第19話 ファーストコンタクト

■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在異世界を探索中。

■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。

■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。

■ ミルテア・神官の女性。ものすごい巨乳。


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 第19話 ファーストコンタクト



 意識を切り換えて周辺を探査する。

 魔物や生き物の反応はあるが敵と思われるものはない

 取りあえず安全のようだ。


 俺はほっと胸をなで下ろした。


 かなり試験的な、そして見切り発車な戦闘だったがなんとかうまくいった。

 経験を積んでいくつかの力の使い方を会得したのも大きい。


 女の子二人を助けられたのも良かった。

 諸々及第点だ。


 そしていよいよファーストコンタクトである。

 指と指を合わせたら分かり合えるとかだと簡単なんだが、まあそうはいかないだろうな…

 それでも恩を売れたことはよかった。


 彼女たちを引き上げた木に近づくと獣人の女の子が下りてきた。

 木の枝を使ってすちゃっと。かなり運動能力が高そうだ。


「あの…ありがとうございました」


「いいえ」


 なんかうれしそう。悪くない感触だ。

 こちらをかなり真剣にうかがっている感じはするがこの状況では仕方がないかもしれない。見ず知らずの相手だからね。


 その子は明らかに獣人の女の子だった。尻尾があって、しかもちゃんと動いている。

 尻尾の形はネコ科だな。

 色は白。

 白猫かというとそうでもない。遠目ではわからないのだが頭髪にも尻尾にも薄いグレーの縞がある。尻尾もちょっと太い。つまりこの娘さんは白虎の獣人ということだ。


 小柄で、でもスタイルはいい。

 そしてものすごい美少女だ。赤い瞳が優し気で全体として柔らかい印象がある。


 頭にもちゃんとケモミミがある。小さ目の三角形の耳で、ちゃんと虎耳している。

 虎の耳って虎縞じゃないんだよね、全体が白で黒い斑点が一個。後ろから見ると目みたいに見える。


 ケモミミgood。かわいい。


 でも普通の耳もある。

 ふわふわの髪の毛の隙間から人間と同じような、でもちょっととがった耳がある。


 どういう構造なんだうろ…私、気になります。

 でも初対面の女の子の耳とか触れないものな…ここは我慢だ。


 ちなみに頭の虎耳はちゃんとクイクイ動いてちゃんとケモミミだ。かわいい。good…あっ、もう言ったか。


 しかし本当にじっと俺を観察しているな…俺も観察しているからなんか見つめ合っているみたいだ。ドキドキ!


「あのー下ろしてくださーい」


「あっ、忘れてました。申し遅れました。わたくしネムと申します、ネム・インクルードです」


 これはご丁寧に、自分は…といいたがったのだが彼女はすたすたと走って行ってしまった。

 そして大木に手をかけるとするすると昇って行ってしまう。

 あっという間にもう一人の女の子のところにたどり着いたと思ったら彼女を担いてスタっと降りてきた。

 何気にすごいな。


 そしてもう一人の子。


「この度はお助けいただきありがとうございます。本当に危ないところでした…ミルテア・アリアと申します。大地母神すステルアの神殿に所属する司祭です」


「これはご丁寧に、鈴木真理雄といいます」


「えっと…スザキ・マリオンさん?」


「いえ、真理雄、鈴木ですかね」


「ああ、東国の方なんですね。マリオン・スザキさん」


 発音が変だけどそんなものかな。


 彼女のことは人間だと思っていたがどうも違うらしい。

 金髪碧眼でなかなかかわいい女の子だ。ネムさんと同い年ぐらい。十代後半に見える。

 ネムさんより長身で、一番目を引く気のはその巨乳。


 スイカップとは言わないが、メロンぐらいはあるだろう。


 そして彼女の耳はとがっていた。

 ケモミミではなくエルフ耳だ。


 つまりこれがエロフ…じゃないや、エルフなんだろうか?

