第20話 ステータス

■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在、異世界を探索中。

■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。

■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ

■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。


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 第20話 ステータス


 というわけでで、様子を見ながら話をしてみる。

 自分の話がどういう反応を引き出すか、これは注視しないといけない。


 嘘はまずいと思う。適当なことを言ってもいずればれるだろう。

 だが本当のことをすべていうのが正しいとも思われない。


 だから反応を見ながら説明をする。


 都合よく誤解してくれるといいな。なんて思う。


 まず話したのは普通に暮らしていたところで、黒い穴に飲み込まれて知らない場所に飛ばされたということ。

 ドキドキである。

 だが反応は悪くなかった。


「それはたぶん黒の嵐玉らんぎょくですね」


 ミルテアさんがそう教えてくれた。改めて話を聞いたらミルテアさんはハーフエルフで二十六歳だそうな。一五、六に見えるのに。

 ところで黒の嵐玉って?


「うーん、世界中をふらふらしていて、時々人を飲み込んでとんでもないところに飛ばすいたずら者の…なんだろ…魔物とか、邪神の罠とか呼ばれている物です。

 ある日突然そこに現れて、そこにあるものを飲み込んでしまうんです。

 ひどいときは町ごと…なんて言うのもあったみたいですよ。

 ほとんどはそのまま行方不明になってしまうんですけど、まれに帰ってくる人がいます。ただし、元の場所とは違うものすごく離れた所とかですね」


「なるほど、そんなものがあるんですね」


 魔物とか言っているけどひょっとして時空の穴か何かか?

 自然現象的転移現象かもしれない。

 実際それにはまってこの世界に落っこちてきたものがいるんだからあながち間違いじゃない気がするな。


「それでそのあとは?」


「ああ、気が付いたら全く知らないところで、そこで魔法を教えてくれたやつに助けられたんですけどね、そこで半年ぐらいですか…魔法を教わって、ですが“彼”もすでに限界で、この世を去るときに『転移』とかいうので私を送ってくれたんです。

