第81話 獲物を売却してみた。小物は微妙…
第81話 獲物を売却してみた。小物は微妙…
時間も時間なのでその日は切り上げて、翌日。まず冒険者ギルドの用事から片付けることにする。
「えっと…一角ラビが23匹…フォレストウルフが…8匹…これ、本当にフォレストウルフですか?」
「そうですよ、現物があるじゃないですか」
「えっと、そうなんですけど…魔石がフォレストウルフにしてはずいぶん立派なんですよね…ひょっとして特殊個体でしょうか…」
首をひねる買取担当の受付さん。そんなに違うかなあ? なんて思っていたら解体の人が。
「いやいや、これは間違いなくフォレストウルフだぜ…ただ、そうだな…魔石を見るとひょっとしたら進化まじかだったのかもしれないな」
てなことを言った。
からくりは簡単で、AUG白(地より沸き立つものバージョン)で取れた魔石とAUG黒(天より降り注ぐものバージョン)でしとめた傷なしの素材をセットにして提出しただけなのだ。
「まあ、そういうこともあるさ」
まずったかなと思ったがそれほど不自然ではなかったらしい。
魔石に関しては余分は自宅で使うようにまわしたので御の字だ。
「あとはハムハムハネズミか。これは魔石が小さ目だな。魔石分はちょっと下がるが…その分素材が無傷だから上乗せされて、まあ、結局プラスだな」
ハムハムネズミというのも森で狩れる小魔獣だ。
これは強敵だった。
どこがというと見た目が。
とっとこ走るかわいいネズミで、立つと三〇cmぐらいあってまるでぬいぐるみ。穀物や野菜を襲う害獣なので討伐推奨だったんだが…これがなかなかつらい。
また撃たれたときに倒れ方があざとい。
まるで人の罪悪感を描き立てるような倒れ方なんだよ。
ネムは平気でスパっと行ってたが日本人にはつらい戦いだった。
「えっと、査定結果は…
一角ラビ・12.5銅貨×23匹=288銅貨
フォレストウルフ45銅貨-5銅貨〔解体費〕×8匹=320銅貨
ハムハムネズミ6銅貨×12匹=72銅貨
だから…680銅貨だな」
一角ラビは丸ごと買取で解体費用とかも込みでこの値段が設定されている。それだけ使い道があるということだ。
フォレストウルフは肉は使えないので毛皮の買取だけ、でも大きいしきれいに洗うとふかふかなので結構いい値段になる。これは解体費用が一匹当たり5銅貨かかっていて、魔石がいいので色がついてこの値段。
ハムハムネズミはもともと魔石はあてにされてないのでお肉としてこの値段になる。
そしてついでに取ってきた薬草類も少し放出したので…
「薬草も状態のいいものばかりですね。こちらはまとめて20銅貨で」
締めて2金貨8銀貨5銅貨ということになった。
日本円だと282,000円。
「すごいですね…たった一日でこれだけ稼げるってとてもCクラスとは思えません」
「あはは、ありがとうございます」
何か聞きたそうな話し方だが何も教えることはない。
ネムと一緒に笑って韜晦しよう。
「結構いい稼ぎになりましたね。二日でこの額は大したものだと思いますよ」
「うん、確かに…でも微妙ではある」
収入としては金貨3枚弱。二日でこの額は悪くない。いや、駆け出し冒険者としては破格だろう。
だがこのペースでずっと行けるわけではないと思う。
毎回毎回大量に獲物を持ち込む冒険者。
ほぼ畜産業者である。
この町は巨大で、そして人間というのはお肉が好きな生き物だ。
なので牧場のようなものはちゃんとある。
飼いならされて肥え太ったハムハムハネズミなどはこの町で提供されるお肉の主流だそうな。
ほかにもラプトルなんかがある。
ラプトルは友達だー。とか言いつつも、年を取ったラプトルをおいしく頂いたりもするらしい。成熟した軍鶏をいただくようなものだろうか。
なのでお肉自体はまあ普通に売っている。
ではなぜ森で獲ってきたお肉が売れるのかというと森のお肉は高級品扱いなのだ。
俺たちが狩ってくるような量では大勢に影響はない。というやつなのでいいっちゃいいんだが、毎日毎日小物を狩りまくるというのもいかがなものか…
あんまり楽しくない気がする。
なんというか小物感が出ているような…小物狩りだけに。
「だったら大物を狙いましょう。もっと奥に行くとブラックビロードバイソンとか、モケモケホーンディアとかいますよ。そういうのだったら一頭で金貨20枚とか行きます。
やりがいがある仕事です」
ブラックビロードバイソンというのはでっかい牛だそうだ。二m強ぐらいだというから普通の牛よりちょっと大きいくらいか。黒くて滑らかなビロードのような毛皮を持っていて、そのお肉はお金を払って食べる価値がある。とか。