 ただあまりじろじろ見てはいけないな。


「あの、それでちょっと聞きたいことが…」


「あっ、はい、お答えできることなら…ですが少しお待ちいただけますか? 仲間の遺体を弔ってあげたいので…」


 なるほどそれは無理もない。

 そしてもちろん否やもない。


 彼女たちは気丈に仲間の遺体を回収し、弔いをする。

 仲間の人達の遺体はそれはひどいものだった。

 これ以上ないぐらいに辱められた遺体…そんな感じだ。


 何もできないのは気が引けたが男の俺が出て行ってはいけないところだろう。

 俺は木の後ろに回って座り込み、彼女たちが遺体を清めるのを待った。

 とはいっても魔力視で見えているんだけどね。


 特にミルテアさんが魔法を使ったのは見逃せなかったのだ。


 彼女は【クリーン】という魔法を使って仲間の遺体を清めていた。

 属性はよくわからないが魔力がゆっくりと渦を巻き汚れにとりつき、それを分解して消えていく。


 そののち彼女たちの荷物から着替えを出して衣服を整える。

 ある程度整ったところで俺が呼ばれた。

 二人とも憔悴はしていたが気丈にふるまっている。


「冒険者などしていれば…いつかは出会うことです」


「でもありがとうございます。あのエルダーゴブリンは私たちでは太刀打ちできない魔物でした」


 俺は感覚のずれを認識した。


 “あいつ”とずっと一緒にいて、話をして、俺の価値観は結構向こう側に引っ張られていたらしい。

 魔物というのがいるのは分かっていて、それは『危ない生き物』という認識を持ってはいたが、それほど脅威になっているとは思っていなかったのだ。


 まあ、確かに“あいつ”から見たらどんな魔物もそんなに危険な生き物ではないよな。


 だが、この世界では魔物は相応に人間を脅かしているようだ。

 あまりふざけた態度はとらとないようにしよう。


 彼女たちの遺体に関して自分の空間収納で運べないことはない…と伝えたのだがそれはことわられた。

 遺品だけを回収してここに埋葬していくらしい。


 そこで神聖術というのを見ることができた。

 魔法のようなものだが神様にいるのことで神様の力を借りるものなのだそうだ。


 ミルテアさんの祈りに応えるように大地が揺らめき、亡くなった三人が地中に沈んでいく。

 これがこの世界の埋葬なのだろうか…


 ネムちゃんも涙ぐんでいるがミルテアさんの嘆きは深く、がっくりと膝をついてはらはらと涙をこぼしている。


 ネムちゃんはまだこのパーティーに参加して半年だそうだが、ミルテアさんはもう何年も彼女たちと一緒にやってきたのだそうだ。

 そりゃ無理もない。


 ミルテアさんが落ち着くまで俺たちは黙って立ち尽くしていた。


 ◆・◆・◆


 その後もさらに仕事は続いた。


 今度はゴブリンの処理だ。

 こんな魔力の濃いところで死体を放置したらゾンビ化してしまうのだそうだ。

 だから魔石を取って死体は燃やすなり埋めるなりする必要がある。


「ところで魔石って何でしょう?」


「「!?」」


 うーん、二人とも固まってしまった。

 これはよほど一般的なものらしい。


「えっ、魔石…を知らないんですか?」


 推測はつくけどね。あのエルダーゴブリンというやつから取れた石であり、あのお化けが落とした石だろう。これですよねといって見せる。


「うっ、それってものすごい魔石…」


「これ一個で金貨一〇枚とか二〇枚とか行きますよね」


 うん、やはり魔石は売れるらしい。しかも俺が持っているのはかなりいいもののようだ。

 お金の価値は分からんけど、あの言い方からして低額ではないだろう。

 だがやはり魔石というのがどういうものか、それは分からない。

 これは素直に聞くべきかな…知ってないとまずい気がする。


 まあ細かいところは成り行き任せでいいだろう。




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