 その時に出たのがこの近くの森の中で…」


 嘘はついてないよ。


 細かいところは自分たちの想像力で補完してくれたようで『大変でしたね』という感じで受け入れてくれた。

 ただ転移というのにも衝撃を受けていたようだ。伝説の魔法なんだと。


 彼女たちの認識によると、俺のいた国ははるか東方の国で、そこは魔物がいない四方を海に囲まれた小さな島国で、そのために魔石というものを知らなかった。


 ということになったようだ。


 事実のちりばめられた良いストーリーだとおもう。


 この場合なんで言葉が通じるの? という話になるのだが、この世界、言葉はみんな通じるらしい。


 言葉にするとその言葉の持つ普遍的な『意味』が相手に伝わるのだそうだ。


 椅子もチェアーも言葉は違えど受け取る側は自分の言葉で『椅子』と認識するらしい。言葉は生きていて、正しい言葉であるかぎり、それはちゃんと相手に届くのだそうだ。

 すっごい便利。語学なんて必要ないじゃん? と思うかもしれないがさにあらず。


 伝わるのは口から発した言葉であり、文章の文字はちゃんと外国語に見える。

 それにしゃべる側が普遍な意味を理解していないと意味としては伝わらない。


 つまり意味もなく『い』『す』と音にした場合、そこには椅子と意味、つまり言霊が宿らないので相手には『い』と『す』という音にしか聞こえないらしい。


 子供は特に難しい。


 言葉を使い込んでそういう認識が根付かないと言霊は働かいなので、子供には正しい言葉をその意味を添えてちゃんと教えないといけないと教わった。

 言霊があるからより言葉を大切にしている感じかな。


 ちなみにこの国にはこの国の言葉があり、隣の国には隣の国の言葉がある。普通に話しているが実は全く違う言葉らしい。

 うん、よりめんどくさい。


 しかしおかげで誤訳のような心配をせずに話ができるわけだ。


 なので説明もちゃんと理解できる。

 そして魔石のことを教わった結果、どうやら魔石というのは地球でいうところの電気のような普遍的なエネルギーとして存在しているようだ。


 よい魔石はそのまま使われるらしい。そして質の低い魔石は一度砂のように砕いて精製して使うということだった。

 彼女たちの持っていたランタンの魔道具に入っていてたのを見せてもらったが、まあビー玉だね。

 それを魔道具にセットすると動くようになる。


 つまり魔道具というのは魔力駆動する機械と考えればいいわけだ。


 ここにはいろいろな魔道具があってそれを動かすのが魔石、精製したものは『魔力石』というらしい。


 なので魔物から取れる魔石は何であれ売れる。


 ゴブリンの魔石はあまり質の良いものではないのだが、それでも一個銅貨一枚ちょっとぐらいにはなるらしい。

 って言われても価値がわからん。


 まあ、七匹ぐらい狩れれば一日の生活費ぐらいにはなるという話だった。

 そして新人にはかなり効率のいい仕事になるような話だったな。


「ゴブリンの場合は魔石そのものよりも討伐報酬という意味合いが強いんですよ」


 つまりゴブリンは見つけ次第殺れ! な魔物のなわけだ。


 そして魔石というのは強力な魔物ほど良いものを持っている。

 なので俺が持っているお化けやエルダーゴブリンの魔石はかなりいいもので、そのまま使えるレベル。つまりあいつらはかなり強い魔物だったということだ。

 マジか…


 今回の魔石はエルダーゴブリンとホブゴブリンの物は俺がもらって、あとは二人にもらってもらうことにした。

 彼女たちもひとかどの冒険者なので今更ゴブリンの魔石はあまり割のいい稼ぎではないのだが、これは討伐されたことを証明するとという意味で価値がある。

 ゴブリンがそれだけたくさん討伐されると民衆は安心だからだそうだ。


 ちゃんと働いてますよみたいな意味合いなのかもしれない。


 ならばと頑張って魔石を取ったが、結構大変だったよ。

 死体はまとめて焼却。俺の火炎魔法に期待が高まる。まあ俺が自分でたぶんできますよ。みたいに言ったんだ。

 『火』という存在を観測できたから何とかなるだろう。


 こう、高温のエネルギーが螺旋状に渦を巻く感じで、するとその高温でゴブリンの死体が燃え上がったりして。

 巨大な炎の竜巻だ…

 なんか予定と違う…

 

 ◆・◆・◆


 全ての作業が終わった後、俺達は焚き火を囲んでいた、もろもろやっているうちに日が暮れて帰るどころではなくなってしまったのだ。


 だがミルテアさんが大地の退魔結界を張ってくれたのでかなり安心できる環境だ。

 そんなことを知らない昨日は魔物なんか気にせずに寝ちゃったからね。危ない危ない。


 彼女が信仰する『大地母神ステルア』は名前の通り大地を司る女神様で、大地から生える木などもかの女神の管轄になるらしい。

 この大地の退魔結界は木を起点にして発動させると木が結界の維持をしてくれるらしく、例えばミルテアさんが眠ってしまっても普通に維持される。


 という大変便利な術である。

 魔法ではなく『神聖術』と呼ばれるものだそうだ。


 どう違うかというと魔力でやるか神様の力を借りるかということらしい。

 もっと言うと神聖術は祈りの言葉で起動して、魔法は呪文で起動する。

 呪文というのは決まったもので、誰もかれも同じ魔法なら同じ呪文を唱える。


 例えば焚火を起こすときにネムちゃんが【着火】というの魔法を使っていたが、その呪文は【イグ・フラマ・メラ】と言う物だった。とっても簡単。

 発音にコツがいるらしいが練習すれば誰でも出来ると言っていた。


 獣族というのは基本的に魔法が苦手な種族らしいが、その自分でも出来ると言いたいのだろう。


 俺は当然魔力視でその魔法をつぶさに観察する。


 物に火をつけるだけなら魔力制御だけでできるのは先刻証明されたわけだが、これはちょっと違ってちゃんとしたプログラムが組み込まれた魔術だった。

 よく覚えたから再現できると思う。もちろん呪文なしでね。

 むしろ俺には呪文の方が難しい。


 そして俺はこの【着火イグニッション】という魔法が、ものすごい可能性を秘めた魔法だと気が付いた。これはたとえるなら…


「ねえ、マリオンさん。もし良かったらステータス鑑定って~受けてみませんか?」


「えっ、ステータス?」


 全然考えてなかったが…あるのかステータス。


「す…ステータスって何ですか?」


「あっと、そうか…ステータスっていうのはですね…」


 と説明してくれたのはやはりステータスだった。


 その人の能力を見える形にするもの。

 その人のクラスやスキルが見えるのだそうだ。あと称号とか加護とか。

 ミルテアさんが言うにはステータスがわかれば俺の故郷のこととかも何か手掛かりがあるかも…と考えたらしい。


 うーん、それはちょっと疑問だけど、ステータスには興味があるな。


「ぜひお願いしたいです」


 で、出てきたのが。


 ■ マリオン・スザキ

 ■ 人族+・男・年齢不詳

 ■ クラス・魔操士

 ■ 能力・バランス

 ■ スキル

 魔力制御

 魔力操作

 魔法の心得

 自動身体回復

 自動魔力回復

 ■ 加護。源竜・真理


 鑑定は神官さんが使える神聖術のひとつらしい。


 道具はこの場合砂だ。あるいは地面ともいう。

 ミルテアさんが祈りの言葉を唱えると大地が優しく光る。

 その後俺が指定された場所に触ると地面の砂がさわさわと動いて、文様を描き出す。


「これは神聖文字なんですよ。神様の文字でこの文字は生きているんです」


 でて来たのは何かの図形と見たこともない文字。

 神官であればその文字の意味が理解できるんだそうだ。もちろんそれがステータス。

 後は神官の人がそれをわかる形で何かに書き写す。


 力が三〇〇とか出るかな? と思ったがそれはないようだ。


「力とか精神力とかを数字で表すのは無理よ~」と笑われてしまった。うん、言われてみればその通りだ。


 ちなみに名前は鑑定で出てきたわけではない。これは神官さんが書くものらしい。

 年齢も普通は出てくるらしいのだが、俺のは出てきていない。

 首をひねるが、


「年齢って生きてきた記憶だからね、生まれた土地だと間違いなく出るんだけど、知らない土地だと出ないことってあるのよね」


 ということだった。

 よし、問題ない。


 なのでこの鑑定でわかるのは普通『種族』『性別』『年齢(不明の場合有)』『能力タイプ』『クラス』『スキル』『加護』『称号』となるらしい。


 それがどういうものかというと…え? 時間切れ? 次回に続く? まじか!

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