要だ。この時に使われる水は、どこそこの清い水とかいうよくわからないものを浄化魔法で丁寧に浄化したもので、清いほど効果がある…とかなんとか。


「この時使う水を聖域の水にして、神聖術で浄化しまくったものを使うと聖水になるんですよ~」


 ここが普通のポーションと聖水の違いだそうだ。


 さらに本来はこれにいろいろな薬草を混ぜるらしいのだ。


 例えば毒消し効果のある草とか麻痺消し効果のある草とかだ。その混ぜる草によって効能が変わってくる。


 実際に見てみるとこれが驚いたことにその草の葉っぱや実を入れるとシュワシュワ溶けるんだよ。すごい。


「でもどのポーションも同じじゃないのよ。作る人によって配合に秘伝とかあってね、どんな薬草をどんなふうに混ぜるかで秘伝とかあるのよ、神殿の秘伝は内緒ね」


 ごめんなさい、解析してしまいました。

 以前解析した『ヨヨモギ』とか『オミナエ』とか入ってますね。

 ほかも調べればわかりそう。


 まあこの薬草の配合は本当にその流派みたいなものの秘伝で自分たちで『傷に効くポーション』『毒に効くポーション』といろいろ秘伝があるらしい。


 ほかにも魔石を混ぜたりとか作り方は本当にいろいろある。


 神殿なんかは神様の力の性質によって効果が変わって来ることもあるんだとか。

 そんなにいろいろあるとは思わなかった。


 大地母神殿のポーションは回復効果が高くて結構有名。あと婦人病とかにも効くらしい。美容とかにも、女性に人気……

 そゆこと。うん。


 で、このポーションは冒険者の人必携の品になる。


 なぜならば即効性が期待できるから。


 例えば戦闘で裂傷を負ったとする。結構深い傷だ。

 傷薬とかもあるのだが戦闘中だとゆっくり治療とかはできない。

 そこでポーションを飲む。これはグビッと行くだけだ。

 すると治癒が始まる。血が止まり、組織の再生が始まる。


 失血死がなくなるだけでも大したものだろう。


 高級なポーションだと傷がふさがるような効果もあるらしい。

 聖水はそういう効果が高い。さすが神様謹製。


 しかも振りかけても効果がある。


 事程左様にポーションとは重要なものなのだそうだ。


「なのですよ」


 なのらしい。


 と、まあポーションづくりはこんな感じになる。


「あっ、そうそう、身体強化のポーションはあまり使っちゃだめだよ」


「そうなんですか?」


「うん、あれに使われている薬草って、ちょっと副作用があるんだよね、興奮作用とかあるし、使いすぎると幻覚とか出るし」


 麻薬ちゃうのんかそれ!

 つまり興奮状態でいろいろ能力の上がるやばい薬ってことだな。

 ダメ、絶対。てやつだな。


 うん。それには手を出すまい。

 そもそも身体能力強化は魔力循環で結構いけるから必要ない。


 あっ、そういえばネムも魔力をうまく循環させるようにマッサージしてたんだよな。試したことないけどどうなんだろ。

 少しでも調子がよくなっているといいんだけど…


 ◆・◆・◆


「あー、おいしかった」


「はい、うちのメイドは優秀ですね」


「「恐れ入ります」」


 夕食を食べた後その味に惜しみない賞賛を送るとメイドさん二人は優雅に恐縮して見せた。フレデリカさん、この人たちレベル高すぎない?

 いいのかうちなんかで働いてて。


 さらにセバスがさっと食後のお茶を出してくる。

 俺たちはそれを受け取ると彼らに自由時間を申し付ける。

 ここからは彼らの完全なプライベート時間だ。


「失礼します」


 と下がった彼らは別室で食事をとるのだろう。

 俺なんかはみんな一緒に食事をとればいいのに。と思うのだが、これはネムや本人たちに反対されてぽしゃってしまった。


 彼らはプロであり、俺たちに食事を提供し、給仕することで金をもらっているのだ。

 一流の料理人が客のテーブルに自分たち用のコース料理を運んで一緒に食べたりはしないのだ。


 まして今は子供たちもいる。

 そんな待遇になれたら子供たちはプロになれなくなってしまう。


 これは厳然と隔てられるべき境界なのだそうだ。


 それでも屋敷の使用人というのは大変な仕事で、イレギュラーが発生することもある。


「申し訳ございません、旦那様。実はカンゴーム氏がどうしてもお会いしたいと…」


 という具合に招かれざる客が押しかけてくることもある。


 セバスは本来休息できる時間のはずなのに嫌な顔一つせずに粛々と対応する。


 時間が時間なので追い返してもいいのだが、相手はカンゴーム氏だ。

 まあ、追い返したところでフレデリカさんに怒られるのはカンゴーム氏のような気がするが、多少優遇してもいいだろう。あとで何か役に立つかもしれないし。

 そう思った俺は客間に通すようにセバスに命じた。


 客間で待っていたカンゴーム氏のもとに、俺たちは着替えてから向かう。

 室内着で応対するのはいろいろ失礼なのだそうだ。

 よほど親しければ別なんだろうけど、そんな仲でもないしね。


 ただぶしつけな来訪なので酒は出さない旨ははっきり告げる。


「いや、酒はいい、そんなものは必要ない」


 これはに俺たちはみんな驚いた。


 ドワーフは伝承の通りみんな酒好きなのだ。酒をそんなものなんて呼ぶことがあろうとは。


「マリオン殿…頼む、あの砲弾をどうやって手に入れたのが教えてくれ…フレデリカの所に行ったんだ。気になって。

 そして現物を見た。

 あれは古代王国で使われていた本物のゴルディオンだった…

 わしらが研究に研究を重ねて、いまだたどり着けない本当のゴルディオンだった」


 カンゴームさんの顔は真剣そのもの。

 なるほど、ドワーフは酒好きだが鍛冶にプライドを持っているということか。

 いや、迷惑行動だから誇りというよりは執着かな。


 そう考えてみるとなんか目が血走っているような…


 断ってもいいんだけど面倒くさいからいいか。


「あれは遺跡の中で見つけたものですよ」


「おおっっっ! やはり古代の本物か…」


「・・・・・・」


「・・・・・?」


「先日は生意気な口をきいてすまん。これこそがドワーフの命…そんな偉そうな口をたたいておいて今更なんじゃが、他にも持っとると聞いている…少し、少しでいいのだ分けてもらえんか…」


 うむ、恥じ入るところはあるらしい。まあ、最初からこういう姿勢なら多少は譲歩してやろう。


 それにせっかく恩に着せることができそうなんだから、やらなきゃ損でしょ。


「いいですよ。これをどうぞ」


 そういうと俺はゴルディオンの塊をしまうぞう君から取り出して床に置いた。

 だってテーブルに置くと傷付きそうだし。


「おお、すまん、かたじけない…って、これどのぐらいあるんだ? ううっ、すべて本物のゴルディオンだ…

 こんなに買える金は…しかしほしい…」


「多すぎますか?」


 だったら減らしてもいいよ。


「いやーっ、待ってくれ、待ってくれ…これは五Kgぐらいか、こうとるな…グラム当たり銅貨二〇枚として…いや違う、それは出回ってるゴルディオンだ…これは古代の本物だ…銀五はするか…となると…」


 話を聞いていてぎょっとした。

 どうやらゴルデイオンというのはグラム当たり八〇〇〇円ぐらいするらしい。金の倍だな。しかもそれは普通に出回っている物の値段だ。

 古代の『本物?』ということならさらに高いらしい。

 カンゴームさんの提示価格は銀五〔五〇〇〇〇円〕。

 転がした塊が五Kgちょいだからおよそ二億五千万円。つまり金貨二五〇〇枚。


「やっぱり少し量を減らした方がいいんじゃないですか?」


「うう、しかし…」


 カンゴームさん涙目だよ。どんだけだ。

 しかしこの金額は大企業だとしてもポンと出せる金額ではないだろう。

 たぶん少し量を減らすのではないかな?


「買う」


「え?」


「これすべて買わせてもらうぞ」


 マジで?


「といっても今はこれしか持っていない。金貨で一〇〇〇枚ある。

 不足分は明日届けさせる。

 頼む!」


 マジだ。

 目がマジだ。


「頼む、先日の無礼は詫びる。どうしてもこれが調べたいのだ。作りたいのだ!」


 ものすごい情熱だ。

 暑苦しい。

 まあそれば冗談だが。


「先日のことは気にしていません。すごく勉強になりましたから」


 加工方法の詳細が分かったのは手記の所為だが、実際に加工ができる権能の使い方を覚えたのはカンゴームさんのおかげ…と言えなくもない。

 それを考えればこれを譲るぐらい問題ない。

 だが果たして調べてどうにかなるものか?


「わからん、だから調べるのだ、挑むのだ」


 まあいいか。情熱に負けた…と、日記には書いておこう。


「分かりました。それでお譲りします」


 俺が気にしていたのはひろっか瓦礫をそんな値段で売っていいのかな? みたいな話なんだが…本人がそれだけの価値があるというのであればいいのだ。

 商売ってそういうものだし、嘘をついているわけじゃないから。


 カンゴームさんはとりあえずの代金として金貨一〇〇〇枚を置いて帰った。


 カンゴームさんも収納の魔法袋を持っていたらしい。金貨一〇〇〇枚ってすごくかさばるんだよ。便利だねこのアイテムは。


 しかし一気に財政状況が好転した。当分安泰になったな。

 善哉善哉。


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“ぼん”です。82話をお届けします。

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