黒毛和牛みたいなものだろう。
状態が良ければ毛皮魔石込みで30金貨は硬いそうな。
え? 三〇〇万円?とか思ったが、大きさを考えるとグラム当たりのお値段は黒毛和牛よりも安い。
モケモケホーンディアというのはでっかい鹿だそうだ。うねうねとしたすごく立派な角を持った鹿で、これは背の高さが二m越え。角除く。
こちらも完品なら三五金貨ぐらいは行くらしい。
牛より高いんだね。まあ、アメリカ人って鹿食わせるとか言うと飛んでくるっていうからうまいのかもしれない。
かなり奥の方にいるので普通はAクラス、Sクラスが一〇日とか二〇日とか計画を立てて狩りに行くような奴ららしい。
「それは…面白いかもしれないな」
「はい、お肉、おいしいですよ」
ネムちゃん楽しそう。
「そうだね、今回のテストで森の中で必要なものとか一通り出てきたから、準備を整えて向かうのもいいかもしれないね」
「ええ、素敵だと思います。ぜひ行きましょう」
うむ、次の企画は決まったな。
◆・◆・◆
「あら、いらっしゃい」
「ミルテアさんすみません忙しいところを」
「あらあら、いいのよ。仲間じゃない。今日は聖水が欲しいんですって?」
というわけで俺たちは大地母神殿を訪ねた。
ネムがミルテアさんに抱き着いてオッパイに弾き返されたりしている。善哉。
「なるほど、確かにマリオン君の回復魔法はすごいわね。神殿の奇跡に匹敵すると思うわ…それ以上かも…
でも、確かにポーションも必要よね。あれはいいものよ。
神殿では聖水のほかに怪我治癒ポーションも体力回復ポーションも売ってます。ぜひ勝っていってね。
そして私の紹介だといってね。そうすると私の方にもお金が入ってくるの」
「えっと…ひょっとしてお金に困ってらっしゃる?」
思わず聞いてしまった。
「? いえいえ、違いますよ。ほら、百花繚乱の再興の話で、今新しいメンバーを募集してますでしょ?
今回は思い切って新人さんを中心にして、最初から地道に行こうかなって、それしかないかなって思って、でもそうすると最初は少し資金が必要なんですよね」
「装備とかですか?」
「それもありますけど…」
最初はあまり稼げないというのは仕方がないと考えているらしい。女の子だけのパーティーなので神殿の施設も使えるので結構節約はできる。
でも基本はあくまでもパーティーの稼ぎで暮らしていかないといけない。
今度リーダーになるミルテアさんはある程度は持ち出しするのは仕方ないと考えているらしい。
立派だ。
「私たちもできるだけ支援します」
「はい、ネムちゃんたちが経験を積んで強くなっていてくれるとサポートとか当てにできますからとっても助かります。頑張ってくださいね」
うん、これが縁というやつだろう。できるだけのことはしてあげよう。
「というわけでポーション買ってくださいな。
本当は自分で作ったポーションがあるとよかったんですよね…
私は外で修業中の冒険神官なので、自分で作ったポーションは自分の収入なるんでした。忘れてました。
あっ、でも神殿で売っているポーションもちゃんと作ってますよ。神官のお仕事の一つですから」
詳しく話を聞くと、神官さんの仕事というのもいろいろあるようだ。
もちろん祈ることは大事。あと給仕と呼ばれる神殿や神像の掃除とお清め。これが第一だな。
ほかには治療院で回復術を行使したりするのも修業の一環だ。
そして修業には聖水づくり、ポーションづくり、霊符づくりなどもあるらしい。
なんか神官さんって年功序列のイメージがあったけど、こういった決められた修行をどれだけちゃんとこなせるかで位階が上がってくんだそうな。
実力主義だね。
「うん、いい考えだわ、今度素材を手に入れてポーションとか作ろう」
と、ミルテアさんはすっかりやる気になっている。
でも…
「薬草類って、結構持ってましたよね」
「うん、持ってたね。いっぱい摘んだから」
ミルテアさんの顔がパッと輝いた。
「じやあ、今から作ってあげるから、ぜひそれを買ってください」
もちろんですとも。
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81話をお届けします。
地道に進んでいます。
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頑張ります。頑張れます。
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