第32話 異世界は意外と住みやすそうだ
■ マリオン。異世界に落っこちてきた。マリオンに改名する勢い。
■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。
■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ
■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。
■ ロイド。森であったハンター。体格のいい重剣士
■ リリ。森であったハンター。微妙に露出のおおい魔法使い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第32話 異世界は意外と住みやすそうだ
食事の時間が来てリリアが呼びに来てくれた。なんかすっごく愛想がいい。
「はーい。こちらのお席をお使い下さい」
そしてネムちゃん達と一緒のテーブルに案内された。二人が何か言ってくれたのかもしれない。
食堂はふつうにテーブルと椅子だったが、かなり混み合っていた。誰もかれもうまそうに料理を食らい、楽しそうに酒を飲んでいる。料理が自慢というのもあながち嘘ではなさそうだ。
「おお。これはすごい」
俺があんないされたテーブルの上には結構手の込んだ料理が所狭しと並んでいた。まあ確かにテーブルが小さめなので所は狭いということもある。
「ごめんなさい、今急がしてく、お客さんにも協力お願いしてるんです」
何のことかわからんが、ひょとして大皿形式のご飯のことかな?
おかずが三品。まず荒く砕いた感じのキャベツのような山盛り野菜に乗った焼肉。はて? 何か懐かしいようなにおいが…
そしてほうれん草のようなもののお浸し。
思い出すぜ…昔、野菜嫌いだった俺に母親がよくこの手のお浸しを出したものだ。
ただ材料は不明ね。
俺もお浸しは食べられたんだよね。だもんだから母親は全部この手のおかずを『菜っ葉』って言ったよ。これ何?って聞くと使っている野菜にかかわらず全部『菜っ葉』。そう言っとくと俺も食べたしね。
だまされていることに気が付いたのは結構大きくなってからだった。
変だとは思ってたの。だって食べるたびに味が違うし…
まあ、偏食の子供に野菜を食べさせるのは大変という話。
さておかずの三品目は煮しめだな。大根とか里芋とか椎茸とかそういったものの入った煮しめ。実においしそうだ。
「大丈夫ですよ~なれてますから。後はやりますよ」
「はい、でもここまでは」
そう言うとリリアさんは小皿を振り分け、整え、そしておひつのような器を…
その瞬間広がるにおい…
ご飯だった。白米だった。
それを各人の茶碗によそい、配っていく。
「申し訳ありませんがあとはご自分でお願いします」
そんな彼女の言葉は俺の耳には届かなかった…俺はただただ歓喜に震える…
ご飯があるのだ。
お椀に入っているのは味噌汁だろう。
それにおかずだ。
焼肉には焼肉のたれが使われているみたいだ。
それに煮しめということは醤油があるということか…
日本食である。
畳といい、この食事といい、多分この国は日本から来た異世界人に強く影響を受けているのだろう。
多分そうだ。
そこでちょっと考える。
(これって、よく小説などにある食テロができなくなったと言うことではないか?)
日本食が受けてお金持ちに…と言うあれだ。
よく考えてみる。
(・・・・・・まあ、いいか)
考えてみたら俺、食テロが出来るほど料理つくれんわマジで。
そう思えば探し回ることもなくお米が食べられて、醤油があって、味噌がある。これは夢のような出来事だ。
ああ、ありがとう。この状況を作ってくれたのが神様なら入信しても良いぐらい感謝してます。
俺は取りあえずこの感謝をかたちにするために近くにいたリリアさんにチップを渡す。
ポケットに入っていたコインを数枚掴んでよく見ずに。
良いんだ。高くても。ありがとう。
誰に感謝して良いか分からないから取りあえずリリアさんと幸せを分かち合おう。
なぜかリリアさんが俺の手をぐっと握ってきた。
うむうむ。喜びが伝わったのだろう。
さて、食事だが本当に美味だった。
約、半年ぶりのお米なのだ。
日本にいた時は毎日何の気なしに食べていたけど、食べられなくなるとこれほどダメージの大きい物も無いだろう。
そして焼肉。辛さはなかったが大変おいしゅうございました。甘口だね。
お浸しは…まあ、箸休めとして、お煮しめはおいしかった。
やはり醤油味だった。
お浸しも醤油ならよかったのに塩だったな。うまかったけど。
ロイドの話だとウイスキーもあるようだから、この世界でも結構快適に生きていけるかも知れないな。なんて思う。
いやー、良かった良かった。
◆・◆・◆
「あぁぁ、うまかった…こんな美味いものが食べられるなんて…」
食後のお茶である。麦茶みたいなやつだ。
「大げさですねえ…でもこの食文化はこのコウ王国の自慢なんですよ。昔の賢者様が色々頑張ってこの一連の料理文化を創ったんだそうです」
「へー、賢者様ですか?」
賢者様とか呼ばれてたんだね。
「はい、なんでもここでは無いどこかから渡ってきた来訪者のお一人だったとか」
来訪者、ついに出たと言う感じだな。
「何十年かに一度、この世界と彼の世界を繋ぐ門が開いて、そこから
ただの伝説ではなく本当の事ですよ。賢者様は一八〇年ほどまえの人ですね。前回は七〇年ほどまえだったと思います。
来訪者の方々はそうしてこの世界の人に沢山の恩恵を与えてくれるそうです」
「でも良いことばかりではなのよ、中には災いを運んでくる来訪者もいるの。七〇年前の時はとてもワイル人がやってきて、隣国にとても大きな被害が出たいわれてるわね」
「でもこの辺りはその賢者様を初め、良い人が多いので、来訪者の人は丁重に扱われるそうです」
なんと、そうだったのか。
だったら『異世界人ですイエーイ』もありだったかも知れないな…もう、今更恥ずかしくて出来ないけど…
あっ、そうだ。
「その来訪者の人って、どうやって見分けるんですか」
自己申告なら偽物出放題じゃね?
「そ~れ~は~心配ないのよ。先日の鑑定でちゃんと『異世界の××』という称号が付くの。だから鑑定すると一発ですね。
他にもクラスが『勇者』とか『賢者』とか『聖女』とかになることが多いみたいですね。
あと、加護が主要十二神だったりするわね」
ほほう。
「ほかにもスキルがとても多いという特徴もあるから…なんとなく目立つから気を付けていると分かるものよ、目星がついたら鑑定ね」
「なるほど…ところで…」
「なんですか~?」
「主要十二神ってなんですか?」
ミルテアさんが大げさにずっこけてみせる。
「あら~っ、そこからでしたか~」
「マリオンさんの生い立ちを考えれば不思議はないです」
「そうねえ…そうか! マリオンさんの師匠さんって、凄いスキルをいっぱい持っていたみたいだからひょっとして来訪者の人だったのかも」
ミルテアさんがすごいことに気が付いてしまった!みたいに言う。
それよりも神様プリーズ。
こういう世界だと、いや、そうでなくともその土地の信仰というのは把握しておかないといろいろ怖い。
「そうそう。では説明しましょう」
と言う事でこの国の宗教が分かりました。
この国はというかこの大陸にある国の多くが多神教で、基本的に同じ神様を祀っているらしい。ただ誰を中心に据えるかとか、神様のとらえ方とかの違いはあるようだ。
コウ王国では中心である『界王神』の座に『太陽神マーナ・イルミナ』という神様が据えられているということだった。
そのすぐ下に『大空神』『大海神』『大地神』の三大神がいて、その補佐役として『八貴神』と呼ばれる神様がおわすそうな。
さらに八貴神の下に数多の神々や精霊がいて、この世界のすべてに神が宿っている。という考え方をするらしい。
日本に似ているのでとってもとっつきやすい。
主要十二神というのは一王神、三大神、八貴神の十二神のことを言うわけだ。
神様を祀る教団はやはり主に十二あって、ミルテアさんが属しているのは『ステルア教団』というらしい。
「ステルアさまは慈悲深き大地の女神様で、豊穣、出産などを司る女性と子供の守り神です」
大地母神ともいわれ、母としての属性が強く、教団も女性と子供の保護に力を入れているようだ。
聖職者は全員女性で男の神官というのはこの教団にはいないらしい。
でも農耕も司っているから男の信者は多い。
「女神ステルアはすべての生きとし生けるものの母なのです」
そういうミルテアさんはなんか立派な神官さんに見えた。
教団同士の仲も割と良好で、協力的な関係にあるようだ。そこらへんも自然崇拝的な信仰心の影響だろう。
自然はすべてひっるめて自然なのだ。
「ほのぼのしていていいですね」
「ですよね~。おおらかは素晴らしいです」
微妙に意気投合。
「私は獣王国の出身なのでよくわからないんですけど」
と、ここでネムちゃん参戦。
ネムちゃんは獣王国という国の出身なのか。
「獣王国は十二神ではなく霊獣様を奉る国ですから、ちょっと発想が違うんです」
ネムちゃんは虎系だから霊獣王虎を信仰しているし、他にも犬系の人は『霊獣天狼』を奉っていたりする。これらの霊獣は協力しつつも競い合うもので、仲良くとはいかないようだ。
「それはそれで楽しそうだとは思いますよ、獣王国の信仰は競い合うとはいってもあまり殺伐とはしてないですし、でもすっごく排他的な一神教の国もあるのよ、あれはだめ~」
自分達の神だけが正しく、他は邪神だと主張する宗教国もあるらしい。
嫌だねどうも、異世界も所詮は人間の世界という事なのかねえ。
その後は明日の予定の確認だ。
取りあえず門番の所に行って手形を返さないといけない。
他にはギルドで依頼を受けないといけない。
ネムちゃん達はこの町の神殿で、無くなった仲間達の弔いをすると言う事だった。
この町にあるのは『界王神』の神殿で、教団自体が違うのだそうだが十二神はお互いに協力関係にあるそうで、神官達も協力するのだそうだ。
やっぱり平和が一番。
◆・◆・◆
部屋に戻ると布団が敷いてあった。
食事のあいまに宿の人が敷いてくれたようだ。
着ている物を適当に脱ぎ、下着だけで布団に潜り込む。
布団は煎餅布団だった。
だがお日様の匂いがしてほんのりと柔らかい。
枕はなんだろ…そば殻がなにかかな…そんな手触りだ。
くどいようだが半年ぶりのまともな寝床だ。
堪能するまでもなく目を閉じたら速やかに夢の中だった…
と思ったらいきなり目が覚めた。
どのぐらいたったろう…
近くに人の気配。これで意識が覚醒したようだ。
周囲は暗闇だが魔力視があるからちゃんと見える。
いつの間にかドアを開けて入ってきていたのは…かなり薄着のリリアだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます